土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
土工事
3)地盤改良
2019/08/29
建築工事における地盤改良(液状化対策)工事で発生したトラブル事例である。地盤の密度を増加させるために、締固め砂杭(サンドコンパクションパイル:SCP)工法による施工を実施した。改良の対象層は、N値が8~14程度、層厚が約9mの砂礫層であり、粒度分布から透水性が高い地盤であると判断された。その直上には、層厚が約1.5mの粘性土層、さらに上部には砂質土と粘性土層が互層状に堆積している。なお、粘性土層は透水性が低く、不透水層とみなされた。
液状化対策範囲の端部(図1参照)を改良中に、対策範囲から約20m離れた位置から湧水(写真1)が発生し、施工を一時中断した。工事に関する履歴を確認したところ、湧水が発生した箇所では、数年前にボーリング調査が実施されており、調査孔跡であることが確認できた。
砂杭の打設に伴う湧水は以下の順序で発生したものと考えられた(図2)。
砂杭の拡径(直径450mm から700mm)による締固めに伴い、砂礫層内の側圧と過剰間隙水圧が上昇する。
砂礫層上部は不透水層(粘性土層)で覆われており、過剰間隙水圧の消散が妨げられたことで、砂礫層内は被圧状態となった。さらに、施工の進捗に伴い過剰間隙水圧が累積した。加えて、砂杭造成時に圧縮空気を用いて砂を地盤内に送り込んだために、この空気圧も砂礫層の被圧に影響した。その結果、弱部であるボーリング調査孔に間隙水が逸走し、水道(みずみち)を形成した。被圧水は、この水道を通って地表面に湧水となって噴出したものと考えられた。
工区外での湧水を防止するための対策として、施工範囲端部に透水性の良いグラベルドレーンを造成し、被圧水をグラベルドレーンに誘導し、グラベルドレーン頭部に設けた釜場から被圧水を排水した(図3)。具体的には、直径300mmの穴あき塩ビ管を挿入して集水し、水中ポンプを用いてノッチタンクに排水した。この対策により、工区外の湧水が止まり、無事に施工を完了することができた。
透水性の悪い粘性土層が表層付近にある場合、砂杭打設に伴う側圧の増加と過剰間隙水圧上昇により改良層が被圧状態になることがある。限られた孔数のボーリング調査により、湧水発生箇所となりうる弱部を、事前に把握することは困難である。ましてや弱部が工区外にある場合はなおさら把握が難しい。そのため地盤改良により被圧が予想される場合には、観測井戸による水位監視を強化することが有効である。具体的には、被圧したら水位が上昇するので、施工を止めて水位が下がるまで待機するとよい。加えて今回実施したような過剰間隙水圧を消散させる対応策についても事前に想定しておくことも必要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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