現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

4)打設準備(型枠・鉄筋組立等)

2019/09/26

スラブコンクリートの打込みと夕立

工事の概要とトラブルの内容

8月、栃木県内における、高架橋のスラブコンクリート工事の事例を紹介する。

ここ栃木では、梅雨が明けてから、3日に一度は夕立がある。1~2時間もすれば止むのだが、雷が落ちることもあり、まさにゲリラ豪雨である。天気予報により降雨が予想されれば、コンクリートの打込みは行わないのだが、前日に夕立があったので、今日は雨が降らないだろうと見込んで、コンクリートの打込みを決行した。

8時より打込みを開始し、午後2時を過ぎたころ、生コン車があと3台となったところで、西の空の雲行きがあやしくなってきたので、作業員の半数を雨除けシートの設置にまわすよう世話役に指示した。高欄とスラブ軌道用突起の鉄筋に単管パイプを固定し、それぞれのパイプを繋ぐことで屋根の骨組みを造り、ブルーシート(5.4m×5.4m)で覆った。シートが水平だと雨がたまる恐れがあるので、単管パイプの高さを変え、雨水が左右に流れるようにした(図1)。

コンクリートの打込みと雨除けの設置がほぼ同時に終わったとき、ザーっと夕立がやってきた。ブルーシートで雨を完璧に除けれるとは思っていなかったが、雨が止んでからスラブに上がってみると、雨だれで、線状にコンクリート表面のモルタル分が流出し、2mm程度の粗い砂分が露出していた(図2)。

図1 雨よけシートの設置状況図1 雨よけシートの設置状況

図2 雨だれでスラブ表面のモルタルが洗われた状況図2 雨だれでスラブ表面のモルタルが洗われた状況

原因と対処方法

ブルーシートのつなぎはハトメ同士を紐でしばっていたため、ブルーシートの隙間(長さ5m程度、図3参照)から雨水が線状に2列、滴下したようである。中央のシートを下流側のシートの上側に重ね合わせるように覆えば(図4)、雨だれがコンクリート表面に滴下することはなかった、と悔やまれた。

洗われたコンクリート表面の補修として、雨だれで洗われた表面の脆弱層を取り除き、セメントペーストでこて仕上げを行い、その後、表面を箒で掃いた。なお、スラブは箒目仕上げの仕様だった。

図3 ブルーシートのつなぎ状況図3 ブルーシートのつなぎ状況

図4 ブルーシートの適切な重ね方図4 ブルーシートの適切な重ね方

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

コンクリート打込み後の雨なので、雨水がコンクリートに混ざることはなかったが、雨がもう少し早く降り出していたら、コンクリートの表面に雨水が溜まっていたであろう。雨水がコンクリートと混ざると、水セメント比が大きくなりコンクリート強度が落ちるだけでなく、耐久性も低下する。このため、雨の中でコンクリートを打ち込むことは避けなければならない。

土木学会のコンクリート標準仕方書[施工編](2017年制定)には、「降雨に関する情報を収集し、これらの対応策を準備しておかなければならない。」「型枠内に水が流入して新しく打ち込んだコンクリートを洗わないように適当な処置を講じておかなければならない。」と書かれているが、どの程度の雨ならコンクリートの打込みが可能なのか、打込み途中で雨に降られた場合どのような処置をしたらよいかといった記述はない。

コンクリート標準示方書[ダムコンクリート編](2002年制定)8.5打込みには「ダムコンクリートの品質に悪影響を及ぼすような降雨時には、ダムコンクリートの打込みを行ってはならない。また、作業中の降雨によってやむを得ず打込みを中止する場合には、その打止め面は水平打継目に準じて処理しなければならない。」との記述がある。同解説には「打込み途中で降雨があった場合、降雨が激しくなければ、締固め前のダムコンクリートの表面をシートで覆い、雨水が混入などしてモルタルが流出しないように注意して、作業区画内の打込み、締固めを継続するが、降雨が激しいときには、打込みを中止しなければならない。この場合、早い時期に再開できて打重ね許容限界以内であれば、打重ねることができる。しかし、それを超えた場合には、締固めの不良な打止め部を除去し、水平打継目に準じた継目処理を行ってから、新しいダムコンクリートを打ち継がなければならない。」との記述がある。

ダムコンクリート工事はダムコンクリートを縦継ぎ目、横継ぎ目によっていくつものブロックに分割し、ブロックごとにコンクリートを打ち込む。ブロックの平面形状は長方形であり、水平打継面はグリーンカットと呼ばれる方法で目荒らしを行う。このためコンクリートの打込みを雨で中断した場合でも、中断した水平面を水平打継面とみなすことで、ダム堤体の構築を継続できる。

これに対しダム以外のコンクリート工事は、現場ごとの状況にあわせて対応しなければならない。特に、スラブコンクリートは形状が複雑で、鉄筋が組立てられていることから水平打継面を設けることはできない。

いずれにせよ、コンクリート打込み途中で降雨に遭わないように、あるいは降られた場合の対策として以下の四点をあげる。

① 地域の気象特性を知り、ピンポイントの天気予報を活用する。

② 夕立は予想できないことがあるので、コンクリートの打込みが、午前中で、ほぼ終了するように、朝の作業開始時間を早める。

③ 夕立に備えて、単管パイプ、クランプ、ブルーシートなど雨よけ対策に使用する材料を準備し、予めシートの張り方の要点等を周知しておく。

④ 打込み箇所に隣接して、出来上がったスラブがある場合、コンクリートが硬化する前に隣接したスラブの表面から雨水が流入すると、コンクリートの表面が洗われる可能性があるので、止水対策として隣接したスラブ上に土のうを設置する。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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