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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

特別企画


現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

1)打設中(コンクリートの特性とクラック)

2020/12/25

ハイブリッドケーソンのフーチングに
ひび割れが発生!

工事の概要とトラブルの内容

波堤は、波浪や高潮から港を守り、安全な船舶航行や生活のために重要な役割を担う、代表的な港湾施設の一つである。図1に示すようなケーソン式混成堤は、重力式防波堤の代表的な構造形式の一つであり、東日本大震災の際に襲来した巨大津波に大きく損壊しながらも減災効果を発揮した釜石港湾口防波堤もこの形式である。大規模な防波堤の本体部分には、ケーソンと呼ばれる中空の函状コンクリート構造物に土砂などを詰めるケーソン式が採用されることが多い。近年では、ケーソン自体を鋼・コンクリートの合成構造とした図2のようなハイブリッドケーソンの採用事例が増えている。この理由の一つは、ハイブリッド型式では大型フーチング構造が実現でき、地盤反力の低減や堤体のスリム化が可能となるためである。

図1 ケーソン式混成堤の断面の例1)図1 ケーソン式混成堤の断面の例1)

図2 ハイブリッドケーソンの構造イメージ2)図2 ハイブリッドケーソンの構造イメージ2)

今回のトラブルは、このような鋼・コンクリート合成構造の防波堤ケーソン(ハイブリッドケーソン、長さ50m)の製作工事において、図3に示す大きな断面のフーチング(底版コンクリート、30-8-25BB、単位水量160kg/m3、単位セメント量348kg/m3)にひび割れが発生したものである。フーチング部の構造を図4に示す。このフーチング部には、写真1に示すように、底部鉄骨と呼ばれる鋼部材(H型の鋼材で、高さがフーチング高さに合わせて変化するもの)が縦断方向に1m間隔で配置されている。なお、底部鉄骨の上フランジの板厚は9mm、幅は100mmで、かぶりは150mmであった。

ひび割れは、フーチング上面に底部鉄骨と同じ位置および同じ方向に2mまたは3m間隔で規則的に発生しており、場所によっては1m間隔でも発生していた。ひび割れ幅は、0.2~0.3mmのものが多く、0.35mm以上のものが全体の10%程度(16本のうち2本)発生していた。また、これらのひび割れは長さが2.0~3.8mであり、図5に示すようにフーチング先端にまでは進展していなかった。

底版コンクリート(1ロット)は3月初旬に打ち込まれ、翌日には養生マットを用いた湿潤養生とともに、ブルーシートで覆って外気温の変化を抑制するような養生が実施された。ひび割れは打込みから8日前後に確認されたものが多く、1か月程度までは若干ひび割れ幅が大きくなったが、その後はひび割れ幅の変化はなかった。

図3 ひび割れの発生したハイブリッドケーソンの標準断面図3 ひび割れの発生したハイブリッドケーソンの標準断面

図4 フーチング部(陸側)の構造概要図4 フーチング部(陸側)の構造概要

写真1 フーチングの補強鋼部材の配置状況(鉄筋の内側に見えるのが底部鉄骨)写真1 フーチングの補強鋼部材の配置状況(鉄筋の内側に見えるのが底部鉄骨)

図5 ひび割れの発生状況の例(平面図)図5 ひび割れの発生状況の例(平面図)

原因と対処方法

フーチング上面に発生したひび割れは、ひび割れ発生時期(材齢10日前後)や規則性(底部鉄骨に沿って発生)の他に、配合条件や養生方法などの施工状況を踏まえると、「セメントの水和熱による温度応力」および「コンクリートの自己収縮による収縮応力」が主要因と考えられた。

すなわち、フーチングは最大厚さが1,500mmと断面が大きく、単位セメント量も比較的多かった(348kg/m3)ために、セメントの水和に伴ってコンクリート表面と内部の温度差が大きくなり、コンクリート表面では内部拘束による引張応力が大きくなったと考えられる。

また、水和の進行(強度の増加)に伴って生じる自己収縮も大きくなったと想定されるので、収縮しようとするコンクリートが底部鉄骨によって拘束され、引張応力が大きくなったと考えられる。

なお、ハイブリッドケーソンの底部鉄骨は、壁部や隔壁部の鋼部材(ここでは鋼殻と称す)と一体として構築されている。そのため、鋼殻全体が、底版やフーチングに埋設される鋼材を介して、底版コンクリートの水和熱による温度収縮や自己収縮を拘束して引張応力(外部拘束応力)を増大させた可能性も考えられる。ただし、この影響の程度については、3次元FEM解析等を用いて鋼殻全体の剛性を評価する必要があり、現時点では明確ではない。

このような要因によってコンクリートに発生した引張応力がコンクリートの引張強度を超えると、ひび割れが発生することになる。とくに、今回は図4に示すように底版の厚さに対して大きな比率を占める底部鉄骨が設置されており、底部鉄骨の周囲のコンクリートには応力集中が生じやすい状況にあったことから、ひび割れの発生しやすい条件であったと想定される。

なお、今回のひび割れが底部鉄骨の付近で発生しているものが多かったため、沈下ひび割れ(底部鉄骨の上フランジによって沈下が拘束されて発生)の可能性も考えられたが、コンクリートの硬化が進行した材齢1日の時点ではひび割れは発生していなかったため、沈下ひび割れの可能性は除外した。

今回のトラブル対策としては、フーチング上面の鉄筋(かぶり100mm)を対象として、鋼材腐食に対するひび割れ幅の限界値をもとに、環境条件を「特に著しい腐食性環境」と設定して、0.35mm(=0.0035×100mm)を超えるひび割れを補修することで発注者の承認を得た。なお、海中部では酸素の供給が少ないため、過大なひび割れが生じている場合を除いて、コンクリート中の鋼材の腐食はほとんど進行しないことが知られており3)、フーチング部に生じた0.35mm程度のひび割れであれば補修は不要である、との説明も可能であったと思われる。

補修方法としてはひび割れ注入工法を採用し、すでにひび割れ幅の進展もないことから、超微粒子セメント注入材を用いて補修した。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

ハイブリッドケーソンのような合成構造の構造物において、フーチングのように大きな応力が作用する部位では、部材の必要断面も大きく、底部鉄骨のような大きな鋼部材による補強も必要となるため、コンクリートに対して鋼部材による応力集中等の影響は避けられないと思われる。このような場合、ひび割れの発生を完全に防止することは難しいので、発生したひび割れが許容ひび割れ幅以下となるように制御することが重要である。

また、このような合成構造ではなくても、躯体内部に鉄骨などの鋼部材が配置される場合やボイド管が埋め込まれる構造物などは、埋込み部材によりコンクリートの収縮が拘束される箇所にひび割れが生じやすくなるので注意が必要である。

したがって、計画段階でこれらのことを十分に理解して、できる範囲の対策を事前に検討しておくことが重要である。また、そのリスクについて、施工前に発注者や設計者に理解を促し、ひび割れが発生した際の対応について協議しておくことも重要である。

施工時のひび割れ制御対策としては、以下のような項目が考えられる。

①ひび割れ制御鉄筋(補強筋)の追加やひび割れ抑制繊維ネットの併用、ひび割れ抑制繊維を混入したコンクリートの使用などにより、発生するひび割れ幅を抑制する。

②セメント種類の変更(たとえば、普通ポルトランドセメントへの変更)により、自己収縮の影響を低減する。

③保温性のよい養生方法により、水和熱による内部拘束応力を低減する。

④高性能AE減水剤を用いた単位セメント量の低減、低発熱形のセメントを用いた水和発熱の抑制などにより、水和熱の影響を低減する。ただし、材料調達や費用増加の面で、採用が難しい場合も多い。

参考文献

1) 公益社団法人 日本港湾協会,港湾の施設の技術上の基準・同解説、(中巻)、施設編、第4章 外郭施設、p.921、平成30年5月

2) JFEエンジニアリング:ハイブリッドケーソン資料,https://www.jfe-eng.co.jp/products/infrastructure/pdf/LE6006.pdf

3) 一般財団法人 沿岸技術研究センター,港湾の施設の維持管理技術マニュアル(改訂版),p.141,平成30年7月

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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