現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

基礎工事

1)オールケーシング

2021/01/28

オールケーシング工法における
杭頭部の欠損・不良

工事の概要とトラブルの内容

路橋の橋脚を築造する工事で、揺動式オールケーシング工法による場所打ち杭を施工した。杭の仕様はφ1500mm、L=14.0m(掘削長:19.0m)で、1橋脚当たり8本を施工した。施工地盤は、GL-1.1mまで埋土、GL-3.5mまではN値2~4のシルト、GL-10.5mまではN値15~20の細砂、GL-17.0mまではN値4~7の粘土質シルト、それ以深は砂礫:N≧50の支持層となっていた。地下水位はGL-2.5mであった(図-1)。

フーチングの施工にあたり床付けレベル(GL-5.3m)まで掘削を行ったところ、半数の杭(4本/8本中)で杭頭部のコンクリートの欠損やかぶり部の豆板や微細なひび割れなどの不良がみられた。杭頭部のコンクリートの欠損や不良は、鉄筋かごの外周部に集中して発生していた。欠損部の寸法は、最も大きいもので杭円形断面のかぶり部の幅約60cm(円周の約12%)、杭周面から約16cmで、主鉄筋の中心付近まで達していた。深度方向には設計杭頭から約40cm下方まで達し、不良部分は欠損部以外のかぶり部ほぼ全周にわたっていた(図-2)。

図-1 場所打ち杭の概要及び柱状図図-1 場所打ち杭の概要及び柱状図

図-2 ケーシングチューブと杭頭欠損部の関係図-2 ケーシングチューブと杭頭欠損部の関係

原因と対処方法

杭頭部コンクリートの欠損等の主原因は、杭の施工に関して、以下の施工手順・方法をとっていたことから、コンクリート打込み完了後のケーシングチューブの不適切な取扱いにあると想定された。

①コンクリートの打込み完了後に、最終ケーシングチューブ(長さL=1.8+6.0=7.8m)をGL-5.9m付近に残置した状態で、次の杭の打設準備を行った。ケーシングチューブの下端は、杭頭から下方約50cmに位置していた(図-2)。

②次の杭の打設準備後、打込み完了した杭のケーシングチューブの引抜き作業を行ったので、引抜きを開始するまでに約20~30分のケーシングチューブ放置時間があった。

③杭頭部のコンクリートは、硬化が始まったため、ケーシングチューブ内面と付着した。ケーシングチューブへのコンクリートの付着が特に大きい箇所が、チューブの引き抜きに伴い上部に排出されたことが欠損部の発生原因となったものと想定された。また、ケーシングチューブの引き抜きには地盤との付着抵抗を下げるため揺動を行う必要があった。杭頭外周部のコンクリートの不良は、揺動によるかぶり部コンクリートの乱れが一因と想定された。

また、以下の要因によって、かぶり部コンクリートに充填不良が発生したことも杭頭部欠損・不良の原因と推定された。

①コンクリートプラントが遠距離で、交通渋滞が激しく生コン車の現場到着に時間がかかった(練り混ぜから打込み終了まで1.5時間を超えることがあった)ことに加えて、夏季の打込みであったことから、コンクリートの流動性が失われやすかった。杭頭部では主鉄筋の純間隔が74mmと狭いこと、余盛りを80cmとしたため、コンクリートに作用する上載圧が小さいこともあって、主鉄筋外側へのコンクリートの流出が阻害された。

②オールケーシング工法のケーシングチューブは、板厚45mm(2重構造の合計厚さ)で、さらにカッティングエッジと呼ばれる先端部で刃先が10mm外側に張り出した構造になっている(図-3)。ケーシングを引き抜く際、板厚部分に相当する空隙にコンクリートが充填される前に、引き抜き時のバキューム現象により緩んだ砂層が入り込んだ。

杭頭部の欠損やかぶり部コンクリートの不良に対処するため、杭周囲を床付け面から0.5m掘下げ、それ以深では杭径が確保されていることを確認した。補修は、変状のあった杭外周のコンクリートを確実にはつり取り、十分に目荒らしを行った後、杭周囲に型枠を設置して杭と同等のコンクリートを打ち継いだ。

図-3 揺動式カッティングエッジ概要(杭径φ1500mmの場合)図-3 揺動式カッティングエッジ概要(杭径φ1500mmの場合)

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

今回のオールケーシング工法での杭頭欠損トラブルは、コンクリートの打込み完了後、速やかに杭頭部にかかるケーシング引抜きを実施しなかったことによるケーシング下端位置の管理不良が主な原因である。また、オールケーシング工法においては、ケーシングの引抜き管理を適切に行うことに加えて、流動性の低下したコンクリートを打込んだ場合は、ケーシングを引き抜く際に鉄筋かご外側にコンクリートが充填されず、杭頭部の出来形不足となることがあるので注意が必要である。

特に、杭頭付近がN値1以下の軟弱粘性土の地盤にオールケーシング工法によって場所打杭を施工する場合、杭頭部のケーシング引抜き時にケーシングの板厚に相当する部分にコンクリートが充填されるより早く地盤が内側に寄ってくることで、杭径の不足がケーシングの板厚以上になる場合もある。そのため軟弱粘性土地盤では、施工計画時に設計径より100mm程度大きいケーシング(ファーストチューブ)を使用して施工することを検討することも考えられる。

また、打ち込むコンクリートの品質管理に配慮することに加え、杭頭部のコンクリートの余盛り量を多くしてコンクリートの自重による側圧を大きくすることにより対処する方法もある。平成29年11月の道路橋示方書1)では、オールケーシング工法の場合は、「鉄筋天端高さまで余分に打ち込むのがよい」と記述されている。

参考文献

1) 道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編 平成29年11月 pp504~505 公益社団法人 日本道路協会

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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