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土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
土工事
1)切土
2021/02/26
東北地方北部の道路工事の切土法面で発生したトラブル事例である。地山は風化した凝灰岩であり、風化した土砂の粒度はシルト質土に分類された。高さ11mの斜面に対して2段の切土を行った。法面勾配は1:1.2で、10月上旬に施工を完了したが(図-1)、下から2段目の法面の下端付近では施工当初から湧水があり、法面が湿って変色している部分があった(図-2)。ただし、湿っている程度であったことと、地山は風化しているものの固結しており、法面が不安定化する兆候は見られなかったため、種子吹付けによる法面保護工は行ったものの、地すべり対策等の斜面安定対策は行っていなかった。寒さが緩んだ翌年の4月上旬に、幅約10m、高さ3mの規模で表層崩壊が発生した。この崩壊が発生した箇所は、湧水で湿っていた箇所を含む範囲であった。なお、崩壊前の1週間にはまとまった雨は降っていなかった。
以下の理由から、今回の表層崩壊の原因は凍上と融解による法面の軟弱化であると判断した。なお凍上とは気温が氷点下となることで、地中も0℃以下となり、地中の水分が凍結してアイスレンズが形成されて地盤が膨張・隆起する現象である。
・湧水による法面への地下水の供給があったこと。
・崩壊土砂の粒度は、凍上しやすいシルト質土であったこと。
・法面は北向きで日当たりが悪かったこと。
・現場は風の通り道となっており、積雪量が比較的少ない箇所であったこと。
そこで、湧水対策として横ボーリング工(水抜きパイプ:直径49mm、長さ10m、2本)を設置した。さらに崩壊土砂とその上方のゆるんだ部分も取り除き、特殊ふとんかご(高さ250mm)を設置した(図-3)。特殊ふとんかご例えば1)、2)とは薄型のふとんかごであり、標準的なサイズは幅1m、長さ2mである。これらの対策により、この法面では、これ以降、変状は発生していない。
寒冷地において、気象条件(気温、風、積雪量)、土質(シルト質土)、湧水等による法面への地下水供給といった条件がそろえば、凍上と融解による軟弱化によって春先に法面の表層崩壊が発生することがある。春先に崩壊が発生しなくても、その後の降雨による表層崩壊の原因となるため注意が必要である。なお、事前の調査段階では、法面の湧水発生位置を詳細には把握できないことが多いため、地山が凍上しやすい土質であれば、施工者は湧水の発生状況等を発注者に速やかに報告して、凍上対策について協議することが望ましい。
凍上の調査方法や代表的な被害と対策については、指針等3)〜 5)でも紹介されているので参照するとよい。
1) https://www.kurihara-kenzai.co.jp/jakago_drain.html
2) http://business2.plala.or.jp/fuji-gmc/products/doren1/index.html
3) 日本道路協会:道路土工-切土工・斜面安定工指針(平成21年度版),pp.181~190,2009.
4) 日本道路協会:道路土工要綱(平成21年度版),pp.194~232,2009.
5) 地盤工学会北海道支部 斜面の凍上被害と対策に関する研究委員会:斜面の凍上被害と対策のガイドライン,2010.
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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