現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

特別企画


現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

基礎工事

2)その他の場所打杭

2022/05/09

拡径アースドリル杭の夏季施工における
杭頭断面欠損

工事の概要とトラブルの内容

務所ビル新築工事の基礎として、アースドリル杭工法により杭頭拡径部を有する場所打ち拡底杭を施工した。杭の仕様は、軸部径φ2000mm、拡頭径φ2400mm、拡底径φ2600mm、杭長34.0m、掘削長39.0mで、全本数は10本であった。施工地盤は、GL-7.3mまではN値5~10の砂質土層、GL-22.8mまではN値10~15のシルト層、GL-28.2mまではN値10~23の細砂層、GL-31.2mまではN値30~50の砂礫層、GL-36.1mまではN値13~15の粘土層、それ以深はN≧50の支持層(砂礫層)となっていた。地下水位はGL-4.0mであった(図-1)。

基礎フーチングの施工にあたり杭頭まで掘削したところ、2本の杭で、設計杭頭から深さ約60cmの範囲でコンクリートの充填不足が確認された(図-2)。

杭頭部の配筋は、主鉄筋がD38で約140mmピッチ、フープ筋がD16@150mmで、コンクリートの仕様は、Fc=27N/mm2、スランプ21cm、粗骨材最大寸法20mm、高炉セメントB種の水中コンクリートであった。

図-1 土質柱状図および杭の仕様図-1 土質柱状図および杭の仕様

図-2 杭頭部のコンクリート充填不足状況図-2 杭頭部のコンクリート充填不足状況

原因と対処方法

場所打ちコンクリート杭の杭頭断面欠損の発生原因について検討した結果、以下に示す2項目が主原因であると考えられた。

①夏季高温下でのスランプの低下

杭のコンクリート打設したのは8月であり、最高気温が35℃を超える猛暑日が続いていた。トラブルがみられた杭のコンクリートの荷下ろし時点でのスランプ値は19.5~20.0cmで、許容値(21±1.5cm)を満たしていたものの、下限値に近い値であった。コンクリートの練り混ぜ後、荷下ろしまでの経過時間は、約85分であった。高温環境下において、コンクリートが荷下ろしされ、トレミー管から流出してから充填されるまでの間のスランプの低下により、杭鉄筋の外側での充填不足となったものと想定された。

②杭頭部付近でのコンクリート打設時のトレミー管の挿入量が過大

トレミー管の先端付近では、打ち込んだコンクリートが流動し凝結がゆっくり進行するのに対し、コンクリート打設完了前のトレミー管の挿入は、5~6m程度と比較的深かった。そのために、コンクリートの天端付近では流動性が低く凝結の進行が早まり、鉄筋かごの外側へ移動しにくくなったので杭頭部での充填不良につながった。

また、杭頭部が2.4mに拡径されているために、コンクリートの上昇速度が遅くなったこともコンクリートの性状悪化の誘因となったと考えられる。

なお、杭頭部主鉄筋の純間隔(D38約140mmピッチ)は、コンクリートの充填上必要だといわれている100mmを超えており、かつ一重配筋であるので、設計上の問題はない。また、アースドリル杭工法の掘削後のスライム処理は適切に行われていた。

杭頭部でのコンクリート充填不足による断面欠損への対策としては、脆弱なコンクリートをはつり取って、所要のかぶりを確保した円形型枠を設置して、新たにコンクリートを打設した。コンクリートの強度不足の範囲は、シュミットハンマーで評価した。なお、はつり取る範囲は、コンクリートの再打設にあたり充填不良が生じないように留意して決定した。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

夏季などでの高温下での場所打ち杭のコンクリート打設の場合、杭頭部のコンクリートの充填不足の対策として、以下の事項があげられる。

①生コンクリートの運搬時間を想定した流動性低下への備え

交通渋滞等によりプラントから現場までの運搬時間が長くなることが考えられる場合や、高強度コンクリート等で打ち込み中に流動性が低下する恐れがある場合には、事前に「フレッシュコンクリートの経時変化試験(スランプロス試験)」を行って、流動性の低下傾向を把握しておく。断面欠損等のトラブルの発生要因となるスランプ低下が懸念される場合には、遅延剤や遅延型の高性能AE減水剤を用いる1)等の対策を施す。

②トレミー管の適切な継ぎ計画

杭頭部では、トレミー管をコンクリート天端から深く入れ過ぎないように管の継ぎ計画を慎重に立案する。トレミー管のコンクリートへの挿入長さは、杭天端付近では2m以上4m以下とするのが良い。なお、コンクリートの打込み時には、打ち上がり毎のトレミー管の挿入長さを確認することも忘れてはならない。

③余盛高さを外周部の検測で決定

検測テープを用いたコンクリート天端の測定では、中央付近(トレミー管周り)のみの検測結果で余盛り高さを決定すると、外周部と高低差がついている場合があるので、中央付近に加えて外周4箇所程度を検測して決定する。

参考文献

1) 暑中コンクリートに対する化学混和剤の取組み 檜垣誠 コンクリート工学 2013.5 Vol.51 No.5 4.2

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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