現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

3)打設後(養生・修繕等)

2023/07/03

コンクリート打込み完了直後のゲリラ豪雨により表面が脆弱化!

工事の概要とトラブルの内容

7月下旬の暑い日であった。関西地方のとある臨海地区の道路工事において、U型擁壁の底版(幅14m×長さ18m×厚さ1.5m、図-1)のコンクリートを施工していたが、打込み完了と同時にゲリラ豪雨を受けた。コンクリートの配合仕様は普通27-12-20で、底版の上側鉄筋のかぶりは80mmであった。

早朝7時半から打込みを開始し、15時頃までに完了させる計画であった。当日は50~60m3/hのペースで順調に打込みが進んだ。午後には雨雲が掛かってきたが、降雨はなかった。

打込み終了間際に小雨が降りだしたが、そのまま打込みを終えることができた。しかし、その直後、急激に雨脚が強くなった。

当日は、雨養生用のブルーシートを用意していたが、瞬く間に表面が湛水状態となったために何もできず、危険な状態であったため、そのままの状態で作業員全員を仮設テントに避難させた。

約1時間後に雨脚が弱まったためコンクリートの状態を確認しに行くと、表面のペースト分は流出しており、細骨材(砂分)が目立つ状況であった(写真-1)。雨粒によって粗骨材(砂利)が露出しているような箇所はほとんどなく、全体的に平坦な状況であった。想像ではあるが、コンクリート天端が一気に湛水状態になったために、コンクリート表面への雨粒の影響は緩和されたのかも知れないと感じた。その後は、この状況を発注者に報告するとともに、底版上面に養生マットを敷設して作業を終了した。

図-1 U型擁壁の概要図-1 U型擁壁の概要

写真-1 ゲリラ豪雨を受けた後のコンクリートの表面状態写真-1 ゲリラ豪雨を受けた後のコンクリートの表面状態

原因と対処方法

今回のトラブルの原因は、明らかにこの急激な豪雨によるものである。後ほどの確認では、1時間に80mmを超える雨量のゲリラ豪雨に襲われたようである。気象台からは、「寒気が急激に流れ込んだ影響で大気が不安定になり、積乱雲が発生し、猛烈な雨(80mm/h以上)を記録し、多くの世帯が浸水被害を受けた。」とのコメントが発表されていた。

日本気象協会のWebサイト(tenki.jp)によると、ゲリラ豪雨とは局地的に短時間で降る激しい豪雨のことで、ゲリラ豪雨は規模が小さく、突発的かつ散発的に起こるため、事前に予測することが難しいとされている(図-2)。

図-2 ゲリラ豪雨のしくみ図-2 ゲリラ豪雨のしくみ(https://tenki.jp/bousai/knowledge/77690b5.html

写真-1に示すように底版コンクリートの表面のペースト分は流出し、荒れた状態になっていたので、翌日に表面を高圧水で洗浄したところ、5~10mm程度の深さが脆弱層として除去された。

材齢28日において、脆弱層を除去したあとのコンクリート面に対してテストハンマにより強度を確認したところ問題はない結果であった。この構造物では、躯体構築後はU型擁壁の内面に防水シートを敷設して掘削残土で埋め戻す計画であり、底版上面の劣化環境は厳しくない。そのため、発注者や設計者との協議において、修復不要、表面含浸材を塗布する、あるいは普通コンクリートで所定の厚さ以上になるように修復するといった案も検討された。しかし、最終的には発注者の指示により、補修用のセメントモルタルにより所定の断面までかぶり部を修復することとなった。なお、壁を打ち継ぐ範囲は脆弱層を除去したまま何もしないこととした。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

同様のトラブルを回避するための対応策としては、雨雲レーダー等による降雨予報、とくに局地的・突発的に激しい降雨をもたらすゲリラ豪雨の予報を活用することが有効と考えられる。ゲリラ豪雨の予報には、ウェザーニューズ社の「ゲリラ雷雨レーダー」などのサービスが提供されている1),2)

それと合わせて、雨除けシートの準備(迅速にセットするための工夫なども含む)、なるべく午前中に打込みが終わるような施工計画の検討(施工開始時間を早める、時間当たりの打込み量を増やすなど)、臨機応変な打込み計画の変更(施工の中断、打込みの翌日への延期)の可能性について事前に関係者で打合せ、などの対策を取っておくことが重要である。

なお、コンクリートの打込み時に0.6mm/hと15mm/hの降雨があった場合の表面損傷に関する比較実験がなされている3)。これによると、15mm/hの降雨(やや強い雨)では、金ごて仕上げ2回目の後であってもペースト分が流出して脆弱層ができるが、散水養生の後(セメントの凝結終了後)であれば損傷を受けないという結果であった。少なくとも散水養生の段階に至るまでは、ゲリラ豪雨への注意をしておいた方がよいようである。

参考文献

1) (株)ウェザーニューズ、ゲリラ豪雨レーダー、https://weathernews.jp/s/guerrilla/

2) (株)建設技術研究所、水災害発生リスクマップRisKma、https://www.riskma.net/ja/top

3) 加藤淳司ら:コンクリート打込み時の降雨によるスラブ表面の損傷に関する検討、https://www.tobishima.co.jp/laboratory/technique/pdf/66/gihou_66-2018-09.pdf、とびしま技報、第69号、pp.45-48、2018

関連記事

(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,スラブコンクリートの打込みと夕立(2019/09/26),https://concom.jp/contents/countermeasure/vol007/,2019年9月

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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