凍上、製鋼スラグ、路盤
基礎工事
土工事 4)土留・その他
2024/12/02
(1)路面不陸の原因の推定
路面の不陸は軟弱地盤や盛土の沈下の影響も考えられたが、切土・盛土両方で発生していることから舗装工事に関係する部分と考えられた。不陸発生箇所において部分的な掘削を行い路盤と路床を観察したところ下層路盤に凍上現象が認められた。現地開削試料で改めて凍上試験(NEXCO法)2)を実施した結果、凍上性材料と判定された。
下層路盤材に用いる材料は、切込砕石等を使用するのが一般的であるが、当該工事においてはコスト面や供給体制において有利であることから、図-1に示すように下層路盤に製鋼スラグを用いた。なお、工事着手前に行った凍上試験(NEXCO法)では凍上性は低い(凍結様式1、凍上率5%未満)との、結果が得られていた。
(2)下層路盤材(製鋼スラグ)の再試験
工事で使用した製鋼スラグについて改めて2種類の凍上試験(NEXCO法・JGS法 )3)を実施した結果、全ての材料で凍上性材料と判定された。このため下層路盤の凍上が今回の事象の主たる要因であると判断した。代表的な材料試験の結果を表-1に示す。
(3)製鋼スラグの凍上メカニズム
製鋼スラグの凍上メカニズムを解明するため、凍上試験等の追加試験を実施した。試験内容は製鋼スラグの骨材表面に付着している細粒分の有無による凍上性の変化を確認したもので、洗浄前後の製鋼スラグ骨材の写真を写真-2に示す。
また凍上試験(JGS法)結果を表-2に示す。細粒分を「洗浄+ふるい」で除去した製鋼スラグ③では、無処理のものと比べ凍上性はかなり低い結果となり、製鋼スラグの骨材表面に付着した細粒分が凍上の主要因であることが認められた。
また、材料選定時と工事完了後によって凍上性に差異があることは、各ロットによりスラグの品質にバラつきがあったことや、転圧によりスラグが一部破砕し、粒度が変化し凍上性が高まった可能性も考えられた。
(4)対策の実施
IRI (200)が基準値の3.5㎜/mを超える範囲の補修として「抑止対策(置換工)」と「抑制対策」を実施するものとした。また、費用対効果を検証するためIRI (200)が3.5㎜/mを下回る範囲については経過観察することにした。
(a)抑止対策(置換工)
下層路盤の製鋼スラグを砕石に置き換えるもので、路面不陸が非常に大きい箇所を対象に実施した。工事時間を短縮するため、施工性の良い大粒径舗装を採用した。施工イメージを図-2に示す。
(b)抑制対策(排水、防水)
路面水が下層路盤に浸透し、滞水したことが凍上現象の一因と考えられたため、本線路肩部の下層路盤をフィルター材に置き換える排水対策と、保護路肩部を遮水シート等で被う防水対策をそれぞれ実施した。切土部では双方を組み合わせ(図-3)、盛土部では防水対策のみ施工した(図-4)。
(5)効果の検証
対策工事を令和元年度と2年度にそれぞれ実施した。各対策実施後に IRI (200)を計測し、その前後で路面平坦効果について検証した。低減量の平均値と最大値を表-3に示す。
(a)抑止対策(置換工)
施工した箇所については対策前と対策後で比較すると、IRI(200)の低減が確認でき、一定の効果が認められた。最も大きく効果の表れた箇所では2.7㎜/m の低減効果を得られた。
(b)抑制対策(排水、防水)
最も効果の現れた箇所では2.4 ㎜/m 低減しており、この値は対策工としては高額になる置換工による効果と遜色ない値であった。しかし平均値を見ると置換工ほどの値は得られておらず、現地条件によって効果に差異があることが確認され、対費用効果としては判断が難しい結果となった。
今回の工事において経済性等から製鋼スラグを下層路盤材として初めて採用したが、品質のバラツキを考慮していなかったことが大きな原因と考えられる。
また、工事着手前の凍上性判定試験はCBR確認もできる方法2)の1種類でのみ行っていた。舗装工事は道路工事において最終の段階である場合が多く、やり直しには多大な費用と時間を要することになる。
このように実績がなく初めて採用する材料の場合は品質のバラツキを考慮し、可能な限り材料試験の頻度を多くすることや、凍上判定試験について種類の異なる方法で行うなど、ダブルでのチェックが必要と考えられる。また早い段階で現地での試験施工を行うなど、実現場において性状確認を行う工夫があっても良いと考えられる。
1) NEXCO東日本・中日本・西日本:調査要領 第1編、第3章 舗装 p.3-12 令和6年7月
2) NEXCO東日本・中日本・西日本:試験方法 第1編 土質関係試験方法 凍上試験方法p.64 令和5年7月
3) 地盤工学会 :地盤材料試験の方法と解説 凍上性判定のための土の凍上試験方法(JGS0172-2009)
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