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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設中(締固め)

洗浄水の凍結により発生した打継目の空洞

2014/12/25

工事の概要とトラブルの内容

写真1 変状箇所の状態(脆弱層除去後)写真1 変状箇所の状態(脆弱層除去後)

1月中旬、寒冷地で建設が進められていた、半地下式水処理施設において発生したトラブルである。

側壁コンクリートの最終リフトの打込みを終え、5日間の養生を経て型枠を解体した時、躯体外側の打継目10数mに亘って、幅約1cmのスリット状の空洞とその上部4~5cmの幅の黒っぽい変色層が発見された。打音検査で濁音があったため、奥行き方向にはつり調査したところ、鉄筋を超える深さにまで空洞と脆弱層が認められた(写真1、図1、図2)。当時、建設地点の外気温は、最高温度が0℃前後、最低気温は-10℃を下回っていたことが確認されている。また、コンクリート打込み当日は、型枠内部の簡単な目視点検を行っただけで打継ぎ面の状態は十分把握されていなかった。

なお、不具合箇所以外についても凍害による強度不足が懸念されたため、シュミットハンマーならびに小口径コアにより強度を確認したが、特に異常は認められなかった。

  • 図1 施工概要

    図1 施工概要

  • 図2 変状箇所の状況

    図2 変状箇所の状況

原因と対処方法

図3 補修対策図3 補修対策

トラブル発生に影響する思われる事項を抽出すると、以下のようである。

  • コンクリートの設計基準強度は21N/mm2、セメントは普通ポルトランドセメント、配合強度は温度補正等により30N/mm2、スランプは12cm、空気量は4.5±1.5%であった。
  • 打込み時のコンクリートの練上り温度は、5℃程度であった。
  • 下層のコンクリートは2週間前に打ち込まれ、せき板には化粧合板が用いられた。コンクリート打込みの前日には型枠内を温水ウォッシャーにより清掃し、躯体内側をジェットヒータ、外側をアイランプにより給熱養生した。また、内側支保工上面および外側足場にシート養生が施されていた。
  • 打込み完了時から型枠解体時までの5日間は、ジェットヒータとアイランプによる給熱養生を行なわれた。

これらのことから、変状発生の誘因は躯体外側の給熱養生が不十分だったことによると判断した。すなわち、打継目に残った凍結した洗浄水の上にコンクリートを打込んだため、凍結水の融解に伴い空洞が発生し、さらに上部コンクリートの硬化不良を引き起こしたものと結論付けた。

対策は、図3に示すとおりである。不具合箇所をウォータージェットにより台形状にはつり取り、プライマーを塗布したのち母材と同等のコンクリートにて充填する方法とした。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

日平均気温が4℃以下となる場合には、凍害を防止するために寒中コンクリートとしての施工を行なう必要がある。特に、打込み時のコンクリート温度、養生温度および養生終了時のコンクリート強度の管理が重要である。各項目の具体的な管理値は、参考文献1)に示されているので参照されたい。

本トラブルの直接的な原因は打継目に溜まった洗浄水の凍結を見逃したことによるが、寒中コンクリートとしてのよりきめ細かな対応がなされていれば、未然に防ぐことができたといえる。以下に、本事例にて得られた冬季における打継処理の留意点を示した。

  • 打継ぎ面の洗浄を行った場合には、必ず高圧空気で残留水の除去を行う。
  • 寒冷地でコンクリートを打ち継ぐ場合には、すでに打ち込まれたコンクリートの表面が氷点下となり、未水和の水分が凍結して打継ぎ部の品質低下を招く恐れがある。このため、打継ぎ面を断熱シートで覆うか、コンクリート打込み前日より給熱養生を行い打継ぎ部の温度低下を防ぐなどの対策が必要である。
  • コンクリートの養生温度管理では、対象部材全体に亘って所定の養生温度を確保することが大切である。特に、本事例のような施設では、躯体内・外面で養生温度に差が出やすいため、給熱用設備の種類、配置方法をよく検討する必要がある。また、外側の型枠に断熱性のシートを巻くなどの処置も効果があるので併用するとよい。

参考文献:1)土木学会、2012年制定コンクリート標準示方書【施工編】、pp.156-164

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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