打設中(締固め)
2014/12/25
1月中旬、寒冷地で建設が進められていた、半地下式水処理施設において発生したトラブルである。
側壁コンクリートの最終リフトの打込みを終え、5日間の養生を経て型枠を解体した時、躯体外側の打継目10数mに亘って、幅約1cmのスリット状の空洞とその上部4~5cmの幅の黒っぽい変色層が発見された。打音検査で濁音があったため、奥行き方向にはつり調査したところ、鉄筋を超える深さにまで空洞と脆弱層が認められた(写真1、図1、図2)。当時、建設地点の外気温は、最高温度が0℃前後、最低気温は-10℃を下回っていたことが確認されている。また、コンクリート打込み当日は、型枠内部の簡単な目視点検を行っただけで打継ぎ面の状態は十分把握されていなかった。
なお、不具合箇所以外についても凍害による強度不足が懸念されたため、シュミットハンマーならびに小口径コアにより強度を確認したが、特に異常は認められなかった。
トラブル発生に影響する思われる事項を抽出すると、以下のようである。
これらのことから、変状発生の誘因は躯体外側の給熱養生が不十分だったことによると判断した。すなわち、打継目に残った凍結した洗浄水の上にコンクリートを打込んだため、凍結水の融解に伴い空洞が発生し、さらに上部コンクリートの硬化不良を引き起こしたものと結論付けた。
対策は、図3に示すとおりである。不具合箇所をウォータージェットにより台形状にはつり取り、プライマーを塗布したのち母材と同等のコンクリートにて充填する方法とした。
日平均気温が4℃以下となる場合には、凍害を防止するために寒中コンクリートとしての施工を行なう必要がある。特に、打込み時のコンクリート温度、養生温度および養生終了時のコンクリート強度の管理が重要である。各項目の具体的な管理値は、参考文献1)に示されているので参照されたい。
本トラブルの直接的な原因は打継目に溜まった洗浄水の凍結を見逃したことによるが、寒中コンクリートとしてのよりきめ細かな対応がなされていれば、未然に防ぐことができたといえる。以下に、本事例にて得られた冬季における打継処理の留意点を示した。
参考文献:1)土木学会、2012年制定コンクリート標準示方書【施工編】、pp.156-164
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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