コンクリート工事
コンクリート工事
1)打設中(コンクリートの特性とクラック)
2025/01/06
トンネルの覆工コンクリートは図1のように10~12.5m長のセントルと呼ばれる、言うなれば内型枠と地山との間にフレッシュコンクリート(厚さ40~60cm)を打ち込んで構築する。
このため、10~12.5mおきに既設コンクリートと新設コンクリートの間に施工目地が設けられる。この施工目地には、アーチ方向に発生するひび割れを誘発して目地以外にひび割れが発生しないように制御したり、既設スパンからの拘束を緩和して、後打ちコンクリートのひび割れを抑制したりする効果も期待されている。
しかし、この施工目地には図2のように、ひび割れに加えて浮きや剥離が発生することが多い。コンクリートは打設完了後16~20h程度で脱型され、その強度は2~3N/mm2程度なので、先打ちコンクリートの浮きや剥離は若材齢時の脱型がその原因の一つである。先打ちコンクリートの端面となる図2の目地コンクリート部には後打ちコンクリートのためのセントルの押し付け圧が作用し、後打ちコンクリートの温度膨張収縮、乾燥収縮の影響を受けることで浮きや剥離が発生しやすい。
実際の目地部での浮きやひび割れを写真1と2に示す。さらに写真3、4のように施工目地に沿ったひび割れも発生する。
Aの現場では写真3のようなひび割れが、10スパンで2~3か所発生しており、全300スパンあるので合計90か所程度ある。
トンネル覆工の施工目地は、施工上どうしても必要になる事に加えて、前述のとおりそもそもひび割れ誘発目地としても効果を期待していることもあり、目地にひび割れが集中して発生することは目的にかなっている。しかしながら、施工目地部のひび割れと言っても、浮きを伴うことも多く、剥落に結びつく危険性がある。覆工コンクリートの剥落による第3者被害の危険性が言われて久しく、その防止を最重要に考えている今日、施工目地部のひび割れについても経過観察で終わらせることなく剥落防止対策が求められている。
このような事から、従前あまり気にされていなかった目地内のひび割れの防止や制御が課題となってきている。
前述のA現場ではこのような観点から、ひび割れ防止策として、施工目地部コンクリート接触面に付着低減剤を塗布する対策を試みている。現場Aにおける付着低減剤塗布後の目地部の状況を写真5、6に示す。写真3、4のようなひび割れは発生しておらず,コンクリート面が縁切りされている様子がわかる。地山側からの劣化因子(地下水やこれに含まれる塩分や酸等)の侵入を遮断できる防水シートが配置されていることもあり、このような方法で目地部においてコンクリート面をしっかりと縁切りする方法は耐久性上の問題は少ない。付着低減剤の費用が新たに発生するものの、補修費用を考えれば現場Aのような長いトンネルの場合は経済的にもメリットのある対策となっている。
現在、このように用いる付着低減剤として各種の材料(ポリエステルエマルジョン系や脂肪酸カルシウムと界面活性剤を主成分とする塗布剤、シラン系表面含浸材等)が開発利用されている例えば3)4)。他に縁切り材としてビニールシート等を設置している例もでてきている。
1) 鹿島建設HP:
https://www.kajima.co.jp/news/press/201710/2c1-j.htm
2) コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(トンネル覆工コンクリート編 国土交通省東北地方整備局),p.17
3) 前原一稀 他:覆工コンクリートの施工目地部の付着低減剤の開発と現場適用,令和5年度土木学会全国大会第78回年次学術講演会,Ⅵ-986,2023
4) 福田勝仁 他:覆工コンクリートにおける目地の付着力低減に関する検討,令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会,Ⅵ-239,2022
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