基礎工事
基礎工事
4)新工法・その他
2025/05/01
橋梁下部工の工事において、鋼管ソイルセメント杭(後沈設方式、φ1,300、L=30.0m)の試験施工を行った。施工範囲における地層は、GL0.0m~-2.0m:埋土(N=4)、GL-2.0m~-7.0m:粘性土(N=5~8)、GL-7.0m~-20.0m:沖積砂質土・礫質土(N=4~30、N=25~40)、GL-20.0m以深はN>50の洪積砂質土・礫質土層で構成され、地下水位はGL-2.0mであった。
掘削撹拌ヘッドで地盤を掘削しながらセメントミルクを注入し、地盤と撹拌混合してソイルセメント柱を造成した後、鋼管を建込み、沈設を開始した。
杭の下端まで残り8mの深さで、鋼管が沈設不能となって高止まりしたため、計画深度までの沈設が不可能と判断して沈設を中止し、鋼管の引抜きを行った(図-1)。
鋼管ソイルセメント杭(後沈設方式)の施工サイクルを図-2に示す。鋼管が沈設不能となった原因として、透水性の高い地盤においてソイルセメントの逸水により発生するジャーミング現象が発生した可能性が考えられた。しかし事前にジャーミング対策としてセメントミルクに増粘剤を配合していることに加え、鋼管の沈設時にソイルセメント天端の液面の低下等が確認されていなかったため、ジャーミング現象は発生していないものと考えられた。
このため、鋼管ソイルセメント杭の施工記録を再度確認した結果、以下の工程において、作業時間が計画より遅延していたことが分かった。
・図-2の②一般部ソイルセメント柱造成および③先端部ソイルセメント柱造成の段階において、GL-20.0m以深の洪積砂質土層・礫質土層が非常に硬質であったため、ソイルセメント造成時の掘削撹拌作業が計画より30分多く要した。
・また、⑤鋼管の建込み時、ソイルセメントの粘性が高く、計画より15分多く要した。
鋼管の沈設不能の原因は、ソイルセメント柱の造成が計画より30分遅延したことで、鋼管の建込み開始時にはソイルセメントの凝結がすでに始まっており、鋼管の建込み中にソイルセメントの凝結がさらに進行したことによるものと考えられた。
事後の対策として、鋼管を引抜いた後、全周回転掘削機を使用し、ハンマーグラブで硬化したソイルセメント柱を掘削して撤去し、掘削孔内に流動化処理土を打設して復旧を行った。
試験施工の施工サイクルと施工記録、各作業工程における施工時間に基づき、ソイルセメント柱の造成から鋼管の沈設完了まで、ソイルセメントの流動性を保持するため、凝結遅延剤の添加量の見直しを行った。
上記の対策を行い、当該箇所の杭の試験施工を再度行った結果、鋼管の沈設完了まで十分なソイルセメント柱の流動性を確保でき、計画深度まで鋼管を沈設することができた。
セメントミルクの配合は、ソイルセメントの必要強度、土質条件及び施工方法によって異なる2)。このため、施工条件に適したセメントミルクの配合、注入量を選定し、ソイルセメント柱の造成から鋼管の沈設完了まで、ソイルセメントの流動性を保持することが必要である。このため、サイクルタイムを適切に想定するとともに、施工条件に適した凝結遅延剤の使用及び添加量を事前に検討する。
ソイルセメント柱の造成時、凝結が進行していると判断された場合、必要に応じて繰り返し撹拌(ターニング、練り返し撹拌)を行う。
杭長が長い場合は鋼管の溶接接合が必要となるが、鋼管の建込みを行う前に縦継ぎまたは横継ぎで接合しておき、建込み中の接合時間を短縮する方法や、ヤードが確保できない等、事前の溶接接合が困難な場合は溶接継手に代えて機械式継手を用いる方法もある1)。
鋼管ソイルセメント杭においては、各作業工程の施工時間と施工記録、ソイルセメントの凝結時間を管理し、不測の事態があった場合、鋼管の沈設を中止する等、適切な判断が重要である。
1) 鋼管杭・鋼矢板技術協会:鋼管ソイルセメント杭工法施工管理要領
2) 日本道路協会:杭基礎施工便覧 令和2年改訂版
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