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話題の現場

2021/02/26

「i-Construction」推進と担い手確保へ向けた
ICT東北推進協議会(i-Academy恋地)と秋田県の取り組み(2)


写真提供:秋田県建設部

ICTの推進へ向けた地方の建設会社や行政の取り組みを紹介している「現場探訪/ICTの現場」。前回は、秋田県の研修拠点『i-Academy恋地』を中心に紹介しましたが、今回は『i-Academy恋地』の母体となる『ICT東北推進協議会』に参画する秋田県が、建設部建設政策課内に設置した『建設産業担い手確保育成センター』の活動を紹介します。秋田県内の建設業の担い手確保と育成等の取り組みについて、ご一読ください。

4.秋田県の取り組み

秋田県では、『ICT東北推進協議会』の設立に先駆け、2017年9月に全国初の取り組みとして『建設産業担い手確保育成センター』を建設部内に設置し、県内建設業の未来のために様々な活動を実施してきました。

その『建設産業担い手確保育成センター』の取り組みについて、秋田県建設部の奈良滋 建設政策課長、川辺透 技術管理課長、荒川祐次 建設政策課主幹にお話を伺いました。

Q.「建設産業担い手確保育成センター」について教えてください。

秋田県の建設業は、県内総生産の6.5%、就業者数の9.5%を占める基幹産業であり、県民の安全・安心に不可欠な産業です。しかし、県内建設業への入職者数の減少、3年以内離職率の高止まり、女性就業者数が少ない等、担い手確保に関する多くの課題を抱えてきました。それらの課題を解決するため、建設部建設政策課内に『建設産業担い手確保育成センター』を設置し、「若者確保」「女性活躍」「ICT活用」を3本の柱として、担い手確保のためのさまざまな取り組みを実施しています。

センターには「担い手確保育成推進員」として元工業高校の先生など男女各1名を採用し、高校とのネットワーク構築や建設企業との橋渡し等を専任で行っています(2019年度実績:高校訪問146回、協会・企業訪問等101回)。特に2020年度は、県内の建設企業を知っていただき、新規入職者を増やすことを目的に「秋田県建設企業ガイドブック2020」を作成しました。県内建設企業131社が掲載されており、普通高校も含めた県内の高校に配布しています。

Q.「若者確保」「女性活躍」「ICT活用」という3本柱の具体的な活動を教えてください。

○「若者確保」

「若者確保」としては、「建設企業出前説明会」を開催しています(2019年度実績:13校、15回)。建設企業が地元の高校に出向き、生徒や先生にやりがいや地元で働くメリットを説明しています。本年度は対象を工業高校から普通高校にも広げて開催することで裾野を広げています。加えて、企業の枠を越えた、入社5年以内の若手社員研修を行い、「仲間づくり」を通じて若手の離職防止・定着促進を図っています。

また、子どもたちが建設産業に興味を持つきっかけとなるようにICT建機の操作体験などができる「建設ふれあいフェア」を2018年より開催しています。恋地スキー場も会場の一部として開放しています。今年度は、新型コロナウィルスの影響によりオンラインでの開催となってしまいましたが、建設業の仕事内容や最新の建設機械などについてクイズ形式で楽しみ、大いに盛り上がりました。

図4)建設ふれあいフェアチラシ

図4)建設ふれあいフェアチラシ

○「女性活躍」

「女性活躍」としては、2018年に「あきた建設女性ネットワーク」(愛称:クローバー)を設立しました。地域・業種の垣根を超えた全県規模のネットワーク組織として、研修会など建設業で働く女性の交流を促進しています(2020.2.13実施 秋田建設産業女性交流会参加者70名)。公式キャラクターも制作し県内建設業の女性活躍を応援しています。

また秋田県では、県内各地域における「女性部会」の設立やその活動支援も行っています。2020年11月までに8地域(鹿角・北秋田・能代山本・秋田中央・由利・仙北・平鹿・雄勝)中7地域に女性部会が設立され、今年度中にすべての地域で設立される予定です。女性の「担い手確保育成推進員」もアドバイザーとして参加し、女性の働き方について意見を聞き、アドバイス等をしています。

図5)あきた建設女性ネットワーク公式応援キャラクター ©2018k-ishii

図5)あきた建設女性ネットワーク公式応援キャラクター ©2018k-ishii

○「ICT活用」

「ICT活用」も担い手確保のためには不可欠だと感じています。今後は『i-Academy恋地』での活動がさらに重要となってくるはずです。本年度はプロモーションビデオも作成しましたので、研修の認知度向上を図ると同時に、経営者・管理者向け研修や発注者向け研修等メニューも充実していきたいと考えています。
これまで県としても、ICT活用モデル工事の発注を行ってきましたが、本年度からは簡易型ICT活用工事も導入して普及を図っており、総合評価における加点制度もあることから、初めて経験するという県内建設企業が増えてきていますので、これらの活動を通じて裾野は広がっていると感じています。



以前は、人材育成は各企業の努力という風潮でしたが、今は県も一緒になって取り組もうということで活動しています。『ICT東北推進協議会』での活動も含め、次世代を担う学生や子供たちへの情報発信、女性が活躍する場の拡大、「秋田発」の建設ICT人材の育成を通じて、魅力ある秋田県の建設業を実現していきたいと考えています。

写真7) 左から秋田県建設部の荒川祐次 建設政策課主幹、奈良滋 建設政策課長、川辺透 技術管理課長

写真7) 左から秋田県建設部の荒川祐次 建設政策課主幹、奈良滋 建設政策課長、川辺透 技術管理課長

おわりに

i-Constructionに関連する取材で建設会社の方にいろいろとお話しを伺っていると、ICT活用工事に取り組むためには、ICT機器や人材に関する不安や新規投資に対するリスクがあって、なかなか手を出しづらいという想いがある一方で、一度ICT施工に取り組んでみると苦労は多いけれども、次からはなんとかなりそうだという声をよく聞きます。『i-Academy恋地』の研修であれば、実際にICT活用工事を受注しなくても建設技術者のICTに関する実践的な知識・経験を短期間で習得し、実際の施工に生かすことができると感じました。コロナ禍の続く中、ますます建設ICTの重要性は高まっていくと思いますので、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

また秋田県独自の取り組みである『建設産業担い手確保育成センター』の活動を契機に、コロナ禍においても、建設業が地域の雇用を支える業種として、また地域の安全・安心を支える仕事として、改めて注目され、建設業に携わる人が増えていくことを期待します。

今後の、秋田県・五城目町と『ICT東北推進協議会』、秋田県の建設業に携わる皆さんの発展を祈念しています。

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