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ICTの現場

2021/01/28

「i-Construction」推進と担い手確保へ向けた
ICT東北推進協議会(i-Academy恋地)と秋田県の取り組み(1)

ICTの推進へ向けた地方の建設会社や行政の取り組みを紹介している「現場探訪/ICTの現場」。今回は、ICTの活用を総合的かつ実践的に学べる研修拠点について紹介します。研修を実施しているのは秋田県、五城目町、(一社)秋田県建設業協会、(一社)日本建設機械施工協会東北支部およびドローンスクールを運営する(株)スリーアイバードの5者によって設立された『ICT東北推進協議会』。起工測量から3次元データ作成、ICT施工、出来形管理、納品、検査まで一気通貫の研修を実施しているのが特長です。この取り組みは令和元年度の「i-Construction大賞」の「優秀賞」という評価を受けました。コンコムでは、研修の拠点となる『i-Academy恋地』(秋田県五城目町)を訪問し、研修の概要や取り組みについてお聞きしました。この研修には県内だけでなく、全国から参加することが可能ですので、これからICTを採り入れようとしている建設会社の皆さんにも参考になると思います。さらに今回の取材では、『ICT東北推進協議会』の設立に先駆けて、秋田県が担い手確保と育成を目的に建設部建設政策課内に設置した『建設産業担い手確保育成センター』の活動についても担当者にお話しを伺うことができました。2回に分けて紹介しますのでご一読ください。

1.ICT東北推進協議会(i-Academy恋地)設立の経緯

『ICT東北推進協議会』は、ICT技術の全面的な活用による担い手不足の解消と生産性の向上をめざし、2018年に設立されました。

秋田県は人口減少・高齢化が全国平均よりも進んでおり、交流人口の拡大や遊休施設の利活用による地域の活性化等の地域課題解消といった施策が求められています。

また、県中央部に位置する五城目町は、1960年代には20,000人いた人口が現在10,000人を切っている中山間地域で、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2060年には2,000人台に減少すると予測されています。こうした中、人口減少社会でも持続可能な地域環境を整備しようと、ICTによる地域づくりに着手し、情報通信基盤の整備を進めるとともに、2013年には、統廃合により閉校した旧馬場目小学校を改築し、レンタルオフィスとして運営する「五城目町地域活性化支援センター(通称:BABAME BASE)」を開設。企業誘致・起業支援に取り組んできました。

図1)BABAME BASE 位置図

図1)BABAME BASE 位置図

2018年5月には、このBABAME BASEや休止中の恋地スキー場を活用し、全国随一の建設ICT研修拠点として「i-Academy恋地」が完成。2019年6月には秋田工業高等専門学校が協議会に加入し、前述の『ICT東北推進協議会』5者と併せて、産官学の連携体制が構築されています。

図2)ICT東北推進協議会 推進体制

図2)ICT東北推進協議会 推進体制

2.ICT東北推進協議会(i-Academy恋地)での研修内容

国土交通省が2016年度よりi-Constructionを推進する中、全国でICT推進のための研修が実施されてきましたが、座学やICT関連機器の操作説明、現場見学会などが中心であり、実務で活用できる実践的なノウハウを習得できる研修が少ない、ICT活用工事の全工程を一気通貫で学べる研修がないという声も聞かれました。「i-Academy恋地」では、ICT活用モデル工事に自ら取り組み技術を習得する「施工経験連動型研修」で、「3次元起工測量」「3次元設計データ作成」「ICT建設機械による施工」「3次元出来形管理」「3次元データの納品と検査」の全工程に加えて画像処理についても実際に経験することができます。座学の実習はBABAME BASE内の研修室で、実技の研修は屋外訓練場、屋内訓練場および休止中の町営恋地スキー場で実施しています。恋地スキー場には、モデル道路改良工事の施工現場を設置し、実習で使用する3次元データはその施工現場のデータを使用することにより、ICT施工の現場を疑似体験できることが特長です。

写真1)BABAME BASE(旧馬場目小学校を活用)

写真1)BABAME BASE(旧馬場目小学校を活用)

写真2)恋地スキー場(休止中)

写真2)恋地スキー場(休止中)

3.i-Academy恋地インタビュー

『ICT東北推進協議会』の一員として、研修事業を行っている(株)スリーアイバードの伊藤驍さんと石井昭浩さんにお話を伺いました。

Q.研修の実施状況をおしえてください

研修をスタートした2018年度と2019年度で計8回の研修を実施し、120名以上の方が受講されました。受講者は秋田県内だけではなく、約3割は県外からの参加です。講師も含めて多くの方が来られたため、飲食施設の売り上げ増加など地域の活性化にも寄与できています。

2020年度は新型コロナウィルスの影響により、研修は中止しておりましたが、6月より再開しました。研修は当初、5日間セットの座学と実地の研修でしたが、冬期は雪により恋地スキー場での実地研修が開催できないため、実地は別途申し込みをしての開催となっています。

Q.研修の特長をお聞かせください。

テキストはモデル工事に沿ったオリジナルテキストを作成し、使用しています。講師陣は、測量会社・設計会社・施工会社・建機メーカー・ソフト開発メーカー等、日本建設機械施工協会(JCMA)内の協賛企業の専門家に依頼するとともに、講師の他に個別対応サポート員も2~3名配置しているため、座学中のPC操作に不安のある方も安心です。

実習についてはUAV飛行経路を電卓で計算するなど、より実践的な課題を研修内に採り入れたり、モデル工事の施工現場には道路計画にカーブを付ける、現場状況によって対応できるようUAV測量とTLS測量のポイントを設ける、など実際の現場に近づける工夫もしています。

写真3)伊藤驍さん

写真3)伊藤驍さん

写真4)研修状況(座学)

写真4)研修状況(座学)

写真5)研修状況(UAV実習)

写真5)研修状況(UAV実習)

Q.ICT研修のこれからや、今後の目標等について教えてください。

ICTに関する技術者育成の研修は、深化の段階にあると考えています。第一段階はUAV操縦や画像処理、ICT建機の見学など一方通行で講習が実施されてきた啓蒙期。第二段階では部分的な講習を一カ所に集めた総合研修となってきましたが、個別の講習自体は単独であり、全体のつながりはありませんでした。これからは深化の第三段階、実務に活用できる研修として、ICT機器の取り扱い方法や施工プロセスを連動させ、全工程を経験する研修を通じて知識と技術を習得する必要があります。重要なことは、全工程を理解している事、最終形を知っていることです。

加えて、i-Academy恋地での研修では、受講者が研修終了後に実際の現場を施工する際に不明な点や疑問が生じた場合、HP内の質疑システムでフォローアップすることが可能となっています。これは、受講者からも高い評価を得ています。

図3)施工経験連動型研修

図3)施工経験連動型研修

写真6)石井昭浩さん

写真6)石井昭浩さん

今後は、第三者認証的な機能を付加することについての検討、担い手確保の一環として、学生向けの3次元測量研修や入職者の定着率向上を目的とした若手世代への研修の実施、施工CIMに特化した情報研修や発注者向け研修の実施など、拡充をしていきたいと考えています。将来的には、宿泊施設の整備やメーカー各社の事業所進出による一大拠点化、さらにはICT普及拡大の観点からアジア諸国と連携し、秋田県から全国、そして世界に活動を広げて建設業に貢献したいと考えています。

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