
2025/02/03
発行/現代書林
著者/田村 喜子 著
発行日/2021年3月
価格/本体1,925円(税込み)
ISBN/9784774518848
琵琶湖疏水の田辺朔郎や小樽築港の廣井勇ら、明治から昭和にかけて、社会インフラの整備に命をかけた20人の土木技術者たち。その信念に基づく生き様を、リスペクトを持って描いた作家・田村喜子の名著『土木のこころ-夢追いびとたちの系譜』が、復刻版としてよみがえった。まえがきにあるのは、「土木には技術と同時に『土木のこころ』が伴わなければならないと私は思う。社会資本、あるいはインフラを整備するに際して、いちばん核となるのは人間であり、その心なのだ」の一節。その通り、20人の先達の真摯な姿、困難に直面した場面で出てくる言葉には心打たれる。
一人ひとりの伝記は簡略にまとめられ、どれも印象深いが、台湾で不毛の大地と呼ばれていた嘉南(かなん)平原に、堰堤長約1.3kmという大規模な「烏山頭ダム」と、総延長16000kmにおよぶ給排水路を完成させ、豊穣の地に変えたことで知られる八田輿一の章は必読。当時としては新しいセミハイドロリックフィル工法(湿式土堰堤工法)を採用、人力に頼らない大型土木機械を導入しただけでなく、「よい仕事は安心して働ける環境から生まれる」との考えから、工事関係者のための住宅、病院、娯楽施設を整備した八田の〝こころ〟を、こんな言葉で紹介している。
「工事は烏山頭でやっているから、家族もここで暮らさなければならない。なぜなら、時間が経つとともに家族のことが気にかかり、全身全霊で工事に打ち込むことができなくなるからだ。それでは工事の質が良くなるはずがない」。土木工事に従事する技術者の皆さんにとってどうにもならない状況を打破しようとする時、自らを奮い立たせてくれる名言ばかりが連なる。
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