土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
基礎工事
3)既製杭
2019/07/30
施工地盤は、GL-5mまでは緩いシルト混じり細砂層、GL-9mまでは軟弱な砂混じりシルト層、その下の硬い砂混じりシルト層を経て、GL-15m付近に基礎杭の支持層となる細砂層(層厚6.0m)が存在していた(図2)。
液状化判定の結果、上部の緩いシルト混じり細砂層が液状化のおそれがあると判定されたため、GL-5mまで締固め砂杭工法による液状化対策を行った後、建物の基礎杭となる既製コンクリート杭を施工する計画であった。地盤の締固めについては、現地状況から振動や騒音を抑制できる工法が望ましいため、静的締固め砂杭(正方形配置:2.1m×2.1m)を採用した。
締固め砂杭による地盤改良では、工法の性質上、改良後の砂杭位置が最も硬く、砂杭から離れるに従って徐々に緩くなる傾向がある。基礎杭施工時のボーリング孔は、この影響を受けて偏心したり傾斜したりすることが懸念された。そこで、基礎杭の試験施工(試験杭)に先立ち数箇所で試験削孔(プレボーリング)を実施して、締固め砂杭との位置関係がボーリング孔の施工精度に及ぼす影響を調査した。
その結果、基礎杭が締固め砂杭と干渉する箇所では、基礎杭のプレボーリング孔が、正規の位置から強度が低い地盤の方へと傾斜したり偏心したりすることが確認された(図3)。これは、削孔用のオーガヘッドや攪拌ロッドが締固め砂杭の影響を受けて、砂杭周辺の強度が低い地盤に掘削用ヘッドやロッドが偏心・傾斜したことが原因と推定された。
そこで基礎杭の施工に際して、掘削孔および既製コンクリート杭の杭心ずれを防止し鉛直性を確保するため、事前対策として、基礎杭打設機の他に先行削孔機を配備することとした。先行削孔機は、通常のスパイラルオーガや攪拌ロッドに比べて剛性の高いケーシング(φ700)を装着した削孔機で、杭心位置の全箇所で静的締固め杭の先端深度(GL-5m)付近までケーシングで先行削孔した後、山砂で埋戻し、再度杭心を出して基礎杭をプレボーリング工法により施工した(図4)。
その結果、基礎杭の偏心や傾斜は、すべての管理値以内(偏心100mm,傾斜1/100)に収めることができた。
本事例のように、締固め砂杭による地盤改良後や、既存の基礎杭引抜き後に新設(基礎)杭を打設する場合は、地盤の弱い方に杭が偏心したり傾斜したりすることがある。このような現場では、事前に発注者や設計担当者等の関係者と協議して、対策を講じる必要がある。
締固め砂杭に関しては、本事例のように先行掘削する方法はコストがかかるため、それとは別の対策として、(地盤改良の際の)標準的な締固め砂杭の配置を基礎杭に当たらないように変更するという対策(地盤改良の砂杭の本数は変えずに、打設位置を標準から本設杭に当たらないように少しずらす)をとる事例が最近では一般的となっている。これは、締固め本数を満足していれば、液状化対策効果は確保できるとの考え方によるものである。
1)社団法人 日本道路協会:道路土工 軟弱地盤対策工指針(平成24年度版), 平成24年8月, pp.293
2)公益社団法人 日本道路協会:杭基礎施工便覧, 平成27年3月, pp.198
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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