土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
4)打設準備(型枠・鉄筋組立等)
2020/03/30
4月に発生した、高速道路のインターチェンジのランプ部の構築に関する事例である。
コンクリート打込みは、図1に示すように①底版、②壁1、③壁2、④中床版の4ロットに割り付けた。当初、壁1と壁2の打継部の型枠からモルタルが漏れたため、モルタルの垂れをケレン、サンダー掛け、それらの補修、といった余計なコストが発生していた。
そこで次の区間では、補修費用を減らすため、壁2のコンクリート打込み後、型枠の下方に垂れているモルタルに対して、硬化しないうちに洗車ブラシと雑巾で拭き取ることにした。ところが、担当した作業員が気を利かせ、高圧洗浄水を使って、壁2から垂れているモルタルをきれいに洗浄した(図2)。
1週間後に型枠を取り外すと、高圧水で洗浄した箇所のコンクリートの表面は、セメント分が洗われて砂だらけになっていた(図3)。
砂が露出した原因は、洗浄の高圧水が呼び水になり、打ち込んだコンクリートから主にセメント分が抜け落ちたものと考えられた。
同じことが起きないように職長と話し合った結果、次からは、打継ぎ面の下5cmの位置に隙間テープを貼付することにした(写真1)。
この処置により、型枠下へのモルタルの漏れは見られなかったものの、脱型後に、打継部を観察してみると、隙間テープは蛇行し、隙間テープの厚み(つぶれた状態)に相当する目違いが発生(写真2)し、対策前と同等の補修費用が発生した。隙間テープはモルタルの漏れを抑制する効果があるが、今回は既に打ち込まれたコンクリートの表面の汚れなどが原因で隙間テープの接着性能が低下したり、隙間の大きさが大きく、貼付した隙間テープでは厚みが不足していたのではないかと推察された。もちろん、型枠の組立てがゆるんだことも考えられる。
型枠検査の段階で、型枠を1~2mmの精度で組み立てることは容易である。ところがコンクリートを打ち込むと、その側圧による型枠のはらみや、コンクリートの横移動等によりセパレータのたわみが発生する。また、鋼管、フォームタイなどの緊結部材が型枠材になじむことにより、許容される範囲で型枠の変形が生じる。これらの現象により、本来直線であるべき壁面の出来形は、わずかに湾曲する。
一例を図4で説明するが、わかりやすくするために上記の湾曲を実寸より大きく示している。この例では下側の壁1コンクリートの出来形は内側に湾曲している。壁1コンクリートの型枠を全て取り外し、壁2の鉄筋の組立て後、壁2の型枠を図面通りの寸法で組み立てると、壁1コンクリートと壁2型枠の間には隙間が生じる。この状態で、壁2のコンクリートが打ち込まれると、目違いが生じる。
参考として、コンクリート標準示方書1)のなかに「コンクリートの打込み前に、型枠の下端部やコーナー部に外側から懐中電灯で光を当てて、型枠内部に漏れる灯りで型枠の隙間を見つける方法もある。事前に発見された隙間は、隙間テープ等を用いて確実に対策を講じておくことが重要である。」という記述がある。ただ、この処置だけではセメントペーストの漏れは防げるが、段差は生じる。
型枠工と話し合い、壁1コンクリートの最上部の型枠を取り外さずに残し、その型枠の上に壁2の型枠を組み立てることで、目違いが発生しないようにした。状況によるが、最上部の型枠は高さ30cm、45cm、90cm程度の型枠を使用し、取り外さずに残すことにした。もちろん型枠を取り外さないのだから、隙間テープを貼ることはできない。この方法は功を奏し、以後のコンクリートの打込みでは目違いが無くなった。
別な現場の例だが、柱、壁などの型枠にメタルフォームを縦長に使用する場合には、新たに組み立てた型枠はゆがみが発生しやすいので、この方法は有効である(図5)。
また、図4で壁1のコンクリートを設計図面通りの寸法に近づける(湾曲させない)ことも、隙間を小さくするために効果がある。例えば壁1の施工には、セパレータとしてW5/16(2分5厘)の代わりにW3/8(3分)を使用することで、たわみが少なくなり型枠が堅固になる。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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