現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

特別企画


現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

4)打設準備(型枠・鉄筋組立・その他)

2021/09/29

PCグラウトの圧縮強度が出ない

工事の概要とトラブルの内容

水池の構築工事に付随して、PCタンク(調圧水槽)を2基、築造する工事である(写真1)。PC工事の施工は専業者に請け負わせている。PCタンクは地上部の高さが約10m、直径は約8m、壁厚25cmであり、図1に示すようにPC鋼線を50cmごとに交互に配置している。壁のコンクリートを打込み後、PC鋼線を緊張し、シース内にグラウトを注入する。

写真1 PCタンク写真1 PCタンク

図1 PC鋼線配置図(構造物の寸法はイメージ)図1 PC鋼線配置図(構造物の寸法はイメージ)

2005年8月末の現場の状況は、1基目のタンクの緊張が終わり、シース内にグラウトを注入する直前であった。グラウトの注入に先立ち、試験練りを行ったグラウトの圧縮強度試験(材齢28日)を行うことにした。圧縮強度試験は生コンプラントの試験室にお願いし、PC工事の主任技術者と一緒に立ち会った。

3本の供試体の試験結果は表1のとおりであり、コンクリート標準示方書1)に規定されている非膨張性グラウトの圧縮強度値である材齢28日で30N/mm以上に達していなかった。このままではグラウト注入から先の工事を行うことができなくなる。

表1 圧縮強度試験結果σ28(単位N/mm表1 圧縮強度試験結果σ28(単位N/mm2)

原因と対処方法

目標とする圧縮強度が得られなかった原因については、PC工事業者と話し合い、可能性として以下の3点に集約された。

①材料が風化していた。
グラウトの材料はプレミックス材を使用しているので配合の間違いはないが、半年前に別の現場で使用して余った材料を使ったとのことであった。

②十分に練り混ぜていなかった。
十分に練り混ぜたと言っているが、現場を見ていたわけではないので可能性はある。

③養生を含めた供試体の作製方法が悪かった。
カタログ2)によると、「グラウトを円柱形の型枠(内径50mm×高さ100mm)の高さ の約1/2まで詰め、突き棒等を用いて、数回突く。型枠を軽くタッピングして空隙をなくす。次にグラウトを型枠の上端まで詰める。同様の作業を行ったのち、ペーストキャッピングをするために、上端から1~2mm下げる。さらに整形後ただちに上面をラップで覆い、輪ゴムで止め、これにより水分の蒸発を防ぐ。」と書かれているが、グラウトを2回に分けて詰め、タッピングによりエアを抜く行為、ラッピングは行っていないとのことであった。
次に「グラウトの硬化を待って型枠を取り外し、供試体の上面はペーストキャッピングを行い、材齢日まで水槽で水中養生する。」とあり、これは規定された手順に従い実施したとのことであった。
そこで、新しいプレミックス材を購入し、6本の供試体を作製した。PCグラウトの練混ぜは現地で使用するグラウトミキサで行い、グラウトを型枠に詰め、整形後ラップで密封するなど供試体の作製は丁寧にカタログに従った。ちなみにグラウトは非膨張性、高粘性型でありJPロートによる流下時間は16秒(流動性の管理値は14~23秒)であった1)

最近のコンクリート標準示方書3)によれば、「圧縮強度を確認する材齢は7日を標準とする。」とあるが、当時の圧縮強度の測定は材齢28日であり、早期の強度を確認するために余分に3本の供試体を作製し、7日目に圧縮強度を測定した。その結果、表2に示すように3本とも30N/mmを超えたので、発注者と協議し、ほぼ予定した工程通りの日程でグラウトの注入を行うことができた。ただし、圧縮強度が出なかった主原因は特定できていない。

表2 圧縮強度試験結果σ7(単位N/mm表2 圧縮強度試験結果σ7(単位N/mm2)

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

グラウト用の供試体は生コン用の供試体(骨材が25mmの場合:直径100mm×高さ200mm)と比べて小型のため、一般的に強度試験結果の変動が大きくなりやすい4)ことから供試体の作製にあたっては入念な管理が必要である。カタログには供試体の型枠をラップで覆い水の蒸発を防ぐという手順が記載されているがJIS5)には「水分の蒸発を防がなければならない。」と記述されているだけで具体的な方法を示しているわけではない。今回の現場のように、28日の圧縮強度が発現しない事例がいくつも有り、生コンの打込み現場でよく見られるような供試体型枠の上に板を載せる養生ではなく、一つずつラップにて確実に密封する方法を推奨したのではないかと推察する。

PCグラウトの目的は①PC鋼材を腐食から保護することと、②緊張材と部材コンクリートに付着を与え一体化することであり、付着強度はPCグラウトの圧縮強度で代用し、海外の基準を参考に30N/mm2としたそうである。1978年発行のPCグラウトの設計施工指針6)ではこの値が20N/mm2以上として制定されていたが、2002年に非膨張性グラウトでは30N/mm2、膨張性グラウトで20N/mm2と改訂1)され、2012年以降に30N/mm2に統一された7)。コンクリート標準示方書など、指針類は常に最新のものを確認する必要がある。

参考文献

1) 土木学会;【2002制定】コンクリート標準示方書[施工編],プレストレストコンクリート

2) 太平洋マテリアル株式会社;無収縮モルタル(グラウト材)圧縮強度供試体の作り方

3) 土木学会; 2017制定 コンクリート標準示方書【施工編】,特殊コンクリート

4) 山本大介ほか;小径コアの圧縮強度の変動に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集vol.35,No.1,2003

5) JIS A 1132:2020 コンクリートの強度試験用供試体の作り方

6) プレストレストコンクリート工学会;PCグラウトの設計施工指針,1978

7) プレストレストコンクリート工学会;PCグラウトの設計施工指針―改訂版―,2012 12月

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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