現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

4)打設準備(型枠・鉄筋組立・その他)

2022/04/01

コンクリートの打継目に設置した止水板の損傷

工事の概要とトラブルの内容

下に上水の配水池を10池(5×2列)構築する工事である(写真1)。1ブロックの大きさは35m×35m、高さは10mである。図1にコンクリートのリフト割を示す。

構造物は上水の池ということでコンクリートには水密性が要求される。コンクリート標準示方書には「水密性を有する打継目を造るためには、旧コンクリート上部のレイタンス、品質の悪いコンクリート、ゆるんだ骨材粒などを取り除いてから打ち継ぐことが必要である。」と書かれているが、それだけでは不安のため、土と接する外周の壁、および水を貯める池の周囲の壁の打継ぎには止水鉄板を設置することにした。設計図面、特記仕様書にはコンクリート打継ぎ部に止水板を設置することは記されていない注)。もちろんブロック間の継目やひび割れ誘発目地に対しては塩化ビニル製のExpansion Jointを設置する設計になっている。

1ブロック目の壁②のコンクリート打込み時のことである。コンクリートの受入れ検査の終了後、1層目のコンクリートの打込み状況を確認するために、型枠内部をアイランプで照らして覗くと、打継ぎ部に設置した止水鉄板が折れて潰れているのを見つけた。よく見ると半分以上の止水鉄板が踏みつけられて倒れている。

壁①の鉄筋及び型枠の組立ての際、止水鉄板はハンチの鉄筋にガードされていて踏まれずにいたので、壁②の組立て作業時に止水鉄板が踏まれることなど予知していなかった。このまま放置すると、打継ぎ部が弱点となり、漏水の原因になる。

写真1 配水池の全景写真1 配水池の全景

図1 構造物のリフト割図1 構造物のリフト割

原因と対処方法

ただちに打込みを中断し、合番の型枠工と鉄筋工に、倒れた止水鉄板を起こさせ、修正を確認後、打込みを再開した。すでに生コンが打ち込まれていた5m程度の区間は止水鉄板が踏み倒されていたかどうか不明だったので、後日、壁①と壁②の打継ぎ目全体を外側より防護することにした。処置の方法として、壁の外側から継目部をVカットし、エポキシ系の樹脂モルタルでコーキングした(図2)。

職長を集めて反省会を開いたところ、鉄筋・型枠組立の段階で、作業員が止水鉄板の重要性を認識せず、踏みつけていたようである。まずは止水板を踏まない、踏みつけた場合はその場で直すなど、同じトラブルが起きないように職長から作業員への教育を徹底するように依頼した。

図2 打継目の補修図2 打継目の補修

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

止水鉄板の設置は半分を旧コンクリートに埋め込み、残り半分の顔を出しておくのが理想である。壁①、②間では幅15cmの止水鉄板を用いたので埋め込み深さは7~8cm程度になるが、底版コンクリートの打込み終了後に設置する場合、底版鉄筋のかぶりしか差し込めないので、コンクリート面より上に出る長さが半分より長くなる。

設置するタイミングとして、コンクリートの打込み直後では鉄板が倒れたり、沈んでしまい、硬化すると入らなくなる。また、硬化後の挿入は鉄板とコンクリートの間に間隙を作ることになり、漏水の原因になりかねない。時機を見計らって設置することになるが、底版のような広いエリアでは、あらかじめ止水鉄板を鉄筋の内側に吊っておくと、左官工に設置を委ねることもできる。通常、鉄板はロール状に巻かれていて重いので、二人以上の作業になる。鉄板と鉄板どうしのつなぎは、二枚の鉄板を単に重ねるのではなく、図3のように鉄板を20cm程度折り曲げ、重ね合わせると止水効果が出る。

止水鉄板の代わりに、薄い鉄板の両側に水膨潤性のゴムを貼り付けたものが市販されている(写真2)。確実な止水性を要求する場合は、これを使用するのがベターである。止水板のつなぎには、ただ重ね合わせるだけでゴムどうしが接着するので取扱いしやすい。ゴムが水と接触しないようにシールされていて、コンクリート内に設置する時に下半分のシールをはがし、コンクリートを打ち継ぐ直前に上側のシールを外す。ゴムに洗浄水が触れると、ゴムが膨潤するので注意を要する。

図3 止水鉄板の重ね合わせ図3 止水鉄板の重ね合わせ

写真2 水膨潤性のゴムを貼った止水板写真2 水膨潤性のゴムを貼った止水板

蛇足であるが、上水の施設には壁を貫通する水道管が設置される。たいていの場合、管の周囲には鍔(つば)が付いていて、これが漏水を防ぐことになっているが、これだけでは不安なので管の周囲に水膨潤性のゴムを一周、貼付しておくと良い。シールドトンネルのセグメントには水膨潤性のシールを取り付けるのは常態であるが、明かり工事ではあまり普及していないようである。

注)2007年制定コンクリート標準示方書[設計編]14.9水密構造には「水密性を要する鉄筋コンクリート構造物では、有害なひび割れが発生するのを防ぐように、配筋、打継目および伸縮目地の間隔および配置等を定めなければならない。」とあり、解説には「ひび割れを少なくするよう・・・適当な間隔および位置に伸縮目地および打継目を設けたりして・・・目地および打継目に止水板などを設置して水密的にするように構造物を設計しなければならない。」と書かれている。
ここで述べている「目地および打継目」というのは壁の鉛直方向に関するものでありひび割れ誘発目地における止水板の設置方法については、
コラム「壁状コンクリート構造物に設置するひび割れ誘発目地の留意点」
https://concom.jp/contents/countermeasure/column/vol37.html
を参照ください。
本文中の打継目はコンクリートのリフト割によって発生する水平面に関するものであり、位置及び施工方法は施工業者に任されている。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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