土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
基礎工事
2)その他の場所打杭
2022/11/01
アースドリル工法による支持杭を用いた大型機械基礎を施工した。杭の仕様は、杭径φ800mm、杭長18.5m、掘削長19.4mであった。施工地盤は、GL-10.5mまではN値10~15の埋立砂層、GL-13.7mまではN値2~3のシルト層、GL-18.0mまではN値15~20の細砂層、それ以深はN≧50の硬質粘性土層(土丹層)となっていた。地下水位はGL-1.5mであった(図-1)。
本設杭の施工を行う前に、同等の仕様の試験杭2本のうち1本に対して鉛直載荷試験を実施したところ、計画最大荷重5730kNに対し1850kNで沈下が大きくなり、3000kNで急増、4600kNで沈下量180mmに達した。その後は荷重増に対応する沈下量の増加率がやや小さくなったが、最終載荷荷重6000kNに対し沈下量は220mmとなった(図-2)。
試験杭の沈下の発生原因について検討した結果、以下のように杭施工時のスライム処理が不十分であったことによるものと考えられた。
・掘削対象土層は、細砂層が主体で、スライムが多く発生しやすい地層であった。
・もう1本の試験杭では載荷試験を行わずコア採取を実施したが、先端部で50~70cmのスライム堆積が確認された。
・杭のスライム処理は、エアリフトにより約30分間実施したが、スライムの堆積を無くすのに十分でなかった可能性が高い。また、鉄筋かご設置・トレミー管建込み後の2次スライム処理も実施していなかった。
本設杭(φ800mm、N=28本)の施工にあたっては、エアリフトによるスライム処理時間を2倍の1時間以上とした。さらに鉄筋かご設置・トレミー管建込み後の2次スライム処理を追加で行うこととした。
しかし、施工後に杭全数(28本)で先端のコアを採取した結果、4本の杭について厚さ60~120mmのスライムの堆積が確認された。これらの杭に対しては、コアを採取した孔を利用して、ジェットノズルを杭先端まで挿入して回転させながら高圧噴射水でスライムを洗浄除去してから、セメントミルクを注入した。
これにより大型機械基礎の工事を完了した。
「場所打ちコンクリート杭の品質管理のポイント」1)では、
①1次スライム処理ではスライム処理ポンプを用いた「良液置換」を実施することを原則とする。
②良液置換(孔底からポンプにより安定液を吸引し、表面から砂分を除去した安定液を送ることによる)では、「砂分率」の管理値(概ね3%以下で設定される事例が多い)を定めて砂分測定を実施し、置換の完了を確認する。管理値を達成するために振動ふるいや遠心力分離装置などの追加設備の要否を併せて検討する。
③トレミー管建込み後にも孔底を検測し、スライムの有無を確認したうえで、必要に応じて2次スライム処理を実施する。
等が重点管理項目としてあげられている。また、コンクリート打込み前の堆積スライム厚さの管理基準値は30~50mmとされている。
とくに、掘削対象土に細砂層等のスライムが発生しやすい土質が多く含まれる地盤において、アースドリル工法等の場所打ち杭を施工する場合は、コンクリート打込み前のスライム処理は必要な支持力確保や杭頭部の品質を確保するうえで極めて重要である。
最近の報道においても、駅舎の改良工事で場所打ち杭のスライム処理不良による基礎杭の沈下が発生したとの記事2)があった。スライム処理の詳細は明らかになっていないが、以下の項目がトラブルの主な要因であるとされていた。
a)掘削対象土に孔壁の崩壊しやすい砂礫層が含まれていたため、孔壁の崩壊防止のため高粘度の安定液を用いていた。そのため、スライムの沈降に時間を要した。
b)作業時間の制約等により、掘削完了後のスライム処理からコンクリートの打込みまでに時間が空き過ぎていたのに、この間に堆積したスライムを除去しないでコンクリートの打込みを行った。
もし、上記の重点管理項目③を充分に認識し2次スライム処理を実施していれば、問題は発生していなかったと思われる。
1) 一般社団法人 日本建設業連合会 地盤基礎専門部会
場所打ちコンクリート杭の品質管理の現状と課題WG:
場所打ちコンクリート杭の品質管理のポイント, 平成29年6月
2) 海老名駅改良工事、基礎杭の施工不良の原因が判明
日経アーキテクチュア,2021.11.15
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