土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
4)打設準備(型枠・鉄筋組立・その他)
2023/04/03
下水道のポンプ所を築造する工事において地中連続壁で囲われた内部を鉄筋工と型枠工の仕事が連続するように3ブロックに分けて施工している(図1)。床付けが終わり、底版のコンクリート工事が始まった。ポンプ所の地下二階の壁の工事に先駆けて、厚さt=1.0m用のセパレータを1000本、厚さt=1.8m用のセパレータを100本、厚さt=300mmの片セパを300本発注した。
当現場ではコンクリート打込み前に発注者側の監督員から型枠検査を受ける。コンクリートの躯体の出来形寸法は土木工事施工管理基準及び規格値として、図2及び表1により定められているが、型枠検査の段階では壁の厚さtは±0mmであることが要求される。
3ブロックとも底版のコンクリート工事が終わり、厚さt=1.8mの壁型枠の組立てに長さ1.8mのセパレータを使用したところ、フォームタイを締めすぎたわけでは無いのに脱型後の壁の厚さが設計値より1cm程度小さくなってしまった。
なお、型枠検査の段階で内空幅wは測定しないのが普通である。壁の位置は座標で管理しているので壁の厚さと内空幅は連動する。壁の厚さtがプラスになれば、内空幅wはマイナスになるのは必定で、逆に壁の厚さtがマイナスになれば、内空幅wは大きくなるはずである。管理基準(表1)によれば内空幅wは-30mmまで許されるので、型枠検査では壁の厚さtのチェックが主となる。
チェーンで型枠を引張り、パイプサポートで支えることで、型枠検査をパスすることができたが、壁のコンクリートを打ち込み、脱型後、壁の厚さtを測定したところ、寸法が0.5cm~0.8cm小さかった。
型枠大工を含めた反省会を開いた結果、壁の厚さが小さくなった原因はサイズW3/8のセパレータが、通常使用する長さより長いため自重でたわんでしまい、寸法を保持することができなかったためとの結論に達した(図3)。
このあと施工する壁に対する対処方法として
①自重によるたわみを小さくするために、セパレータのサイズをW3/8からW1/2に変更する。
②サイズはW3/8のままで、1cm長いモノを使用する。
③自重によるたわみを小さくするために、セパレータの代わりにD13の鉄筋を加工して使う。
などを検討したが、コストの問題に加えて①②は金物店に在庫が無く、新たに工場で加工する必要があり、サイズをW1/2に大きくするとPコンも新たに購入する必要があり、壁のコンクリートの打込みの予定日に間に合わない。数量も少なく現場で加工できることから③のD13の鉄筋を加工して使用することにした。D13の両端にW3/8の片セパを溶接するというものである(図4)。
金物屋のカタログを見ると、常時そろえているセパレータはt=1000mmまでであり、これより長いと受注生産になり、使用実績も乏しいようである。
施工計画の段階で、コンクリートの側圧を決定するためにコンクリートの温度、打込み速度などを考慮してセパレータの太さ(表2)、設置間隔を計算により確認しておく必要がある。
写真1は鉄筋の移動を防止するために、山型鋼による組立鉄筋の支持架台を設けているが、セパレータはこの架台に溶接すれば良い。
また、壁の端部のように向かい合う型枠が無い場合、セパレータを溶接するためにH型鋼を床版に建てておくと良い(図5)。同様に、壁の型枠が前面だけで、背面が地中連続壁などの場合、地中壁にアンカーを打っておき、これにセパレータを溶接することになるが、笹子トンネルの天井が落下した事例を踏まえ、ケミカルアンカーが抜け出ることを念頭に、削孔時のコンクリート粉の完璧な除去など慎重に施工することが肝要である。
1) 国土交通省:土木工事施工管理基準及び規格値(案),10-11-6-2,平成30年3月
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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