土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
2)打設中(締固め)
2023/10/02
鉄道工事においてRC高架橋の柱コンクリートを打ち込んだところ、表面に砂すじが発生した。
RC高架橋の概要を図-1に示す。柱部の高さは約7~7.6m、断面は1.2×1.2mであった。また、コンクリートの配合仕様は、27-8-25Nの普通コンクリートであった。柱部は2ロットで施工し、1ロット目で3.6mまで、残りを2ロット目で打ち上げた。柱コンクリートの施工時期は2~3月であった。
柱コンクリートの砂すじの一例を写真-1に示す。右側の写真は、型枠の継ぎ目に発生した砂すじであるが、左側の写真のように、型枠面において砂すじが発生している場合もあった。これらの砂すじは、程度の差はあるものの、多くの柱(1ロット目、2ロット目に関わらず)で確認された。
柱コンクリートの品質管理や施工管理の状況を確認したところ、コンクリートは規定値を満足しており、施工上のトラブルもなく順調に施工できたが、ブリーディングの多いコンクリートであることが判明した。現場担当の話では、柱型枠の内部には数センチのブリーディング水が溜まっていた場合もあり、施工中は柄杓やバキュームポンプでブリーディング水を除去しながらコンクリートを打ち込んだとのことであった。柱のブリーディング発生状況の写真はうまく撮影できなかったが、同じ構造物の下層梁のコンクリートの施工時には、写真-2に示すように天端に1~2cm程度のブリーディング水が溜まっている場合もあった。
このような状況から、砂すじの主な原因はブリーディングと考えられた。これ以外には、コンクリートの過剰な締固めがブリーディングを促進させたことや、型枠の継ぎ目の隙間が大きかったことなども影響した可能性があったが、その影響程度は不明である。
なお、現象としてブリーディングが多かったことは確認されたが、コンクリートの配合計画においてはとくに問題となるようなところはなく(単位水量W=155kg/m3、単位セメント量C=310kg/m3、細骨材率s/a=42.9%)、事前にブリーディングのリスクを想定することは難しかった。
今回発生した砂すじへの対処に関して、一般に、砂すじ自体はコンクリートの耐久性に影響を及ぼさないと考えられるため、構造的あるいは耐久性の面から、補修の必要はなかった。しかし、コンクリート表面の広範囲の砂すじは美観を損ねることから、発注者との協議の上で、砂すじの範囲が広いものや深いものを対象に、表面処理(補修用のセメントモルタル塗布)により補修した。
このような砂すじの根本的な原因は、コンクリートのブリーディングが過大であったためであり、同様の失敗を起こさないためには、ブリーディングが過大とならないコンクリートを使用することが重要である。
よって、試験練りのときなどにブリーディングが過大であることが懸念された場合は、コンクリートのブリーディングを抑制するための配合修正を検討すべきである。たとえば、細骨材率の増加、単位粉体量の増加(セメント量の増加、石灰石微粉末の使用など)、ブリーディング抑制型の混和剤の使用などが考えられる1),2),3)。
また、施工面では、コンクリートのブリーディングが多い場合には、打上り速度や1層の打込み高さをなるべく低減したり、締固めが過剰とならないように配慮して作業を行うことも重要である。
さらには、型枠の継ぎ目に発生する砂すじを防止するため、とくに柱のように打上り速度が速く、打込み高さが大きい部材では、大きな側圧による継ぎ目の開きを抑制するため、型枠および支保工を強固に組み立てることが重要である。また、型枠を組み立てる際に継ぎ目に隙間テープを貼り付けるような工夫も考えられる1)。
なお、本工事では、次工程においても柱や橋脚の工事があったため、配合修正を検討した。コンクリートの粘性を増加させるために、細骨材率を2%程度大きくした配合で施工したところ、ブリーディング量は若干抑制することはできたが、その効果は限定的であった(この現場でのブリーディング量の抑制効果:0.42cm3/cm2→0.39cm3/cm2)。その他、石灰石微粉末やフライアッシュを使用して粘性を向上させることも検討したが、調達の問題などにより実現することができなかった。また、前述したブリーディング抑制型の混和剤は、その当時には開発されていなかった。
このように、コンクリートのブリーディングの問題は、とくにブリーディングが過大な場合には配合修正による対応を考えざるを得ないことから、簡単には解決できない場合も多い。よって、なるべく早い段階から問題に気付き、対応策を検討することが重要と思われる。
最後に、コンクリート標準示方書では、ブリーディングが過大となる場合には、適度なブリーディング性状となるように細骨材率や単位粉体量等を修正することが望ましい、と記載されている。このことからは、セメント等の粉体や細骨材の微粒分の量が少ない場合にはブリーディングが大きくなる可能性があることが示唆される。このように、配合計画書の情報からブリーディングのリスクを評価するための知見が整理され、配合計画の段階でブリーディングのリスクを検討できるようになることを期待したい。
1) 片野啓三郎ほか:砂すじ,あばたの発生要因と低減方法に関する実験的検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,pp.604-609,2012
2) フローリック:AE減水剤 ブリーディング抑制タイプ フローリックLB,https://www.flowric.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/LB.pdf
3) ポゾリス ソリューションズ:ブリーディング低減型 AE減水剤 高機能タイプ,マスターポリヒード® 1500 / 1505,https://assets.construction-chemicals.mbcc-group.com/ja-jp/masterpolyheed-1500,1505.pdf
(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,コラム,コンクリートのブリーディングによる品質低下を回避するために(2022/12/01),https://concom.jp/contents/countermeasure/column/vol41.html,2022年12月
(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,砂すじは無くせる(2017/09/28),https://concom.jp/contents/countermeasure/concrete/cat02_vol14.html,2017年9月
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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