打設中(締固め)
2017/09/28
9月、道路橋の建設現場で、橋台の壁のコンクリートを打ち込んだ。型枠はメタルフォームである。
コンクリートの打込み後、密実なコンクリートにしようと思い、2名の作業員に木槌で型枠をたたかせた。この時、型枠の継目からセメントペーストが漏れている箇所がいくつかあるとの報告があったため、バケツに水を汲んでブラシで清掃するように指示した。
一週間後、壁の型枠を外したところ、セメントペーストが漏れていた箇所に「砂すじ」ができていた(写真1)。「砂すじ」とはコンクリートの表面からセメントペースト分が漏れだし、細骨材が縞状に露出した部分のことである。
写真1 壁面に生じた砂すじ
「砂すじ」の原因は、型枠同士の隙間からセメントペーストが漏れて、そのあとに細骨材が残ったためである。型枠材は、数回使用したものである。
型枠同士の隙間ができた原因として、以下の項目が判明した。
① 前回使用した後、型枠の端面にモルタルが付着していて、しっかり除去されていなかった。
② 何回か使用しているうちに、型枠の端面が変形していた。
また、以下の原因で発生した「砂すじ」もみられた。
③ セパレータを通すために型枠に開けられた穴が塞がれていなかった。
応急対策として、次のコンクリートの打ち込みのために組み立ててある型枠については、型枠の内側から光の漏れている継目に対し、隙間テープを貼ることにした。この方法により、次のコンクリート打込みに対し、「砂すじ」の発生を防止することができた。
なお、今回発生した「砂すじ」に対しては、コンクリートの耐久性が低下することを防止するためにポリマーセメントモルタルを塗布することにした。
「砂すじ」には今回の事例のように型枠の継目の隙間、穴などからセメントペースト分が型枠の外へ漏れ出し、細骨材だけが残った現象だけではなく、コンクリートの打重ね時に、下層のコンクリートにたまったブリーディング水が型枠面に沿って上昇する際にコンクリートのセメントペースト分を洗い出すことで発生する「砂すじ」もある。発生のメカニズムが異なるため、前者を「砂縞」あるいは「砂ジャンカ」と呼び区別する場合がある。
前者の「砂すじ」を発生させないポイントとして、以下の項目があげられ、
① 型枠は脱型時に落としたりせず、丁寧に扱う。
② 端面がへこんだりした不良の型枠は使用しない。
③ 型枠の端面はモルタル等が付着していることがないように丁寧にケレンする。
④ コンクリートの配合は、単位水量が少なく、ワーカビリティーに優れたコンクリートとするのが良い。
⑤ バイブレータによる過剰な締固めに注意する。なお、過剰な締固めは材料分離の原因となることもある。
また、後者のブリーディングによる「砂すじ」に対しては④⑤の他に次の点も重要である。
⑥ コンクリートの側圧により型枠の継目が開かないように、型枠を強固に組み立てる。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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