土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
3)打設後(養生・修繕等)
2024/10/01
ひび割れが発生しているのは上り線(先行トンネル)のセグメントの内側で、丁度下り線(後行トンネル)のシールドが掘進中の位置である。ひび割れはトンネル軸方向ではなくリング方向に発生していることから、ひび割れが発生した原因は図3に示すように後行トンネルのシールドの掘進による影響であることは明白であった。具体的には
① 後行シールドの掘進に伴う切羽圧による先行トンネルの押し出し。
② 後行シールドの裏込め注入による先行トンネルの押し出し。
が考えられた。
先行シールドトンネルの掘進はシールドジャッキの推力により泥土圧を発生させ、切羽の土圧と地下水圧に対抗させることで管理していた。
泥土圧=土圧(静止土圧)+水圧
地表面沈下等の影響がほとんど無かったため、後行するシールドの施工管理もこれを踏襲した。
次に、先行するシールドの裏込め注入の管理方法は、注入量での管理と注入圧で管理する方法の両者を併用した。シールドの掘進に伴いテールボイドが発生する。このすき間を充填する裏込め材の量は断面図から計算で求められる。さらに、カッタビットによる余掘り量等を見込んで、一般的に、注入量をテールボイド量の120%と設定する。
注入圧が大きくなれば、これ以上注入できないというサインであるが、トンネル周囲の地山のゆるみや空洞の発生により裏込め材が地中に抜けてしまい注入圧がかからないことがある。このような場合、裏込め注入作業をどこで中断するかは現場の判断である。今回、先行シールドの掘進に関しては、何ら不都合が起きなかったため、後行シールドの裏込め注入の管理もこれを踏襲した。なお、裏込め注入は2液型可塑状の材料を同時裏込め注入で行った。
さて、先行したトンネルのクラック発生はどちらの影響が強いのか、あるいは複合されたものなのかを確認するために後行シールドを3リング、トライアル区間として掘進し、先行シールドの坑内からクラックの発生状況を観察することにした。
観察の結果、後行シールドの切羽圧の影響は全くなく、シールドのテールを抜けたあたり、つまり裏込め注入の影響が原因であることを確証した。先行したシールドトンネルの周囲の地山にゆるみ域が存在していたのかもしれない。
以後、切羽圧の管理は従来通りとし、裏込め注入の管理もまず当初と同じく注入量の120%を管理基準値として注入し、これ以上注入できないサインとして注入圧が立たなく(上昇しなく)ても、その時点で止めることにした。このことにより、以後の地表面の沈下量は10~20mm増加したが、発注者と協議して許容することにした。
ひび割れ補修はひび割れが0.2mm以上に対し、自動式低圧樹脂注入工法(写真1)にて行った。注入剤は低粘性のエポキシ樹脂である。
今回のシールドトンネルは近接施工であることは承知していて、施工計画の段階では、先行シールド内に設置する枕木(H-400×400mm)で横方向からの荷重を真円保持装置と同等程度に支保できる予定であった(図4)が、これだけでは抑止できなかった。
準備段階で以下の施工方法を検討しておくのが良い。
当該地区のような切土では以下の点について留意し、工事の途中であっても現場状況から切土勾配を1.0~1.1に変更し、計画通り吹付枠工を施工するべきだったといえる。
① 先行トンネル内部に変形防止用の移動式支保工を設置する(図5)。
② 先行トンネルのインバートコンクリートを後行トンネルが通過する前に打込み、変位の抑制を図る。
この他の対策として、コストが大きくかかるため発注者との協議が必要だが、以下のような方法も考えられる。
③ 先行シールドのセグメントに高剛性で強度の高い合成セグメント等を採用する。通常、設計書作成段階でこれを採用することが多い。
④ 近接区間が短い場合、先行シールドの掘進前にあらかじめトンネル間を高圧噴射攪拌工法にて地盤を改良しておく。
⑤ あらかじめ先行トンネルの内部に変位計、傾斜計、ひずみ計、土圧計、間隙水圧計等を設置し、計測管理により先行トンネルへの影響を監視する。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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