コンクリート工事
コンクリート工事
2)打設中(締固め)
2025/10/01
河口に近い河川護岸の改修工事において、既設の鋼矢板護岸の被覆コンクリート(厚さ300mm、高さ4m、延長12m)を施工した。被覆コンクリートのイメージを図-1に示す。水中部にある鋼矢板の一部に腐食(減肉)や貫通孔が確認されたため、鋼矢板の補強と防食を目的とした工事であった。被覆コンクリートは、干満帯(L.W.L.~H.W.L.)を含む高さ4mの範囲に施工した。
水中部から平均潮位(M.W.L.)までの高さ2mについては、水中コンクリート(30-18-20BB)を使用し、1層あたり50cmごとに打ち上げた。それより上部も同様に、普通コンクリート(24-12-20BB)を使用して打ち上げた。
水中コンクリートの打込み時は圧送ホースをコンクリート内に30~50cm程度挿入し、所定の高さまで打ち上がるのを確認して、筒先を横方向に約3mずつ移動させながら順次打ち上げていく計画であった。水中への打込みであり、また型枠や鉄筋もあるため、筒先やコンクリートの状況を直接目視するのが難しいことから、コンクリートの打ち上がり高さは重錘を上部から型枠内に降ろして確認した。
コンクリートの硬化後に型枠を取り外したところ、水中コンクリートの打ち重ね位置と思われる表面の一部に充填不良(豆板)が確認された。水中コンクリートの打込み範囲と充填不良の発生箇所を図-2に、充填不良の発生状況を図-3に示す。
充填不良の発生原因を特定するため、当日の施工状況やコンクリートの品質管理記録等を確認した。その結果、当日の気象・海象に特段の問題(荒天や高波浪など)はなく、コンクリートの品質も管理値に収まるもので、生コン工場からの運搬時間や打込み完了までの時間も問題になるようなところは確認できなかった。
このようなことから、充填不良の発生原因は、筒先移動時において筒先(コンクリート圧送ホース)の高さ管理が不十分で、筒先をコンクリート中に挿入しないままにコンクリートを打ち込んでしまったためと考えられた。
今回の施工では、既設の上部コンクリートの下部に被覆コンクリート用の型枠を設置するため、水中コンクリートの打込みにあたっては、あらかじめ型枠の一部を取り外しておき、そこから圧送ホースを斜めに型枠内に挿入して施工した。よって、配筋状況などによっては、圧送ホースが鉄筋と干渉して型枠の下部まで挿入することが難しくなるような状況も想定された。打込み作業員へのヒアリングにおいても、下層のコンクリートに圧送ホースを挿入するように指示はされていたものの、それが確実に実施されていたかどうかについては十分に管理されていなかったことが分かった。
充填不良箇所の補修は、脆弱部をすべてはつり取り、水中不分離性混和剤を使用した無収縮グラウト材を充填した。
今回のような水中コンクリートに関するトラブルに関して、同様の失敗をしないためには、筒先(圧送ホース)の高さとコンクリートの打ち上がり高さの関係を常に把握できるよう、圧送ホースに高さ管理用のマーキングを付け、重錘によるコンクリートの打ち上がり高さの管理と合わせて、確実な高さ管理をすることが必要である。今回の施工において別スパンの打込みに際しては、打ち上がり高さの管理者(元請職員)を明確にして、筒先(圧送ホース)の高さとコンクリートへの挿入長を確認した上で打込み開始の指示をすることとした。これにより、以降は問題なく打込みを完了することができた。
なお、今回のような施工では、既設の上部コンクリートの下部に圧送ホースを斜めに挿入する必要があったため、あらかじめ別のホースを挿入しておき、筒先(圧送ホース)の移動の際にあらかじめ挿入したホースに接続するという方法も考えられる。
また、水中コンクリートの打込みは打ち下ろし(先端ホースを水中に向けて吊り下げる状態)になる場合が多いことから、打ち下ろしの高低差が大きい場合などでは、この方法でも材料分離を生じにくい先端が扁平になったホース2),3)を併用することも有効と考えられる。この先端ホースを通常の打込み方法に用いることもできるが、上記のようにこの先端ホースをあらかじめ挿入しておくことも有効と考えられる。
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