土木学会が平成12年に設立した認定制度──『土木学会選奨土木遺産』。顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的に、500件を超える構造物が認定されています。
コンコムでは、たくさんの土木遺産の中から、最寄り駅から歩いて行ける土木遺産をピックアップし、「土木遺産を訪ねて─歩いて学ぶ歴史的構造物─」を不定期連載します。駅から歴史的土木構造物までの道程、周辺の見どころ等、参考になれば幸いです。
みなさんも旅のついでに少しだけ足を延ばして、日本の土木技術の歴史にふれてみてはいかがでしょうか。
認定年 | 平成25年度(2013年度) |
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所在地 | 新潟県長岡市 |
竣工 | 昭和12年(1937年) |
橋長 | 850.8m |
幅員 | 7.0m |
構造形式 | 下路式ゲルバー鋼構橋 |
長岡駅が本丸跡ということで、駅前は旧城下町。明治維新以降、長岡の街は、北越戊辰戦争、長岡空襲、中越地震など幾度もの危機を乗り越えてきており、その歴史を残すさまざまな見所が駅周辺に点在しています。
長生橋に向かう前に、駅から西へ延びる大手通沿いから散策します。
長岡城二の丸があった場所には、駅前と同様に『長岡城二の丸跡』の碑が立っているのみですが、ここには長岡市役所・アリーナ・多目的ホールが一体となった市民交流の場「アオーレ長岡」が建設され、新旧長岡の街が混在した場所となっています。
平成16年(2004年)10月23日、新潟県中越地震が長岡の街を襲いました。旧山古志村が孤立し、ヘリコプターで救助される映像は記憶に新しいところです。長岡市内の道路・河川・生活インフラ等も寸断され、その復旧・復興には長い時間が必要でした。長岡災アーカイブセンター『きおくみらい』は平成23年(2011年)に開設され、震災の記憶を伝えています。
長岡の苦難の歴史を学んだあとは、長岡で生まれた偉人についても学ぶことができます。
大手通の交差点から北に5分ほど歩くと、越後長岡藩の藩政改革を実行し、大政奉還後の北越戊辰戦争を戦った河井継之助の生家跡に『河井継之助記念館』があります。司馬遼太郎の歴史小説『峠』の主人公としてご存知の方も多いと思います。館内には継之助の書状や日記、日本で初めて使用されたガトリング砲の複製などが展示されています。
駅前に戻り、長生橋に向かうことも考えましたが、『山本五十六記念館』から道なりに10分ほど歩いたところにある水道公園に向かいました。水道公園は旧中島浄水場跡地に整備された公園で、昭和2年(1927年)に建設された巨大な配水塔とポンプ室棟・監視室棟・予備発電室棟といった歴史的建物が現存しています。これらは選奨土木遺産ではありませんが、長岡の苦難の歴史を残す財産として国の登録有形文化財に指定されており、【File 09 名古屋市旧第一ポンプ所と東山給水塔/愛知県名古屋市】で紹介した給水塔とポンプ所とは異なり、誰でも至近距離で見ることが可能です。
水道公園を散策した後、目的地の長生橋に向かいます。少し遠回りになってしまいましたが、ここからは信濃川の堤防を上流に向かって1.5kmほど歩きます。中間地点の大手大橋を越えると長生橋が遠目に見えてきます。水道公園から長生橋まで、信濃川の悠然とした流れと遠くの山々の景色を見ながら、時間にして20分ほど歩くと長生橋に到着です。選奨土木遺産の銘板は、橋名板の右側に埋め込まれていました。
長生橋は、【File 08 萬代橋/新潟県新潟市】で紹介した萬代橋と同様に3代目の橋で、1代目【明治9年(1876年)完成】・2代目【大正4年(1915年)完成】の橋は萬代橋と同じく木橋でした。現在の3代目は昭和12年(1937年)に下路式ゲルバー鋼構橋として完成し、80年以上もの長きにわたり信濃川で分断された両岸地域の道路交通を支えています。【下流側にのみある歩道(幅員2.5m)は昭和47年(1972年)に建設】
800m以上連続するトラスは歩道を歩きながら飽きることなく見続けられますし、遠距離・近距離・下からとどこから撮影しても絵になる、優美な十三連の上曲弦トラス橋でした。
今回の探訪は、土木遺産以外にも苦難の続いた長岡の歴史の一端を知ることができた探訪でした。その苦難を乗り越え、地元に愛され続ける長生橋。慰霊・復興と長岡の未来、願いを込めて打ち上げられる花火を一度見に訪れたいと思います。
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