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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

基礎工事3)既製杭

軟弱地盤上での既製杭工法における
杭芯のずれ

2013/10/21

工事の概要とトラブルの内容

図-1 土質柱状図図-1 土質柱状図

川の水門を半川締切にて2分割で築造する工事で、1期施工部の中堀り先端打撃工法による鋼管杭を施工した。杭の仕様はφ800、L=13.5m(掘削長:16m)×42本である(1期施工分)。施工地盤は、支持層(砂礫:N≧50)に達するまでは軟弱な沖積粘性土層と沖積砂層の互層となっていた。地下水位は杭の施工基面-2.5mであった(図-1)。

杭工事完了後の出来形検査において、偏心量の許容値(100mm)を越える杭が2本見つかった。

原因と対処方法

既製杭の偏心の原因を、以下に列挙する。

  • ①杭心位置の測量ミスまたは杭心を示す測量杭の重機稼動に伴う移動
  • ②杭打設時の偏心および鉛直精度の確認不足
  • ③後から打設した杭の過度な沈設速度等の施工原因による先行施工杭の移動
  • ④軟弱地盤上の重機の移動による地盤の変形に伴う打設済みの杭の移動
  • ⑤施工基盤の不等沈下による打設機械の傾斜に伴う杭の偏心

本工事では軟弱地盤上の施工ということで、既製杭の偏心の主な原因として③~⑤の可能性が高いと考えられた。

許容値を超える偏心が確認された2本の杭については、引き抜き撤去し、再施工を行った。再施工に際しては、砕石を敷設し重機の安定を確保した上で、杭沈設中の傾斜の2方向からの確認や、杭心位置の再チェックをこまめに行うなど、細心の注意を払って実施した。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

図-2 杭心定規例図-2 杭心定規例

軟弱地盤上の既製杭の打設においては、重機荷重による地盤の変形に十分注意した施工を行う必要がある。打設用の重機(三点式杭打機)と杭の荷重を合わせると、総重量が100~160t、最大設地圧が440~520kN/m²に達する。このため、重機の移動に伴う地盤の変形や、杭打設時の杭打機の傾斜や沈下が起こりやすく、これらに十分に配慮した施工を行う必要がある。また、後施工の杭の施工に起因して打設済みの杭が移動する(押されるor引き込まれる)可能性もある。

このため、杭打設前に施工基盤の支持力や沈下量を検討して支持地盤を評価し、適切な支持地盤の養生を行った上で、施工中の杭心位置や傾斜の再確認を行うなど、慎重な施行を行う必要がある。

支持地盤の養生方法としては、地盤改良(浅層混合、砕石置換等)が考えられる。また、施工時の杭心の移動防止や精度向上のために、鉄板と短い鋼管を組合せた杭心定規を据え付けておく(図-2)といった工夫を行っても良い。

上記の支持地盤の検討は、杭施工時の重機の転倒防止等、安全対策上も極めて重要であり、施工計画上必要不可欠な事項である。検討に際しては、「移動式クレーン,杭打機等の支持地盤養生マニュアル」平成12年3月(社)日本建設機械化協会等が参考になる。

最近では、施設の更新に伴い、旧施設の杭の撤去後に新設杭を打設する事例もあり、このような場合では、軟弱地盤でなくても杭撤去後の埋戻しの状態によっては、撤去した側に杭の偏心や傾斜が起こることがあるので、注意が必要である。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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