3)既製杭
2013/10/21
既製杭の偏心の原因を、以下に列挙する。
本工事では軟弱地盤上の施工ということで、既製杭の偏心の主な原因として③~⑤の可能性が高いと考えられた。
許容値を超える偏心が確認された2本の杭については、引き抜き撤去し、再施工を行った。再施工に際しては、砕石を敷設し重機の安定を確保した上で、杭沈設中の傾斜の2方向からの確認や、杭心位置の再チェックをこまめに行うなど、細心の注意を払って実施した。
軟弱地盤上の既製杭の打設においては、重機荷重による地盤の変形に十分注意した施工を行う必要がある。打設用の重機(三点式杭打機)と杭の荷重を合わせると、総重量が100~160t、最大設地圧が440~520kN/m²に達する。このため、重機の移動に伴う地盤の変形や、杭打設時の杭打機の傾斜や沈下が起こりやすく、これらに十分に配慮した施工を行う必要がある。また、後施工の杭の施工に起因して打設済みの杭が移動する(押されるor引き込まれる)可能性もある。
このため、杭打設前に施工基盤の支持力や沈下量を検討して支持地盤を評価し、適切な支持地盤の養生を行った上で、施工中の杭心位置や傾斜の再確認を行うなど、慎重な施行を行う必要がある。
支持地盤の養生方法としては、地盤改良(浅層混合、砕石置換等)が考えられる。また、施工時の杭心の移動防止や精度向上のために、鉄板と短い鋼管を組合せた杭心定規を据え付けておく(図-2)といった工夫を行っても良い。
上記の支持地盤の検討は、杭施工時の重機の転倒防止等、安全対策上も極めて重要であり、施工計画上必要不可欠な事項である。検討に際しては、「移動式クレーン,杭打機等の支持地盤養生マニュアル」平成12年3月(社)日本建設機械化協会等が参考になる。
最近では、施設の更新に伴い、旧施設の杭の撤去後に新設杭を打設する事例もあり、このような場合では、軟弱地盤でなくても杭撤去後の埋戻しの状態によっては、撤去した側に杭の偏心や傾斜が起こることがあるので、注意が必要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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