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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

基礎工事3)既製杭

中間砂礫層を有する地盤での杭の高止まり

2017/07/31

工事の概要とトラブルの内容

ンプ場の基礎として、中掘先端根固め工法によるPHC杭を施工した。杭の仕様は、杭径φ800mm、杭長35.0mである。杭先端には、施工時の杭周面摩擦力を低減するため、厚さ12mm、高さ200mmのフリクションカッターを設置していた。

施工地盤は、GL-20mまでは軟弱なシルト層、その下には支持層であるGL-35m付近の砂礫層までの間に、中間層として砂礫層(層厚2.5m)と硬質粘土層が存在していた(図1)。

試験杭の打設において、GL-20m付近までは順調に杭の掘削沈設ができていたが、中間砂礫層に入ると徐々に沈設が困難になってきた。そこで、補助的にオーガヘッドからコンプレッサーによる圧縮空気の噴出および射水をしながら施工を続けたが、支持層に到達する直前でほとんど沈設が出来なくなった。結局、所定の打設深さの1.5m手前で沈設不能となり、杭を引き抜いた。引き抜いた下杭の先端を確認したところ、フリクションカッターが変形し一部破損していることが分かった。

原因と対処方法

本工事では、掘削沈設時の杭の周面摩擦力を低減するため、フリクションカッターを取り付けていたが、施工地盤に中間層として砂礫層があり、中間層の打ち抜き時にフリクションカッターが変形した。そのため、摩擦低減機能を適切に発揮できず、杭中空部への掘削土砂の取り込みもスムーズに行えなくなった。さらに、中間砂礫層の下には硬質粘土層が存在していたこともあって、杭と周面地盤との摩擦力が増大したため、沈設不能になったものと推察された。

フリクションカッターは、周面摩擦力をできるだけ低下させず、打設完了後、設計上必要な周面摩擦力を確保するため、厚さを必要最小限とすることとなっている。このため、硬質地盤を打ち抜く必要がある杭では、フリクションカッターが剛性不足になり、破損や変形を起こしてしまう可能性がある。剛性不足を補うためには、フリクションカッターの厚さを大きくする方法も考えられたが、杭基礎施工便覧では、杭径800~1000mmの標準値として厚さ12mm以下との規定1)があり、厚さを大きくする対応策は採用が難しいと判断した。

そこで杭の再施工に際して、フリクションカッターの内側に6箇所、補強金具(図2:SS400、寸法100×80×150mm)を取付け、剛性を向上させて施工を行ったところ、順調に杭の掘削・沈設を行うことができた。その後の杭の施工においても、同様の対策を実施することで、杭が沈設不能になることはなかった。

事前検討・準備、施工時の留意事項等

本工事例のように中間層を有する場合等で、掘削沈下が困難になることが予想される地盤での施工に際しては、フリクションカッターの補強は有効な対策であると考えられる。採用にあたっては、杭の支持力への影響が無いか検討し、事前に発注者や工事監理者などに了承を得たうえで施工する必要がある。

図1 土質柱状図および杭仕様図1 土質柱状図および杭仕様

図2 フリクションカッター補強図図2 フリクションカッター補強図

参考文献

1)日本道路協会 杭基礎施工便覧 pp.165,2015.3

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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