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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

基礎工事3)既製杭

既製杭工法における杭の沈設不能
(高止まり)

2014/10/27

工事の概要とトラブルの内容

図-1 土質柱状図図-1 土質柱状図

水ポンプ場の基礎として、中堀り先端根固め工法によるPHC杭を施工した(図-1)。

杭の仕様は、φ600mm、L=32m(下杭12m、中杭10m、上杭10m)である。

試験杭を施工したところ、中杭を沈設中(深度13m付近)に杭頭中空部からの排土がほとんどなくなり、沈設速度も数mm/分になった。さらに20分後には全く沈設ができなくなった。オーガ先端を杭先端部から60cm程度突出させて先掘り掘削することで沈設しようとしたが不可能であった。

オーガを引き抜いて杭先端部付近の土質を確認したところ、粘着力の大きい灰色の固結粘土が付着していた。

原因と対処方法

図-2 付着イメージ図-2 付着イメージ

PHC杭の沈設が不可能になったのは、深度10m付近から出現する固結粘土がオーガスクリューに付着して杭の中空部から排出されなかったことや、杭の接続作業で沈設を止めたことにより杭の周面摩擦力が増大したことなどに起因するものと考えられた。(図-2)

粘性土地盤のオーガによる中掘り掘削においては、オーガスクリューへの粘土の付着を低減することが必要である。本工事においては、オーガの先端から空気を吐出させて排土を補助していたが、固結粘土層が厚く堆積していたために不十分の可能性があった。

このため、対策として空気に代えて水を吐出させて固結粘土の粘着性を低減するとともに、発注者の承認を得て杭先端に取り付けてある厚さ9mmのフリクションカッターの板厚を12mmと厚くした。

以上の対策により杭打設を無事に完了することができた。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

密な砂地盤、粘着力が高い粘性土地盤ではオーガスクリューと杭中空部の間で目詰まりが発生し、沈設不能となることがある。目詰まりを防ぐ方法としては、オーガヘッドから圧縮空気(0.5~1.0MPa)を噴出して杭内部土砂の排出を補助する方法や、粘性土地盤ではオーガ先端より射水しながら掘削する方法がある。

これらの場合は、周辺地盤を乱すことがないよう圧力管理に注意する必要がある。また、中間層が比較的硬質で沈設が困難な場合でも、杭径以上の先堀りや拡大堀りは周辺地盤を乱し、周面摩擦力を低下させるので、行ってはならない。

なお、掘削沈設時には排出される土砂や排土状況をよく観察し、土質性状に応じた適正な沈設速度で施工する必要がある。適正な沈設速度は杭径や土質によって異なるが、杭基礎施工便覧(H19.1(社)日本道路協会)によると、N値の小さな土質では1/3m/分以上、N値の大きな土質では1/3m/分以下が目安とされている。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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