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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

基礎工事3)既製杭

既設杭撤去に起因する既製杭工法における
杭の偏心、傾斜

2014/10/27

工事の概要とトラブルの内容

図-1 土質柱状図図-1 土質柱状図

存建物およびその基礎杭を撤去した後の新築工事の現場において、建築構造物の基礎として、プレボーリング工法(セメントミルク工法)によるPHC杭を施工した(図-1)。杭の仕様は、φ600mm、L=15mである。

プレボーリングにおいて、新設杭施工のスパイラルオーガが、撤去した杭抜き孔側に引き寄せられたり(偏心)、ボーリング孔が傾斜したりする現象が頻繁に発生した。

原因と対処方法

図-2 ドーナツオーガによる杭施工手順図-2 ドーナツオーガによる杭施工手順

既存建物の杭の引き抜き後の処理は、貧配合モルタルや流動化処理土等の充填が望ましいが、現地は山砂を上から落としこんだだけで、杭抜き孔の充填が十分とはいえない状態であった。さらに、スパイラルオーガの剛性が十分でないこともあり、プレボーリング孔の偏心や傾斜が発生したものと考えられた。

対策として、ケーシングとスパイラルオーガを同時に回転できるドーナツオーガタイプの掘削機を用いてプレボーリング(削孔径φ700)を実施することとし、既存杭引き抜き箇所近傍の新設杭で試験掘削を行った(図-2)。その結果、杭の偏心や傾斜がほとんど起こらないことを確認できたので、当削孔機によるプレボーリングを採用することとした。なお、当該杭は、設計図書で先端支持力のみで必要な所定の設計支持力が得られることを事前に確認している。

以上の対策により杭打設を無事に完了することができた。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

最近は、既存建物の老朽化に伴い、建物撤去後に新設の建物を建築する事例が多い。この際、既存杭の撤去は実施されているものの、撤去後の孔処理が十分でない事例が数多く見受けられる。新設杭が撤去杭跡に近接している場合、撤去後の杭孔の方にスパイラルオーガや先端ビットが逃げようとする動きがみられ、杭の偏心や傾斜が引き起こされることがよくある。

杭撤去後の孔の処理は、貧配合モルタルや流動化処理土で充填して、地山の強度に比べて弱くならないように配慮すべきである。

ただ、工事の発注形態としては、撤去と新設が別発注の場合もあり、このような場合は、撤去後の孔処理について適切に実施されるように要望をしておく、あるいは工事受注前に十分に調査して、撤去後の孔処理が十分でない場合は対策工を事前に検討しておくことが望ましい。対策工としては、以下のようなこと(単独あるいは組み合わせ)が考えられる。

① 新設杭打設の2・3日前に、杭撤去後の孔に埋められた材料を貧配合のセメントミルクで攪拌混合し改良処理を行っておく。

② 新設杭のプレボーリング機械は、スパイラルオーガやロッドに比べて剛性の高いケーシングを装着可能な掘削機械を用いる。

③ 撤去杭長が新設杭長に比べて短い場合や、先端部の掘削攪拌機構等の関係でケーシング装着の掘削攪拌機による施工が難しい場合等は、予め撤去杭の先端付近までケーシング掘削し適切に埋め戻しした後、プレボーリングする。

なお、対策②単独の場合等、既設杭の撤去部近傍では、設計で考慮されている所定の周面摩擦力が得られないことが考えられるので、設計図書により周面摩擦力が小さくなっても杭の必要支持力上問題ないことを確認しておく必要がある。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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