1)オールケーシング
2013/07/19
道路の橋梁下部工を築造する工事で、揺動式オールケーシングによる場所打ち杭を施工した。杭の仕様はφ1200、L=18m(掘削長:20m)×6本である。施工地盤は、上部に緩い粘性土層(N≦2)が7m、その下に緩い砂層(N≦15)が5m、その下に中位の粘性土層(N=4~5):6mを介してN=50の砂礫層を支持層とする。地下水位はGL-5mであった(図-1)。掘削に使用したケーシングチューブは繰り返し使用されたもので、少し表面に凹凸がみられた(図-2参照)。
1本目の杭の掘削が完了し、生コンクリートを打設中に締付け装置がスリップしてケーシングチューブが引抜き困難になった。
一般に緩い砂層が5m以上存在する地盤にオールケーシング工法が採用されている場合は、周面抵抗が大きくなり、ケーシング引抜きが難しくなることがある。この事例では、少し凹凸のあるケーシングチューブを用いたため、ケーシングの周面抵抗力がさらに大きくなり、引抜き時に締付け装置がスリップしたものと考えられた。
ケーシングを締付け装置の把持部と溶接固定することでスリップを防止し、何とかケーシングチューブを引抜き可能とし、杭の施工を完了できた。
オールケーシング工法におけるケーシングチューブの引抜き困難の原因は
①機械能力が発揮できない
②周面抵抗力が大きくなる
の2つに分類される。
①では、ケーシングの傾斜や、機械の不等沈下、反力不足、ケーシング変形等による締付け装置のスリップ
②では、カッティングエッジの摩耗・欠損、地下水位以下に厚く堆積した緩い砂層の掘削時の締り、コンクリートの打ちすぎによりケーシングの被り長さ増
等がある。
緩い砂層が5m以上あるような地盤においては、掘削によりケーシングチューブの周面摩擦力が大きくなることがあるので、機械能力に余裕をもたせることを検討すべきである。また、揺動式に替えて全回転式を採用することを検討してもよい。掘削時のケーシングチューブの上下動を少なくすることや、ハンマグラブの落下高さを低くするなど、周面摩擦力が大きくならない施工方法をとることも重要である。あるいはオールケーシング工法の適用を見合わせ、他の工法(リバース工法等)に変更するという対応策も考えられる。
また、古く変形した(凹凸がみられ、あばら骨が見えるような状態の)ケーシングチューブの使用は、周面摩擦力が増大する原因となり、締付け装置がスリップしやすいので見合わせるべきである。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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