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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設中(締固め)

法面被覆コンクリートのエアあばたが消える

2015/12/24

工事の概要とトラブルの内容

配が1:2の防潮堤(緩傾斜式防潮堤)の法面被覆コンクリートを施工するに当り、発注者の設計書どおり、全面を型枠で覆うことにした。1区画の大きさは、図1に示すように法面被覆コンクリートは3分割され、海側では長さ8.6m、幅10.0mである。コンクリートの配合は強度18N/mm2、スランプ8cm、骨材最大寸法40mm、W/C≦55%であり、型枠の中間に設けた窓からコンクリートポンプ車により打ち込んだ。

傾斜した型枠の場合、型枠の裏側にエアあばたが残ることが予想されたので、時間あたり15m3と、ゆっくり打ち込むことにした。コンクリートの締め固めには棒状バイブレータのほか型枠バイブレータおよび櫛状気泡抜き取り器具を使用した。櫛状気泡抜き取り器具とはピアノ線をたばねた箒のようなもので、型枠の表面に沿って上下にスライドさせることでコンクリート表面付近のエアを抜くというものである(図2)。この作業をスペーディングと呼ぶ。

2日後、型枠を外してみると、表面積の5%にエアあばたが生じていた。

  • 図1 防潮堤断面図図1 防潮堤断面図
  • 図2 櫛状気泡抜き取り器具図2 櫛状気泡抜き取り器具

原因と対処方法

エアあばたが多く発生している第一の原因は型枠の勾配が1:2と緩いことがあげられる。さらに、コンクリート厚さが50cmと薄く、打込みのための窓を下面から2.7m、5.4mの位置に設置したが、締固めおよびスペーディングの作業性が悪かったことがあげられる。そのため、型枠を外しながらアバタをつぶしていく作業にまる一日を要してしまった。

写真1 型枠の昇降装置写真1 型枠の昇降装置

型枠の設置作業にも4日を要しており、このままでは工程に支障が出ると判断し、コストがかかることを理由に不採用にしたスライドフォームに替えることにした。1.8m×6mに組み立てた大枠を2基並べ、コンクリートが充填されると、上方へウインチにて引き上げるという構造である(写真1)。

この作業を可能にするために、コンクリートの配合はスランプ5cmとし、打ち込み方法もクレーンとホッパを使用することにした。なお、時間あたりの打ち込み量は10m3とした。

型枠をスライドさせて表れたコンクリートの表面は金コテで仕上げることで、水密性のあるコンクリートに仕上がった(写真2)。写真3に示すようにスライドした直後の日コンクリート表面には、多数の気泡があることがわかる。

  • 写真2 コンクリート打ち込みと金コテ仕上げ状況写真2 コンクリート打ち込みと金コテ仕上げ状況
  • 写真3 スライド直後のコンクリート面写真3 スライド直後のコンクリート面

同様の失敗をしないための事前検討・準備

従来から、ハンチ型枠等、斜めに設置する型枠で生じるエアあばた低減の対策として、木槌による型枠のたたきや、型枠バイブレータの使用ではあまり効果が無いことが知られている。またあばた抑制効果のある剥離材として販売されているものも実際には効果が少ないことが報告されている1)

改善が期待できる方法として
①型枠の表面に透水性シートを貼る。
②スペーディング用器具を用いる。
があげられるが、①はコンクリート表面にツヤが無くなる。②は櫛状気泡抜き取り器具などで45度以上の勾配の型枠で大きな改善効果が得られる。勾配の大きさや、構造物の用途に応じて計画をすれば良い。

今回の工事のように勾配の緩い斜面で確実な方法は、コンクリートが硬化したころを見計らって順次型枠を外し、金ゴテで仕上げることである。

参考文献

1)北倫彦ほか、傾斜コンクリート面のアバタ抑制剤(材)の性能評価試験、土木学会第64回年次学術講演会(Ⅵ-070)、平成21年9月

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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