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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設中(締固め)

桟橋上部工に生じたコールドジョイント

2018/03/29

工事の概要とトラブルの内容

事例は、海上に建設した桟橋の上部コンクリートの施工において、コールドジョイントが発生したものである。

この桟橋下面の状況を写真-1に示す。桟橋の全長(法線方向)は180mであり、長さ30mの6つのブロックから構成されている。1ブロックの構造図を図-1に示す。下部工は杭径800mmおよび500mm(最後列のみ)の鋼管杭で、上部工は鉄筋コンクリートの杭頭、梁、スラブから成る構造である。

本桟橋は陸上から沖合に向かって伸びており、その主たる工事は海上での作業であった。上部コンクリートは1ブロック(長さ30m)ずつ施工しており、コンクリートの製造と打込みにはコンクリートプラント船を使用し、その打込みはほぼ1年に渡って行った。

上部コンクリートの打込みは、杭頭部①→法線方向梁②→法線直角方向梁③→スラブ④の順序で、いわゆる回し打ちにより片端から他端に向かって行った。杭頭部分の断面図と打込み順序を図-2に示す。

鋼管杭の内部は、杭上端から2,050mmの深さまで中詰めコンクリートを施工することとなっており、杭頭部と同時にコンクリートを打ち込んだ(図-2参照)。
なお、コンクリートは普通ポルトランドセメントを用いた設計基準強度24N/mm2、スランプ12cm、粗骨材最大寸法25mmの仕様であったが、7月から9月の暑中に打ち込むコンクリートについては凝結遅延型のAE減水剤を使用した。

写真-1 桟橋下面の状況写真-1 桟橋下面の状況

図-1 桟橋1ブロックの構造図図-1 桟橋1ブロックの構造図

図-2 部分断面図(杭位置)図-2 部分断面図(杭位置)

7月後半~8月の暑い時期に施工した2つのブロックにおいては、写真-2に示す様に、複数の梁の下端部に杭頭部につながるコールドジョイントが発見された。これらのコールドジョイントでは、色違いは生じているが十分に付着していると判断されたものと、界面にひび割れが生じて下層部と上層部とが明らかに付着していないと判断できるものがあった。

写真-2 上部工の梁に生じたコールドジョイント写真-2 上部工の梁に生じたコールドジョイント

原因と対処方法

先述したように、上部工のコンクリート打込みは、杭頭部→法線方向梁→法線直角方向梁→スラブの順序で打ち回しにより行った。杭頭部と交差する梁との打重ねは、梁下端位置となるように計画した。

杭頭部のコンクリート打込みは、鋼管杭の中詰めコンクリートも合わせて行うこととしたため、梁下端までの杭頭部のコンクリート量は約85m3であった。今回のトラブルは、この杭頭部のコンクリート打込み時において、図-3に示すように、杭頭部から梁底面にコンクリートが流れ出したことによって発生した。杭頭部の下端はスラブ上面の作業床から約3m下方にあり、その途中にはスラブ鉄筋、梁鉄筋、杭頭および杭頭と梁との結合用鉄筋などが錯綜している。そのため、杭頭部の打込み開始から梁の打重ねまで2時間近くが経過した。その結果、コンクリートに遅延型のAE減水剤を使用していたにも関わらず、杭頭部から梁の底面側に流れ出たコンクリートは少量であったため日射によって凝結が一段と早まったものと考えられる。

以上のように、梁下端部にコールドジョイントが発生した原因としては以下の要因が考えられた。

・1層目の杭頭部コンクリートの打込みに手間取り、2層目となる梁コンクリートの打重ね時間間隔が長くなった。

・梁側に流れ出たコンクリートは少量だったため、外気温や直射日光の影響を受けて凝結が早まった。

・梁コンクリートの打込み時に、流れ出た部分には鉄筋が配置されていることもありバイブレータを十分に挿入できなかった。

図-3 コールドジョイントの発生状況図図-3 コールドジョイントの発生状況図

コールドジョイントへの対策が必要な箇所について補修工法を検討した結果、樹脂注入工法では梁の深部の微細なひび割れまで注入させる必要があり、確実な注入が得られず対応が難しいと判断された。そこで、梁下端のコンクリートをハツリ取り断面修復することとした。具体的には、下端コンクリートを除去した後、上側にある梁コンクリート下面をチッピングにより目荒しを行い、修復材との付着を確保するためにプライマーを塗布した。ハツリ取るコンクリートが少ない(断面修復量が少ない)ため、左官工法(いわゆるコテ塗り)により修復した。修復材には、下地コンクリートとの接着性やひび割れ抵抗性を考慮して、ポリマーセメント系断面修復材を使用した。修復範囲が梁下段鉄筋より深部まで至る箇所(修復厚が15cm~20cm)については、修復材を複数回に分けて塗り付けた。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

本例のような不具合を生じさせないためには以下のような処置が必要である。

【事前検討・準備段階】

・杭頭部のコンクリートが梁底面にまで広がらないよう、打込み高さを管理する(本ケースの場合、梁下端より少し下の位置を打重ね位置の目安とする)。

・打込み数量、ミキサ船の製造能力、筒先での処理能力、外気温などの気象海象条件を考慮した打込み計画を立てて、机上シミュレーションを行って打重ね時間間隔が長くならないようにする。例えば、杭頭の中詰めコンクリートを先行して施工することで、杭頭部でのコンクリート打込み量を少なくし、打込み時間が長くならないようにする。

・コンクリート打込みを全平面に渡って広げず、打込み区画をできるだけ狭くして片端部から杭頭→梁→スラブの順序で打込みを順次完了させながら、他端に向かって打込みを進めていくようにする。

・杭頭部の打込みを容易とするよう、良質の混和剤を用いて流動性と材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合とする。

【施工時】

・夏季(暑中)での打込みでは凝結遅延剤を用いるほか、打込んだコンクリートに直射日光が当たらないようにシートを掛けるなどして凝結を早めないようにする。

・余裕をもったバイブレータと要員を用意し、打重ね時には下層までバイブレータを挿入するなど、コンクリート標準示方書に示される要領に従った締固めを行い上層コンクリートとの一体化を図る。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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