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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設中(締固め)

トンネル覆工コンクリートの色むらを解消

2019/03/28

工事の概要とトラブルの内容

該工事は、寒冷地に立地する施工延長約1,500mの一般国道自動車専用道路(2車線)のトンネルである。全長の約1/4程度の覆工コンクリートを打設したところ、写真-1に示すように仕上がり面に縞模様の色むらが多数発生した。発生した色むらの特徴は以下のとおりであった。

・縞模様の色むらは覆工のほぼ全周にわたっており、コンクリートの流動方向に一致しているように見受けられ、比較的規則性が認められた。

・色むらの縞の上下で表面気泡が目立つ部分もあった。

・色むら部分は、黒っぽい部分と白っぽい部分の濃淡が見られた。

・トンネル坑内は湿度が高く、コンクリート表面が結露しており、水滴がしたたる部分も見られた。

覆工コンクリートの施工概要は下記のとおりであり、コンクリートの打込み手順は図-1に示す標準的な方法で行った。

・1回の打設ブロック長:10.5m

・コンクリートの種類
:有筋区間 呼び強度18N/mm2、粗骨材最大寸法25mm、スランプ12cm
:無筋区間 呼び強度18N/mm2、粗骨材最大寸法40mm、スランプ12cm
(いずれの区間も打込み直前に流動化剤でスランプを18cmに調整した)

・型枠剥離剤:油性剥離剤を噴霧器で塗布

・打込み方式:側壁、アーチ部(肩部)はトンネル軸方向7箇所の検査窓から打込み、クラウン部(天端部)は2箇所の吹上げ口からの圧入

・側壁部とアーチ部の締固め:片側3本のバイブレータ(両側で6本)を用意して2人で締固め

・クラウン部の締固め:4本の引抜きバイブレータを使用して引き抜きながら締固め

・型枠脱型材齢:約17時間

・養生方法:脱型後気中養生(坑内は湿度が高くコンクリート表面は結露状態)

写真1 縞模様の色むらの発生状況(手前の2ブロック)写真1 縞模様の色むらの発生状況(手前の2ブロック)

図1 覆工コンクリートの打込み手順(土木学会 トンネルコンクリート施工指針(案)より引用)図1 覆工コンクリートの打込み手順
(土木学会 トンネルコンクリート施工指針(案)より引用)

原因と対処方法

一般の構造物においても、型枠を取り外したコンクリート仕上げ面には、色むら(濃淡差)が発生する場合が多々ある。このような現象が発生する要因には、細・粗骨材中の微粒分の分離、フライアッシュに含まれる未燃カーボンの分離、あるいはセメントペーストの濃度差などがある。セメントペーストの濃度差が原因の場合は、黒い部分は白い部分に比べて、表層コンクリートのセメントペースト分が多く、表面組織が緻密になっている箇所である。

一方、トンネル覆工コンクリートに発生する色むらの主な要因としては上記のことに加えて表-1のような様々のことが考えられる。当該工事では、覆工コンクリートの施工が既に1/4程度終わっており、色むらの要因を一つ一つ検討して原因を特定して対策する時間的な余裕がなかった。そこで、写真-2に示すような仕上がり状況が優れている他の工事現場の施工例を参考として表-2のような対策を立案して直ちに実行した。対策後の仕上がり状況は写真-3のとおりであり、縞模様の色むらはほとんど無くなり美観が著しく向上した。

表1 覆工コンクリートに生じる色むらの主な要因表1 覆工コンクリートに生じる色むらの主な要因

写真2 他のトンネルでの仕上がり状況写真2 他のトンネルでの仕上がり状況

表2 当該工事で実施した色むら対策の方法表2 当該工事で実施した色むら対策の方法

写真3 対策前後の状況(右側が対策前、左側が対策後)写真3 対策前後の状況(右側が対策前、左側が対策後)

同様の失敗をしないための事前検討

トンネル覆工コンクリートに限らず、一般のコンクリート構造物においても型枠を取り外した面に色むらあるいは変色が生じることがある1)。その原因は様々であるが、コンクリートの材料分離によって生じたセメントペーストの濃度差、すなわち表面組織の緻密さが異なっていることが原因である場合が多い。また、使用する剥離剤と型枠材質やコンクリートとの相性の問題もあるので、特に高い美観性が要求される場合には下記のような事前の検討が重要となってくる。

(1)配合上の対策
材料分離抵抗性に優れたワーカビリティーの良いコンクリートを用いることが基本であり、むやみに単位水量を多くしてスランプを大きくせずに、流動化剤や高性能AE減水剤などの混和剤を適切に使用することが望ましい。

(2)剥離剤の対策
型枠のケレン(清掃)を確実に行うことはもちろんであるが、使用する剥離剤を適切に選定することも重要である。剥離剤にはその主成分によって、油性と水性に大別され、使用する型枠の材質やコンクリートの配合、施工条件などに応じて選定する必要があるが、一般的に、水性剥離剤の方が仕上がり面の色むらや表面気泡が少なくなる傾向がある。

(3)コンクリート打込み上の留意点
コンクリートを打ち込む際、片押しによって横移動させるとセメントペースト分が分離して先走りするため、なるべく水平に打ち上げるようにする必要がある。また、バイブレータでの締固め過多による材料分離が生じないようにすることも重要である。

当該事例は、覆工コンクリートの施工が既に1/4が終了している時点で急遽対策を行ったため、色むらの発生に対してどの要因が最も大きく影響を及ぼしていたのかを特定できなかった。色むらの無い美観性の良いコンクリートを実現するためには、施工開始前に上記のようなことを事前に検討するとともに、色むらが発生した場合には施工開始後の早い段階で対策を取ることが望まれる。

参考文献

1)コンクリート構造物に発生した層状の色むら:建設技術者のための情報発信サイト、現場の失敗と対策、2017年9月28日掲載

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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