打設準備(型枠・鉄筋組立等)
2018/09/27
この橋梁は、RC単純T形4主桁の上部構造からなる橋長が20mの鉄道橋梁であり、その断面形状を図-1に示す。
上部工コンクリートの施工後、端部の主桁①において、型枠の一部にはらみが見られたので、脱型後に確認したところ、写真-1に示す変状が確認された。この変状が生じた位置は主桁のスパン中央に近い部分であり、主桁側面下端部に長さ約4.0m、高さ約0.7mの範囲に渡ってはらみや表層コンクリートの剥離が生じていた(図-2参照)。はらみの生じた桁幅の状況を図-3に示すが、主桁下面の左右におけるはらみの最大値はそれぞれ47mmと42mmであった。
変状が生じた部分においては、表層部コンクリートが型枠のはらみに伴い、下方に流下した様子がうかがえる。コンクリートが流下しなかった部分では型枠と接していたことから表面に光沢が残っている(写真-1参照)。
はらみなどの変状が生じた箇所近傍についてテストハンマーによる調査を行ったところ、変状の無い健全な箇所と同程度の強度が得られた。鉄筋探査計により鉄筋位置(かぶり)を測定したが、鉄筋自体の移動は見られず、コンクリートだけがはらみ出したものと判断された。
また、はらみなどが生じた変状箇所と健全箇所について、超音波を用いた非破壊調査を行ったが両者で得られた超音波伝播速度に差異はなく、主桁内部に空洞や浮きなどの欠陥はないものと判断した。
なお、施工時の条件は以下の通りであった。
・天候:晴れ
・外気温:9℃(2月)
・コンクリート温度:10℃
・打ち上がり速度:0.45(m/h)
・コンクリート:設計基準強度24N/mm2、普通セメント(W/C=55%)、スランプ12cm
主桁~スラブのコンクリート(h=2,000mm)は図-4に示すように4層に分けて打ち込んでおり、打込み順序としては主桁①→主桁②→主桁③→主桁④→主桁①・・・のように、いわゆる回し打ちによりコンクリートを打ち上げている。
前述したように各種の調査により、はらみが生じた箇所であっても内部コンクリートに充填不良などの欠陥は無いものと判断された。
このことから、コンクリートの打込み中に型枠のはらみが生じたものと推察された。そして、型枠セパレータ両端のPコンとセパレータ端部は型枠表面に付いたままであったことから、最下段のセパレータがコンクリートの側圧に耐えられず破断したものと思われた(図-5)。
型枠工へのヒアリングを行ったところ、2本のセパレータを桁の中央部においてフレア溶接で繋いでいたとのことであった。最下段のセパレータには大きな側圧が作用するため、溶接部がその側圧による引張力に耐えられなかったものと思われる。溶接部の引張耐力が不足した原因としては、溶接長の不足や溶接不良などが考えられた。
内部コンクリートに欠陥は無いものと判断されたため、はらんだコンクリート部分をはつり取り、その箇所を断面修復してから表面被覆工を行うこととした。すなわち、はらんだ部分のコンクリートをやや深めに(スターラップの背面10mm~20mm程度を目安に)はつり取り、その箇所は無収縮モルタルを用いた充填工法により断面修復し、さらにその上に長期的な剥落防止を考慮してビニロンメッシュによる剥落防止工を施した。
今回の事例では、セパレータをフレア溶接で繋いだ理由は不明であるが、その溶接部において破断したことがコンクリートのはらみ出しの原因と考えられた。標準的なサイズのセパレータは計画より多めに準備しておき、現場においてセパレータを溶接で繋ぐことは極力避けることが望ましい。
やむを得ずセパレータをフレア溶接で繋ぐ場合は、片側溶接では10D以上(両側では5D以上)の溶接長を確保することが必要である。もちろん熟練した技能者が実施することが必要である。
また、本事例での打ち上がり速度は0.45(m/h)であり、一般的な速度より緩やかに管理できたが(土木学会コンクリート標準示方書では一般に30分当り1.0~1.5m)、断面が比較的薄い桁や壁のような部材では、打ち上がり速度が大きくなりやすく、急激に大きな側圧が作用しやすいので注意が必要である。
さらに、コンクリートの打込み前にはセパレータをはじめ型枠や支保工に緩みが無いか、打ち込み中においては型枠や支保工の変形や異常音が無いかなどに十分な注意を払うことが必要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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