打設準備(型枠・鉄筋組立等)
2018/09/27
鉄道の新線建設工事の事例である。工事区間約600mの60%がラーメン高架橋であり、ラーメン高架橋間の接続形式はゲルバー桁であった(図1)。施工の順序は、ラーメン高架橋を先行し、それらの完成後ゲルバー桁を順次、施工した。
9月に、最後のゲルバー桁を施工した時のことである。コンクリートの打込みはブーム式のコンクリートポンプ車を使用した。まず梁の部分を打ち込み、続いてスラブのコンクリートを打込んだ。打込みは順調に行われ、最後の1m3を切ったところで、「バキッ!」と大きな音がして、打込んだコンクリートの表面が若干下がった気がした。即座に、打込み作業を中断し、型枠大工に型枠支保工を点検させた。
「支保工のジャッキのゆるみを修正し、さらに単管で補強をした。」との報告を受け、約40分後にコンクリートの打込みを再開した。鉄筋の結束がゆるんだところもなく、コンクリートをゆっくり打込んだ。
1ヶ月間の養生後、脱型してみると、梁底の一部が5cm程度下がっていた(写真1、2)。
ゲルバー桁は枠組式の支保工架設方式で施工した。現場発生土(砂礫)で埋戻した地盤を、振動ローラで転圧し、その上に敷板を並べて、建枠を組立てた。今回の場所には農業用の水路(幅1.8m、深さ0.8m)が横断しており、水深は30cm程度であった。そこで、水路の両側にH型鋼(H-300×300) を2列並べ、その上にH型鋼(H-300×300)を架設した(図2)。
コンクリートの打込み完了後、支保工および支持地盤の点検を行った結果、基礎地盤が沈下したことで建枠の一部が滑ったか沈下してジャッキがゆるんだ可能性が高いと想定された。
梁の両端は、ラーメン高架橋の桁受けで支持され、中間部(大半を占める)の型枠支保工は建枠であったため、写真2に示すようなはらみが生じたのであろう。
監督員に現場を見てもらい、「機能としては何ら問題がない。」ことを説明し、補修しないことを了解してもらった。しかし、竣工検査で指摘を受け、鉄筋探査機で鉄筋が下がっていないことを確認したうえで、コンクリートを斫り、ポリマーセメントモルタルで補修した。
・型枠の材料、型枠支保工の材料および配置(間隔)については施工計画で検討していたが、水路を跨ぐ支保工についての計算は行われていなかった。経験上、支保工はこれで十分もつと判断したが、「水路近傍では通常の地盤のように支持力を得ることは難しい場合もある。」ということに対する想像力が欠けていた。
・型枠支保工の組立て図を描く段階で危険予知を行っていれば、今回のトラブルは防げたかもしれない。
・対策として水路に管を敷設し、土砂を埋めておけば、地盤全体を均等に転圧ができ、基礎地盤の沈下を防げたかもしれない。
・コンクリートの打込み作業には必ず、型枠工を配置する。コンクリートの打込みの積算基準には型枠工は含まれていないが、本事例のようにコンクリートの打込み作業中に型枠工の助けを必要とすることがある。
・不思議なもので、このような事故は、最後の最後に起きるようである。あと1m3になってから、気を緩めないようにしたいものである。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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