打設準備(型枠・鉄筋組立等)
2017/12/25
この地中梁のコンクリートの打込みは、図-1に示す① → ⑦の順序で行っており、梁Aと梁Bとの交差部から開始している。そして、約1.5mの梁高に対して、一気に天端まで打ち上げている。なお、パイプサポートなどによる型枠の支持・固定は行っていなかった。
また、使用したスペーサはモルタル製であり、写真-2に示す様に鉄筋にクリップ式で固定するロケットタイプと呼ばれ、型枠に接する先端が細くなっているものであった。打込み前の検査では、スペーサは1m2当たり2個以上使用するという規定が守られていることは確認されていた。
そのため、以下のような現象が生じたものと推察できる。すなわち、
(1)図-2の側面図に示すように、梁Aの型枠には偏ったコンクリートの側圧が作用した。
(2)梁Aの型枠が、支保工が無かったため外側に変形した。
(3)同時に、セパレータやスペーサを介して梁Aの鉄筋も一緒に移動した。
(4)それに伴って梁Bの鉄筋も同じ方向に移動した。
(5)同様に、梁Cの鉄筋が梁Bの鉄筋により引っ張られた。
(6)このとき、梁Cでは鉄筋のかぶりを確保するためのスペーサの数および取付け方法が不十分だったため、スペーサの移動や脱落が生じて鉄筋が型枠側(写真-1の左側)に湾曲して、かぶり不足箇所が生じた。
上記のように、コンクリートの打込みによって梁の鉄筋が移動して、かぶり不足が生じた原因としては、鉄筋とスペーサが堅固かつ正確に組み立てられていなかったためにスペーサが動くなどして鉄筋と型枠の固定が不十分となったこと、支保工による型枠の支持が無かったこと、コンクリートを局所的に一気に打ち上げ過ぎたために型枠に過度の偏った側圧が作用したこと、などが挙げられる。
補修にあたり、かぶりが不足した梁側面部では、構造計算上は支障がないと考えられたが、かぶり不足による鉄筋腐食等の劣化を防止することも考え合せて、炭素繊維シート接着による補強を行った。
本例のような不具合を生じさせないためには以下のような処置が必要である。
事前検討・準備の段階では
・鉄筋の正確な組立および脱落・移動を起こしにくいスペーサの選定と堅固な取付けを行う。
・支保工の堅固な組立(十分な数量の設置、移動防止)を行う。
・コンクリート側圧の著しい偏りを防止するため、一層当りの高さを40~50cmに抑えた打込み手順書を作成する。
施工時には
・打込み手順の状況と、打込み時の高さの確認を行う。
・打ち込んだコンクリートの付近の鉄筋が引っ張られていないか確認する。
・型枠のはらみだし等が起きていないか点検する。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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