打設準備(型枠・鉄筋組立等)
2015/03/30
鉄道の高架橋工事でRCラーメン橋台のコンクリートの打込み割付けとして、中床版打ち込み後に、桁受台とパラペットを同時に打ち込んでいた。
工事が進む中、桁受台の高さ(図1に示すH)が、1.5m程度だったものが、県道を跨ぐ区間では橋桁が低いため、桁受台の高さが1.2mと低いものがあり、工程の短縮を図るため中床版と桁受台とパラペットを浮き型枠で同時に打ち込むことにした。
コンクリートの打込みは、10月の晴れた日だった。桁受台側から中床版のコンクリートを打込んでいき、中床版のコンクリート打込みが完了後、30分程度休息をとり、桁受台のコンクリートをゆっくり打込んだ。なお、コンクリートのスランプは現地測定で10cm、硬化促進のための混和剤は使用していない。
パラペットがあと少しで打ち終わるという時、1m3程度のコンクリートが中床版にどっと抜け出してしまった(図2)。
原因は、①のコンクリートが硬化していなかったことにあるが、早く仕事を終わらせたいコンクリート圧送ポンプ業者の催促があり、現場監督が硬化の程度を目視だけで判断したことが真の原因である。
中床版に盛り上がったコンクリートをスコップとバケツで掻き揚げ、復旧するのに30分程度を要した。さらに、コンクリート圧送ポンプ車で不足しているコンクリートをゆっくり、打ち込んだ。コンクリートが抜け出ないことを確認しながら、バイブレータを50cmピッチでかけることもできた。
3日間養生後、桁受台の型枠を外し、コンクリートの仕上がりをチェックしたが、桁受台のコンクリートにはコールドジョイントやあばたなどが無く、きれいな仕上がりであった。ただ、床版上に型枠の跡が溝状に残り、桁受台ぎわの床版がうっすら盛り上がっていた(図3)。
型枠の跡はセメントモルタルで仕上げたが、盛り上がったコンクリートは、はつることにより健全なコンクリートに影響が及ぶことを懸念して、そのままとした。
今回のケースでは、①のコンクリートが硬化後、②のコンクリートを打込むことが可能ならば、打込み区画を①と②に分けたのと同じことだから、全く問題が無い。①のコンクリート打込み後、コンクリート圧送ポンプ車を移動して、他の箇所のコンクリートを打ち込むことを計画し、②のコンクリートを打ち込むまで1時間以上確保することも代替案として検討に値する方法である。
①のコンクリートの硬化を確認する目安として、バイブレータを挿入してみる方法が簡便である。バイブレータが10cm以上挿入ができなくなったら、今回示した規模の上側のコンクリートを打込むのに十分な硬さである。
なお、浮き型枠が多く使われるケースとして現場打ちコンクリート階段の施工がある。この場合、必ず型枠下端の跡が残る。また、下側への抜け出しを防ぐため上側のコンクリートのバイブレータのかけ方が甘くなる。これらの理由で、浮き型枠が利用できるのは、階段のようにセメントモルタルによる補修が可能な部位で、水密性が要求されない構造物に限られる。
階段のコンクリートを施工する場合、下側のコンクリートが固まってから、上側のコンクリートを打ち込むというようなことはせず、一気に4~5段ずつ仕上げていくのが普通である。今回の目安は、上側のコンクリートがマッシブな場合に適用されるもので、階段の場合にはそぐわない。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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