2)盛土・軟弱地盤
2015/08/27
沢部を通る道路盛土(2段)の施工中に台風に伴う豪雨により発生したのり面浸食のトラブルである(図1、図2)。当該現場付近は花崗岩の分布地域であり、まさ土を用いた盛り立てが行われており、盛土勾配は1:1.8、盛土高さは約10mである。7月中旬には2段目の盛土施工がほぼ完了し、小段排水溝および1段目の縦排水溝の施工が完了していた。台風接近の前日にはのり面への雨水の流下を防ぐために、のり肩に素掘り側溝を掘って豪雨に備えた。翌日、台風の影響を受けて、日降水量200mmの豪雨に見舞われた。雨が治まってからのり面を点検したところ、2段目の盛土と地山の境界付近でのり面が最大で、幅約100cm、深さ約50cm浸食されていた。
盛土材に用いたまさ土は花崗岩が風化した砂質土で浸食を受けやすい土質である。また当該盛土箇所は周辺の地山から雨水が集まりやすい沢地となっている。現場では、盛土のり肩に素掘り側溝を掘っていたが、側溝に溜まった水を小段排水溝まで導くための仮排水管を設置していなかったため、素掘り側溝に溜まった水があふれてのり面を流下したことが浸食の原因である。
浸食箇所には、盛土材を撒きだし、のり面バケットをつけたバックホウで整形した。バックホウで施工ができない箇所については、人力と小型機械(プレートコンパクタ)により締め固めて補修した。
施工中ののり面は保護工が施工されるまでの間、最も不安定な状態にある。そのため、現場では、豪雨によるのり面浸食に対するリスク管理が重要である。排水設備の設置やのり面保護工の施工は、のり面仕上げが完成した部分から速やかに行っていく必要がある。また、施工時の仮排水工は、手間がかかる工事工程になるものの、施工の進捗に応じて適宜切り回しをすることが必要である。好天続きでしばらくは大丈夫だろうと施工を進めると、思わぬ集中豪雨に遭遇し、手戻り工事となることがある。今回の事例では、仮縦排水溝を設置していれば被害を防げた可能性が高い。さらに緊急対策としてシートによりのり面を養生することも有効な対策である。なお仮排水工の設置位置には特に基準はないが、本設の縦排水溝位置(図1中②)や地山と盛土の境界付近(図1中①)がその目安となる。仮縦排水溝の例については、文献を参照されたい。また部分的に転圧補修し、縦排水溝を施工しても、その箇所が将来弱部になりやすく、排水溝側部が浸食され排水溝自体が変状する場合もあるので、定期的に点検することが望ましい。
その他にも浸食されやすい土質としては、火山灰質砂質土(しらす)や山砂等の砂質土に加え、地域によっては浸食されやすい細粒土(非塑性)もあるため、周辺の工事資料等の情報を事前に調べておくことも必要である。
1. 日本道路協会,道路土工 盛土工指針(平成22年度版)p.231-235
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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