土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
2)打設中(締固め)
2021/03/30
東北地方の積雪寒冷地での鉄道高架橋(3径間のRCラーメン高架橋)の施工において、梁・床版のコンクリートを打ち込んだ後、柱の打継ぎ部付近にコンクリートの硬化不良(強度が十分でない品質不良)と思われる不具合が発生した(図-1、写真-1)。写真のような不具合は、程度の差はあるものの、8本の柱(打継ぎ部)のすべてに確認された。
柱は1辺が1.0mの矩形断面で、床版上面から打継目までの深さは、両端部の柱で2.0m、それ以外の柱で1.6mであった。
梁・床版コンクリート(33-12-25N、水セメント比47.6%、空気量4.5%)を12月に打ち込んだが、打込みの4日前から寒波の襲来により日平均気温が氷点下となり、雪が降り積もる天候の中での打込み準備となった。雪対策および寒中コンクリート対策として、足場上に屋根を設置してシートで高架橋全体を覆う計画であり、これらが完成したのは打込みの2日前であった。またその後は、資機材の吊込み作業等により部分的にシートを外す場合があったため、雪がシート内に入ることを完全に防ぐことは難しく、型枠内に積もった雪は温水等で融かした。
打込み前日の夕方には、すでに型枠が設置された打込み予定箇所について、高圧水を用いて型枠内部を洗浄した。なお、型枠の洗浄水や雪・凍結部を溶かした水を処理するため、打継目付近の型枠には直径12mmの排水孔を各柱に6箇所(4面のうちの3面に各2箇所)設けておいた。
また、コンクリートが初期凍害を受けないように、打込み2日前から複数台のジェットヒータによりシート内の給熱養生を開始し、所定の圧縮強度(本構造物では5N/mm2以上)を確認するためシート内の温度を管理しながら養生温度5℃以上で材齢4日まで継続した。
打込み当日の作業は特に問題はなく順調に進み、夕方には打込みを完了した。受入検査におけるコンクリートの品質も問題なかった。打継ぎ部の不具合を発見したのは、打込みから3週間ほど経過した年明け早々、梁と柱の型枠を取り外したときであった。
その後、柱ごとにコンクリートの品質不良範囲を特定するため、柱表面の詳細な目視調査、打音調査、反発硬度測定、さらに柱内部の状況を把握するため小径コア(貫通コア)の採取によってコアの目視確認と強度測定1)、超音波パルスによる非破壊診断を行った。その結果、柱によってその程度は大きく異なるものの、柱の内部で打継目から上方に最大5cm程度、柱の表面付近で最大15cm程度の範囲まで強度不足等の品質低下が生じていることが確認された。
今回の不具合の原因は、屋根が完成する前に型枠内(打継ぎ部付近)に降り積もった雪がそのまま溶けずに氷状になって残っていたか、もしくは打込み前日に行った型枠洗浄水が十分に排水されずに型枠内に残っていたものの、当日の打込み前には確認しきれず、そのままコンクリートを打ち込んだためと考えられた。
柱部は周囲よりも深くなっていて配筋も高密度となっているために、上部からの目視では打継ぎ部の残水等の状況を十分に確認できなかった。型枠の洗浄水を排水するために、打継目の高さに型枠に穴をあけるように指示してあったが、いくつかの柱では穴の位置が打継目より高く、水が完全に排水されない状況であったことも確認された。
柱の内部での品質不良の範囲が比較的小さく、表面付近の方が大きかったのは、コンクリートが中央部から打ち込まれて、残水を側方に押しやったためではないかと想定される。また、内部の品質不良の範囲が大きかった柱では、雪・氷が多く残っていてコンクリートがその上に打ち込まれ、その後にコンクリートの硬化熱によって融解したためではないかと思われる。
このような打継ぎ部付近の品質不良範囲の補修は、発注者と協議のうえ、ウォータージェット工法(部分的に手ばつりを併用)により品質不良範囲をすべて除去し、断面修復工法(補修用の無収縮モルタルを注入)で補修した。不良部の除去範囲は柱ごとに異なるが、柱の内部で8~15cm程度、表面で15~25cm程度であった。不良部の除去に当たっては、上面に空気だまりができないように内部に向かって緩やかな勾配をつけるように配慮した。さらに断面修復の後には、表面被覆と剥落防止の目的でビニロン繊維シート(2軸メッシュ:縦横2方向に補強繊維が織り込まれたもの)を健全部まで10cmラップさせてエポキシ樹脂で貼り付け、仕上げ塗装を施した。
コンクリートの打込み前には、打込み箇所や打継ぎ面の状態を十分に確認することが重要である。特に高密度に配筋された柱のように下部が見づらい場合には、十分な照明を使って確認する、CCDカメラなどを用いて確認する、下部に明かり窓を設けるなどの配慮が必要である。
また、冬季の施工では、洗浄水や雨水の型枠内での凍結のリスクは高く、確実に排水できるような処置を行っておくこと、柱ごとにアイランプを吊るして暖めておくことなども重要である。上記の工事では、残りの高架橋の施工においては、柱の打継ぎ部の確実な点検と排水のために、小さな排水孔ではなく、20×40cmの大きな点検・排水口を柱の型枠の4面に設けることとした。
1) (国研)土木研究所HP,小径コア試験による新設の構造体コンクリート強度測定要領(案),
https://www.pwri.go.jp/jpn/results/offer/hihakai/conc-kyoudo.html,2006年5月
1) (一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,洗浄水の凍結により発生した打継目の空洞(2014/12/25),
https://concom.jp/contents/countermeasure/concrete/cat02_vol5.html,2014年12月
2) (一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,雪は融けない(2014/12/25),
https://concom.jp/contents/countermeasure/concrete/cat02_vol6.html,2014年12月
3) (一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,柱の打ち継ぎにおがくずの跡(2014/3/26),
https://concom.jp/contents/countermeasure/concrete/cat04_vol2.html,2014年3月
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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