2015/03/30
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
土工事は建物を設置する地盤を決めるものであり、監理者は根切り底のレベルと状態が、設計図書通りであることを確認することが重要です。ベンチマークから根切り底のレベルを算出して、現地のレベルが正しいことを確認します。根切り底のレベルが間違ってしまうと、建物のレベルが設計図書通りに位置しなくなってしまいます。
また、掘削時に根切り底を荒らしてしまうと、地盤強度が低下したり地盤が沈んだりする原因になります。監理者は根切り底の状態を確認し、掘削し過ぎた箇所があれば、適切に対処しているか確認が必要です。
施工者は基礎伏図などの施工図から根切り図を作成し、それに基づいて根切り工事を行います。根切りでは、計画された形状、寸法で掘削する技術を要します。掘削が足りなければ掘削の修正作業が発生したり、掘削し過ぎれば埋戻しなどの作業が増加したりするので、施工者にとって掘削精度は重要になります。
給排水管、ガス管、ケーブル等の埋設が予想される場合には、試掘などの調査を行い、損傷しないように対応します。
工事に支障となる軽易な障害物はすべて撤去しますが、予想外に大きな障害物が発生した場合には、監理者との協議が必要になります。一般に請負契約では予想外の大きな障害物の撤去費用は含まれていないので、その障害物の程度を判断し、発注者、監理者、施工者で協議をします。
根切り底を「床付け」と言い、床付け面に砕石を敷き、捨てコンクリートを打設して、その上に建物を設置します。根切り底が支持地盤とする場合には、監理者は設計図書と同じであるか確認します。支持地盤が設計図書と異なる場合には、監理者は施工者と協議し対応を指示します。
根切り底は荒らさずに、平滑に施工されていることが重要です。地盤が荒らされ沈下すれば空洞が生じてしまいます。地盤が平滑に仕上がっていないと荷重が均等に伝達されません。冬季には、根切り底の凍結が起こらないように対処します。
監理者は根切り底の状態の確認をし、地盤がかく乱されていた場合には、自然地盤と同等以上の強度となるように、適切な処置を協議し承認します。
工事に支障を及ぼさないように、排水計画が重要です。湧き水だけでなく、雨が降れば雨水もたまります。それらは、排水溝で排水枡(釜場と言う)に集め、水中ポンプで場外に排出します。泥・砂が混じっている場合には、放流先に流れないように、沈砂槽(ノッチタンクとも言う)を設けて、泥・砂を沈殿させてから排出する必要があります。
予想外の出水があり、施工上支障を生じる場合には、施工者と監理者の協議が必要になります。また、出水の汲み上げにより敷地内や近隣等に有害な影響を与えないように、適切に処理することが重要です。
山留工法では、出水が少ない場合には「親杭横矢板工法」、出水が多い場合には止水性のある「シートパイル工法」が一般にとられます。地下が深い場合には、コンクリート柱などをつないで壁を造る工法(連続地中壁)もあります。
木製型枠は有機材なので、土中で腐るとガスを発生することがあります。埋戻しに先立ち、埋戻し部分にある型枠等を取り除きます。いい加減な施工者では、埋戻し部分に残材を捨てることもあるので注意が必要です。残材の廃棄は、廃棄物処理法違反になります。
埋戻し部分に使う埋戻し土および盛土は、定められた材料を用い、締固めを行って施工します。締固めは土の厚さがあると機器で転圧しても振動が届かないので、各層300㎜ごとに転圧します。締固めが不十分な場合に、後で地盤が沈下することで、設備配管が破損するなどの障害がでることがあります。
監理者は埋戻土が適切であるか目視で確認します。埋戻土として根切り土または他現場の発生土を使う場合に、土質が埋戻しに適さないときは、施工者と監理者は協議し対応を決めます。埋戻しでは、埋戻し土が砂質の場合には、水をかけて締め固める「水締め」という方法をとります。良質土の場合には、水をかけるとぬかるんだベタベタの状態になってしまうので、水締めはせずに機器でしっかり転圧します。
砂質の埋戻し土は水締めを行うことで、密実になります。砂で山をつくった場合に、乾いた砂だと崩れますが、湿った砂だと山をつくることができます。子供の頃に海岸で城やトンネルを作ったことがあれば、経験的に水で密実になることが理解できます。
建設発生土は埋戻しに使うものは、雨に濡れないようにブルーシートで覆っておきます。場外に搬出するものは、廃棄物処理法などに従い適切に処理します。
土の掘削面に勾配をつけて根切りし、山留めをしない工法をオープンカット工法と言います。オープンカット工法は勾配部分で敷地を使いますので、敷地に余裕がなければ適用できません。
山留め工法は、掘削面の周囲に土留め壁を造る工法です。土質、掘削深さなどから構造計算をして計画します。山留め壁の崩壊が起これば、周囲や作業場所に被害を与え、労働災害になることもあります。労働安全衛生法、建築基準法、建設工事講習災害防止対策要綱(建築工事編)、その他の関係法令等に従い、安全に設置しなければなりません。
監理者は、山留計画図と躯体図とを照合し、躯体工事に支障がないこと確認します。切梁の下部の位置でコンクリートを打継ぐので、鉄筋の定着長さ、圧接の位置などの確認が重要です。
建設用語で土が崩壊することを「山が来る」といいますが、土工事では土の移動により道路や隣家に被害を及ぼしたり、作業員が土に埋まってしまう事故が発生したりするリスクがあります。
山留が動いたり土が移動したりすると、周囲に影響を及ぼすので、山留めの動きや地面のクラックの有無などを定期的に点検するようにします。労働安全衛生規則第358条では、点検者を指名して、作業箇所及びその周辺の地山について、その日の作業を開始する前、大雨・中震以上の地震があった場合にはその後に点検することを義務付けています。異常があった場合には、監理者はその処置について報告を受けます。
また、労働安全衛生規則では土の崩壊を防ぐために、手掘り掘削について土質と掘削深さに応じて掘削面の勾配を定めています。下記のものは安衛法で定められた最低基準なので、土の崩壊だけでなく、土の移動による周囲への影響も考慮して勾配を決めなければなりません。雨により土が崩れることもあるので、法面をブルーシートで養生したり、山留めの周囲にモルタルを打ったりして、施工者は災害防止に必要な処置をとります。
労働安全衛生規則第356条
労働安全衛生規則第357条
今まで静かな環境だった場所で建設工事を行うと、騒音、振動、埃などの苦情が発生することがあります。周囲に配慮しなければならない環境では、低騒音型の掘削機械等を使用するなど、周辺環境への適切な処置が必要です。
また、土砂の運搬によるこぼれや飛散がないように管理し、必要に応じて道路の清掃、水洗いを行います。近隣住民との関係を維持するために、日常のきちんとした管理が重要になります。
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