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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第37回 おわりに

2017/12/25

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別の工事監理ガイドラインもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

3年間にわたり連載してきた「現場監理の達人 集合住宅編」は今回をもって終了となります。このシリーズは「国交省平成21年9月通知『工事ガイドライン』」「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」などを活用して、工種ごとの仕事の流れや監理ポイントなどを説明してきました。最終回にあたり、監理者の現場監理で特に重要なポイントを振り返ります。

第3回仮設工事…現地で建物の位置の承認

監理者は設計図書通りに建物が施工されていることを確認することが基本的な業務ですが、実際の現場において設計図書通りに施工してよいかどうかの判断をすることも必要です。

工事に着手する前に、実際の敷地に建物の輪郭を出して、敷地境界線・道路境界線からの離れや近隣の状況などを確認し、建物の配置を承認します。また、敷地のGL±0の位置及び建物の1SL(1階のスラブレベル)までの寸法を確認し、承認します。

建物の配置とレベルが確定したら、施工者は建物の基準となる通り芯とレベルの基準を、敷地外の動かない箇所に移しておきます。

  • 建物の配置の確認
    建物の配置の確認
  • 通り芯の逃げ墨
    通り芯の逃げ墨

建物の配置を確認し、建物の基準となる通り芯の墨を、道路に移して逃げ墨としています。施工中に建物の基準墨が不明確になったときに、逃げ墨から基準墨を出します。

  • 設計GLの確認
    設計GLの確認
  • 設計GLを移した墨
    設計GLを移した墨

設計GL(レベルの基準)を確認し、そのレベルの基準を電柱に移しています。重機の作業などで敷地内のレベルの基準が動いても、電柱のレベル墨から確認することができます。

第5回地業工事…支持層の確認

ボーリングデータなどを参考に設計図書を作成しますが、地層が傾斜していることもあり、支持地盤の位置が設計図書通りでないこともありえます。監理者は1番最初に施工する杭工事に立ち会い、実際の地層や支持地盤を設計図書通りになっているか確認します。

  • 地層及び支持地盤の確認
    地層及び支持地盤の確認

    上記は現場造成杭工事で、掘削した土のサンプルを採っています。ボーリングデータや土質サンプルと比較し、実際の地層を確認します。

  • 掘削深度の確認
    掘削深度の確認

    杭の支持地盤までの掘削深度を確認しています。

第7回鉄筋工事-2…配筋検査

建物の構造体が設計図書通りであるか確認することは、監理者の最も重要な業務の1つです。一般に監理者は各階のコンクリート打設前に配筋検査を実施し、鉄筋の配筋の状況を確認します。

  • 柱配筋の確認
    柱配筋の確認
  • 配筋検査
    配筋検査

鉄筋の配筋が設計図書通りに実施されているかどうかは、施工者が実施した自主検査の写真と記録と、コンクリート打設前の配筋検査で確認します。

第9回コンクリート工事-1…生コンの受入検査

建物の構造体として、コンクリートの品質管理は重要です。監理者は受入検査の記録、コンクリートの圧縮強度試験記録を確認し、実際に打設した躯体の状況を目視で確認します。

  • 生コンの受入検査
    生コンの受入検査

    現場に搬入した生コンの品質を、受入検査で確認します。

  • コンクリート強度試験
    コンクリート強度試験

    コンクリート供試体が破壊するまで、圧力をかけて測定します。監理者は「コンクリート圧縮強度試験報告書」で試験結果を確認します。

第12回鉄骨工事-1…鉄骨の製品検査

建物の構造体が鉄骨の場合には、鉄骨の製品検査が重要になります。監理者は、製品の精度を確認し、溶接の検査記録などを確認します。

鉄骨の製品検査
鉄骨の製品検査

梁のフランジの厚さをノギスで測定し、鉄骨の精度を検査しています。

第13回鉄骨工事-2…本締めの確認

鉄骨工事では高力ボルトで鉄骨同士を一体化します。高力ボルトはトルク値という締付け力の管理が重要です。監理者は規定のトルク値で本締めがなされていることを、高力ボルトのピンテールが切れていることで確認します。

  • マーキング
    マーキング
  • 本締め
    本締め

マーキングによって、「ナットとボルト」「ナットと座金」が一緒に回ってしまう「共まわり」などの締付け不良が発見できます。規定のトルク値が出た時点で、ピンテールが切れるので、監理者は目視で本締めが完了していることを確認できます。

第15回防水工事

雨漏れが生じれば、監理者の信頼が失われてしまいます。監理者は漏水のない建物を造るために、防水工事の材料の使用量、下地の状態、施工の状態などを確認します。

  • 下地の状況確認
    下地の状況確認

    コンクリート下地の含水率が8%以下であること、水が滞留しないようにドレンに向けて勾配が取れていることなどを確認します。

  • アスファルトルーフィング張り
    アスファルトルーフィング張り

    アスファルトルーフィングの重ね幅、出隅やルーフドレン周りの補強張りなどを確認します。

第17回タイル工事…出来栄え、接着力

仕上げ工事に入ってくると、監理者は材料の仕様が設計図書通りであることを確認し、実際に施工されたものの出来栄えを目視で確認します。

  • タイル割りの出来栄えの確認
    タイル割りの出来栄えの確認
  • 接着力試験
    接着力試験

監理者は、きれいにタイル割りができていて、出来栄えが良いことを確認します。また、接着力試験を実施した場合には試験結果を確認します。

第26回内装工事-2…出来栄え、ホルムアルデヒド放散量

監理者は材料の仕様が設計図書通りであること、材料のホルムアルデヒド放散量の規格を確認し、実際に施工されたものの出来栄えを目視で確認します。

  • 出来栄え、ホルムアルデヒド放散量

    ホルムアルデヒド放散量が「F☆☆☆☆」であることを確認します。

  • 出来栄え、ホルムアルデヒド放散量

    監理者は竣工検査で、仕上工事の出来栄えを確認します。

おわりに

今回で現場監理の達人『集合住宅編』は最終回を迎えますが、読者の皆さまには約3年間にわたり、ご愛読いただきありがとうございました。

私はゼネコンの現場監督(受注者側)、不動産会社の現場監理(発注者側)の両方を経験し、その後コンサルタントとして全国の建設会社に、現場代理人研修や人材育成制度作りなどの支援をしています。若手社員と話す機会も多々あり、価値観が変わったなと感じることがしばしばあります。一方、「建設物が形になっていくことに感動した」という話もよく聞き、建設業のやり甲斐はいつまでも変わらないものだと感じています。

建設業は請負契約であり、契約時には建設物はありません。設計図書には完成した姿が描かれていますが、それをつくっていくプロセスによって良いものになったり、不具合が発生したりします。建設物の品質は、それを施工管理・工事監理する人たちの能力次第とも言えます。

この現場監理の達人『集合住宅編』が建設業に関わる人たちの参考となり、建設業に興味を持ち、品質管理についてさらに学ぶきっかけになっていただければ、大変うれしく思います。長い間ありがとうございました。

原稿協力

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