2015/04/23
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
地業工事は基礎や基礎スラブを支えるために、それより下の地盤に杭や捨てコンクリート地業等を築造することです。工事監理者は、材料、施工管理、試験について、「工事と設計図書との照合及び確認」を実施します。
杭工事では最初に試験杭を施工します。一般に工事監理者は試験杭に立ち会って、材料や施工管理状況、地質や支持地盤を確認します。特に支持力の発揮に関係する確認は重要であり、設計図書と異なる状況があれば、試験杭の施工結果から今後の施工基準等を指示します。
「砂上の楼閣」という言葉がありますが、支持力が不足すれば建物の安全に影響を与えます。不確定要素がある地中のことなので、実際に試験や施工を行った結果から、地中の状況を判断しなければなりません。工事監理者は建物の安全を守る重要な役割を担っています。
杭工事は、工場等で製造し現場に搬入して施工する既成コンクリート杭や鋼杭と、現場で鉄筋や生コンクリートで杭を築造する現場造成杭に大別されます。まず、既成コンクリート杭工事の工事監理について見てみましょう。
既成コンクリート杭は工場等で製造され、現場に搬入します。杭の品質管理では、杭の仕様の適合性や、クラックなどの不具合のチェックをする受入検査は重要な管理ポイントです。クラックの不具合は目視によって確認しますが、コンクリート杭に散水して検査をします。クラックがあった場合にはクラックに水が染み込み、杭の表面が乾燥し始めた時に、クラック部分が湿った状態で黒く残り発見しやすくなります。
工事監理者は試験杭の立会い時には、受入検査を確認します。
杭心の位置を外して打設してしまったら、構造上の設計変更が必要になるかもしれません。設計図書で定めた位置から許容誤差以内に杭を打設しなければなりません。
工事監理者は試験杭の立会いでは、杭心の位置の墨が正しいことを確認し、掘削機の杭心セットを確認します。
工事監理者は試験杭の立会いで、杭先端の支持地盤が設計図書通りであることを確認します。支持地盤の土質が土質標本と比較し同じであること、支持地盤の深さが設計図書と同じであることを掘削機の計測装置で確認します。なお、土は水分を含むことで、土質標本と色が異なって見えることがありますので注意が必要です。
既成コンクリート杭を吊り込み、設置します。杭長が長い場合には杭をつないで施工しますが、その接合部分の確認をします。
この事例では、既成コンクリート杭の接合部分は高力ボルト接合になっています。ボルトはトルクレンチでトルク値を管理します。1次締めでは90N、本締めでは130Nのトルク値が管理値になっています。
工事監理者は設計図書通りの支持力が得られているか確認する役割があります。埋込杭の場合には、支持地盤の土質及び深さの確認が重要です。既成杭が支持地盤に設計図書で定められた長さ以上貫入されていることを確認します。打込杭の場合には、打ち止め時の貫入量と打撃エネルギーから支持力を推定し確認します。
次に現場造成杭ですが、一般によく活用されているアースドリル杭工事の工事監理を見てみましょう。
現場造成杭は、敷地に余裕がある場合には鉄筋カゴを現場で組み立てます。敷地に余裕がない場合には、場外の加工場で鉄筋カゴを製作し搬入します。加工場で製作した場合には、トラックで運ぶこと等を考慮して鉄筋カゴの長さを決めます。杭長が長い場合は、現場で鉄筋の定着長さをとって、鉄筋カゴをつなぎます。
生コンの受入検査は、躯体コンクリート工事の管理と同じです。コンクリート配合を納品書で確認し、スランプ値、空気量、塩化物量などの受入検査をします。
工事監理者は試験杭の立会いでは、配筋検査を実施し、コンクリート受入検査に立ち会い確認します。
杭心の墨の位置が設計図書通りであるか確認します。施工者は設計図書から杭伏図を作成して施工管理します。アースドリル杭の掘削バケットを回す軸をケリーバと言いますが、ケリーバの芯が杭心の墨の位置にセットされたことを確認します。
工事監理者は試験杭の立会いでは、杭心の位置の墨が正しいことを確認し、掘削機の杭心セットを確認します。
杭心の位置にケリーバの芯が正確にセットされたとしても、掘削中にケリーバが斜めになっていれば、地下では杭心の位置がずれてしまいます。地表から地下へ向かって垂直に掘削するためには、ケリーバが垂直でなければなりません。杭心セットとともに、ケリーバの垂直精度も確認します。
工事監理者は試験杭の立会いで、杭先端の支持地盤が設計図書通りであることを確認します。掘削を進めながら土質サンプルを採取します。支持地盤の土質が土質標本と比較し同じであること、支持地盤の深さが設計図書と同じであることを確認します。
工事監理者は試験杭の立会いで、支持地盤を確認し、根入れ長を含めた掘削深度を確認します。鉄筋を吊り込み、コンクリート打設前にスライム(孔底に沈下した汚泥)処理を行い、スライムが基準値以下になったことを確認して、コンクリートを打設します。
コンクリートを打設では、余盛長さを加えた杭の天端を、コンクリート天端とします。杭のコンクリートは孔底から打ち上がってきますが、杭の一番上の部分はスライムなどが混ざっている可能性があるので、余分にコンクリートを打設し後で斫って除去します。この部分を余盛といいます。ベントナイト溶液は、孔壁が崩れてこないように粘性を調節した液体です。生コンを打設しながら、ベントナイトが杭孔上部から溢れないように、水中ポンプでタンクへ移されます。
施工者は杭頭処理後に、墨出しをして杭心の位置を測定し、許容誤差内であることを確認します。施工者は杭の位置の測定結果を図面化し、工事監理者に報告します。工事監理者は測定立会い、もしくは報告を確認し、許容誤差以上の偏心がある場合には、必要な対応を指示します。杭の偏心については、既成コンクリート杭も同様の監理が必要です。
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