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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第6回 鉄筋工事-1

2015/05/28

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

筋量が不足していたために必要な耐震性が確保できず、2005年に起きた構造偽装事件。建物を解体するほどの社会的問題となりました。その他にも鉄筋配筋仕様の間違いがコンクリート打設後に見つかり、コンクリートを解体した事例がいくつかあります。鉄筋工事は建物の安全性を担う重要な工事です。

施工者は鉄筋工事の自主検査をしますが、基本的に工事監理者は各階のコンクリート打設前に、配筋検査(工事と設計図書との照合及び確認)を実施します。工事監理者の配筋検査で修正点があれば、修正してからコンクリートを打設します。配筋検査で大きな指摘があれば、コンクリートは予定通り打設できなくなります。

鉄筋工事はコンクリート打設後に隠れてしまうため、コンクリート打設前に工事監理者が現物を見て検査します。工事監理者の配筋検査が最後の砦となりますので、確実に設計図書通りに配筋されていることの確認が重要な役割になります。

1. 鉄筋材料の仕様の確認

鉄筋材料の仕様が設計図書通りであるかどうかを、3つの方法で確認します。ミルシートで鉄筋材料の品質規格を、メタルタグ(荷札)でミルシートに記載された製品であることを、製品のロールマークで現物の仕様を確認します。

① 鉄筋材料のミルシートの確認

施工者が鉄筋工事を発注する場合には、鉄筋材料と鉄筋労務を分離して発注する場合と、鉄筋業者に鉄筋材料を含めて発注する場合があります。どちらを選択するかは、鉄筋購入コストとの関係が強く、建設会社として年間の鉄筋材料の使用量が多い場合には、鉄筋材料を自社で購入して鉄筋業者に支給することがあります。逆に支給材にしてもコストのメリットが少なければ、鉄筋業者に鉄筋材料と施工の両方を発注することで、施工者の材料発注に関する手間がなくなります。

どちらにしても鉄筋加工場に納品される鉄筋材料は、JIS(日本工業規格)製品で品質が保証されたものでなければなりません。鉄筋材料の品質は「鋼材検査証明書」で確認し、一般にそれを「ミルシート」と呼んでいます。鉄鋼メーカーは鋼材製品を納入する時に、発注者に対してミルシートを発行します。ミルシートには商社名、注文者名、数量、質量や、化学成分、引張試験値などの規格値と製造実績値が記載されています。工事監理者は、ミルシートで納品された鉄筋材料の品質を確認します。

② 鉄筋材料のメタルタグの確認

ミルシートを確認し、その材料が納品されていることをメタルタグで確認します。搬入された鉄筋材料にはタグ(荷札)が付いて、ミルシートと照合することで、ミルシートに記載された鉄筋材であることが確認できます。

工事監理者は施工者にタグを集めておいてもらい、ミルシートと照合して確認します。タグもしくはそのコピーを提出してもらっている現場もあります。

メタルタグの確認

メタルタグの確認

③ ロールマークの確認

指定の鉄筋材料が鉄筋業者の加工場に納品されると、鉄筋業者は加工に入ります。鉄筋業者は設計図書と施工図から鉄筋加工図を作成し、鉄筋加工図に基づいて鉄筋を切断したり曲げたりして加工します。

加工した鉄筋材料は、工事現場の工程に合わせて、トラックで現場に搬入します。RC造ではコンクリート打設後、最初に柱筋、フープ筋、壁筋を搬入します。型枠スラブができた段階で、梁筋、スターラップ筋、スラブ筋を搬入します。材料搬入が早過ぎれば置き場所に困ったり、小運搬の手間が生じたりします。材料が遅れれば鉄筋業者が手待ちになります。材料をタイムリーに搬入しなければなりません。

鉄筋材料の確認では、製品の取り違いがないかロールマークを確認します。特に、実際に現場に鉄筋材が搬入したときに、受入検査でロールマークの確認が重要になります。ある現場では地下と地上で鉄筋強度が異なっていましたが、鉄筋加工の段階で材料の種類を取り違えてしまいました。現場ではロールマークの確認をせずに組み立てて、コンクリート打設し、その後で鉄筋材の種類の間違いを発見し、コンクリートを解体する手直しになった事例があります。

メーカーによって異形鉄筋の形状が異なり、メーカーカタログでロールマークの識別方法が記載されています。工事監理者は配筋検査時に、目視でロールマークを確認します。

鉄筋材料の受入検査

鉄筋材料の受入検査

鉄筋材料の種別の表示方法

鉄筋材料の種別の表示方法

※ 注 SD295Aには、ロールマークの点もマーキング色による識別もありません。
SD295Bは、「1」または「I」のロールマーク、マーキング色は白色を使います。

2.鉄筋加工の確認

① 鉄筋加工の受入検査

検査が規定されている場合は、鉄筋加工が設計仕様通りになっているかどうか確認します。工事監理者は配筋検査時に確認するようになります。

鉄筋加工の受入検査

鉄筋加工の受入検査

② 鉄筋加工の納まりの確認

施工者は躯体図を作成する段階で、意匠図と構造図の整合性や鉄筋の納まりの検討をします。特に外壁側の柱と梁の交差する部分では、柱主筋の寸法だけ梁主筋が内側に寄るために、梁の内側のかぶりが取れなくなるので、梁筋をどのように納めるのか事前確認が必要です。梁筋の納め方としては、「梁の外壁側のコンクリートをふかす」「梁の内側にハンチを付けてふかす」「スターラップを小さくする」などの納め方があります。

外壁側の柱と梁の鉄筋の納まり

外壁側の柱と梁の鉄筋の納まり

「梁の外壁側のコンクリートをふかす納め方」では、梁のコンクリート幅が変わります。幅400の梁を25mmふかした場合には、コンクリートの幅は425 になります。鉄筋の納まりを考慮して意匠図を作成している場合には、ふかし幅が最初から設計されています。

梁幅400を25mmふかした例

梁幅400を25mmふかした例

 「スターラップを小さくする納め方」では、梁のコンクリート幅は変わりません。スターラップが小さくなり、構造上は不利になりますので、工事監理者の確認の上で実施します。また、スターラップを小さくした場合に、梁主筋間隔が小さくなり、設計仕様を満たさない場合もあるので、納まり図で検討しておくことが必要です。

鉄筋同士のあき寸法の基準

鉄筋同士のあき寸法の基準

※出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)

「鉄筋工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

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