2015/06/29
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
鉄筋量が不足していたために必要な耐震性が確保できず、2005年に発覚した構造計算書偽装問題では、建物を解体する社会的問題になりました。鉄筋配筋仕様の間違いがコンクリート打設後に見つかり、コンクリートを部分的に解体した事例もあります。鉄筋工事は建物の安全性を担う重要な工事です。
施工者に自主検査をしておいてもらいますが、基本的に工事監理者は各階のコンクリート打設前に、配筋検査(工事と設計図書との照合及び確認)を実施します。工事監理者の配筋検査で修正点があれば、修正してからコンクリートを打設します。配筋検査に大きな指摘があれば、コンクリートは予定通り打設できなくなります。
鉄筋工事はコンクリート打設後に隠れてしまうため、コンクリート打設前に工事監理者が現物を見て検査します。工事監理者の配筋検査が最後の砦となりますので、確実に設計図書通りに配筋されていることの確認が重要な役割になります。
コンクリートの構造体では、最小かぶり厚さ以上確保することが求められています。かぶりとは、鉄筋を被覆するコンクリートの厚さのことです。最小かぶり厚さは、主に下記の3つの理由で確保しなければなりません。実際の施工では施工誤差があるので、最小かぶり厚さに10mmを加えた数値で鉄筋を加工します。
鉄筋は錆により劣化します。コンクリートはアルカリ性で、鉄筋を錆から守っています。しかし、コンクリートは大気中の炭酸ガスなどによって、経年により中性化していきます。かぶり厚さは中性化する期間と相関関係にあり、かぶり厚さが足りないと鉄筋までのコンクリートの中性化が進んで鉄筋を錆びさせてしまいます。
鉄筋は600度で降伏点強度が半減するといわれています。火事が起こった時に、コンクリートのかぶり厚さが鉄筋の急激な温度上昇を防いでいます。
鉄筋に応力が加わった時にコンクリートのかぶり厚さが小さすぎると、コンクリートが薄いためにひび割れが生じてしまい、付着強度が急激に低下してしまいます。
最小かぶり厚さの仕様は次のようになっています。
(注)
1.※印のかぶり厚さは、普通コンクリートに適用し、軽量コンクリートの場合は、特記による。
2.「仕上げあり」とは、モルタル塗り等の仕上げがあるものとし、鉄筋の耐久性上有効でない仕上げ(仕上塗材、塗装等)のものは除く。
3.スラブ、梁、基礎及び擁壁で、直接土に接する部分のかぶり厚さには、捨コンクリートの厚さを含まない。
出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)
鉄筋工事では、鉄筋のかぶり厚さに合わせてスペーサーを使います。下記の写真は使用するスペーサーを一覧にして、工事監理者に確認してもらっています。かぶり厚さに対するドーナツの色を決めておくことで、現場での確認がしやすくなります。
工事監理者は、構造図と現場の配筋を照合して、柱筋が仕様通りであることを確認します。柱主筋の種類・径、位置、本数を確認します。建物のX方向、Y方向を間違えないように注意します。フープ筋(帯筋)の寸法、鉄筋の種類・径、ピッチ、フック形状を確認します。補助筋の位置、種類、ピッチ、フック形状を確認します。
壁筋の配筋検査は、構造図と現場の配筋を照合して、鉄筋の種類・径、ピッチ、補助筋、補強筋を確認します。壁の配筋検査は、型枠で隠れる前に実施します。タイミングがあるので、施工者の自主検査結果を工事監理者は確認します。
梁筋の配筋検査は、構造図と現場の配筋を照合して、梁主筋の種類・径、本数、位置、定着長さ、柱への飲み込み長さなどを確認します。スターラップ筋(あばら筋)は、鉄筋の種類・径、ピッチ、フック形状を確認します。
梁の主筋の2段筋が下がり過ぎているという指摘がよくみられます。2段筋は、梁の最上部の鉄筋同士の間隔を確保するために、2段目になったものです。曲げ応力を考えれば、下がり過ぎると構造的に不利になりますので、鉄筋同士に必要な最小間隔で位置を決めます。鉄筋の間隔を支持するS字金物を使っている場合もあります。
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