2015/07/30
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
鉄筋量が不足していたために必要な耐震性が確保できず、2005年に発覚した構造計算書偽装問題では、建物を解体する社会的問題になりました。鉄筋配筋仕様の間違いがコンクリート打設後に見つかり、コンクリートを部分的に解体した事例もあります。鉄筋工事は建物の安全性を担う重要な工事です。
施工者に自主検査をしておいてもらいますが、基本的に工事監理者は各階のコンクリート打設前に、配筋検査(工事と設計図書との照合及び確認)を実施します。工事監理者の配筋検査で修正点があれば、修正してからコンクリートを打設します。配筋検査で大きな指摘があれば、コンクリートは予定通り打設できなくなります。
鉄筋工事はコンクリート打設後に隠れてしまうため、コンクリート打設前に工事監理者が現物を見て検査します。工事監理者の配筋検査が最後の砦となりますので、確実に設計図書通りに配筋されていることの確認が重要な役割になります。
建物の長さが30mあった場合に、30mの鉄筋を使えればいいのですが、それでは現場に運び込むことも組み立てることもできません。鉄筋工事では鉄筋加工図を作成して、どこでつなぐかを検討します。鉄筋は所定の長さに加工したものを運び込み、現場でつなぎ合わせながら施工します。つなぎ合わせた部分を継手といいます。
柱筋の場合には、SRC造などで2階ごとにつなぐケースもありますが、普通は1階ごとに鉄筋を組立て、コンクリートを打設していきます。
鉄筋に応力がかかった時に、継手で応力が伝達されなければ、継手が弱点になってしまいます。継手で確実に応力が伝達されるように、継手の仕様が決まっています。継手の種類には重ね継手、ガス圧接継手、機械式継手、溶接継手があります。
鉄筋の重ね継手の仕様は表(右上)のようになっています。径が異なる鉄筋の重ね継手の長さは、細い鉄筋の径(d)によります。柱及び梁の主筋ならびに耐力壁の鉄筋の重ね継手の長さは、特記によります。耐力壁の鉄筋では、特記がなければ40dと表(右上)の長い方の値とします。工事監理者は配筋検査で、壁筋、スラブ筋などの重ね継手の長さを確認します。
継手の位置は、設計図書の仕様によります。日本建築学会の「建築工事標準仕様書・同解説 鉄筋コンクリート工事」では、継手位置は図のようになっています。基本的な考え方は、鉄筋にかかる応力の大きな箇所を避けて継手を行うということです。柱の継手位置は、柱の中央部分です。スラブから500上がった位置から、圧接可能範囲になります。
梁下端筋の継手位置は、荷重がかかったときに引張り応力が大きい梁中央は避けています。逆に、梁上端筋は梁の中央で継手を設けます。基礎梁では、耐圧盤がない場合には、柱際の応力が大きいので中央で継手を設けます。耐圧盤がある場合は、下から荷重がかかるので、梁上端筋の梁中央を避け、梁下端筋は梁中央で継手を設けます。
柱主筋、梁主筋の継手では、主に圧接もしくは機械式継手が用いられます。圧接工事は建設現場で多く使われていて、鉄筋を加熱し溶融して接合する方法です。
施工後に圧接部分を見て、形状が適正であるか、鉄筋同士に偏心がないかなどを目視で判断できますが、内部の接合状況はわかりません。テストピースをとって、鉄筋引張試験を行いますが、サンプリングによる検査です。圧接工事では川上管理を確実にすることで、結果の品質を守ります。事前に確認するものは、有資格者証、作業手順(施工要領書)、設備になります。
圧接工事は技能を持った有資格者に施工させます。鉄筋径によって資格も変わりますので、圧接する工事内容を満たしているかどうか資格者証を確認します。
設備の確認では加熱する火口に種類があり、鉄筋径に適合した火口が使われていることを確認します。
外観検査で、圧接部分の形状や鉄筋同士の偏心の程度を確認します。接合部がクシャとつぶれた形状になっていると、鉄筋に引張力が働いたときに引っ掛かりとなって、応力が集中してしまいます。なだらかな形状であることを確認します。
外観検査では鉄筋径に対して必要寸法を満たしていることを確認します。
圧接本数に対して規定されたテストピースをつくり、鉄筋引張試験を実施します。テストピースを引っ張って、圧接部分ではなく母材で破断すれば合格です。圧接部のふくらみの直径は、母材の直径の1.4倍以上が基準なので、面積にすると(1.4×1.4=1.96)で約2倍になります。しっかりと接合されていれば、接合部ではなく母材が先に破断します。接合部に欠陥があると、接合部で破断してしまいます。工事監理者は、鉄筋引張試験報告書で、破断した強度を含め合格であることを確認します。
鉄筋引張試験で不合格となった場合には、施工者は直ちに作業を中止し、欠陥発生の原因を調査して、必要な改善措置を定め、工事監理者の承諾を受けなければなりません。
2017/12/25
約3年間にわたり連載してきた...
2017/11/29
設計者は設計図書作成時に...
2017/10/30
設備工事は大きく電気設備工事...
土木遺産を訪ねて
2024/11/01
今回の歩いて学ぶ土木遺産は、JR男鹿駅から船川港にある選奨土木遺産「第一船入場防波堤」と「第二船入場防波堤」をめざす行程です。出発点となるJR男鹿駅(2018年新設)の駅舎は...
現場の失敗と対策
コラム
働き方改革
2024/11/01
もちろん、業務上必要な残業は、36協定の範囲内で命じることができます。そもそも36協定(時間外・休日労働に関する協定届)とは...
トピックス
2024/11/01
公益社団法人土木学会は、令和6年度の「選奨土木遺産」に認定した14件を発表しました。今回は、廃川敷に計画された「甲子園開発」の先駆けとして...
今月の一冊
2024/11/01
最先端のデジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)、女性や高齢者、外国人などが活躍できる多様性の実現、働き方改革など、従来のイメージを変革するさまざまな...
Copyright © 2013 一般財団法人 建設業技術者センター All rights reserved.