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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第9回 コンクリート工事-1

2015/08/27

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

ンクリート打設は現場におけるマイルストーンとして、建物の躯体が形になっていく工程上の節目となるイベントです。昔はコンクリート打設後に、打設できたことを元請・下請みんなで喜び、労いを込めて祝杯を挙げました。

鉄筋コンクリート造では鉄筋とコンクリートが、構造の主要な品質を決めます。コンクリート強度が不足したり、コンクリートがきちんと充填されなかったりすれば、建物の安全上や機能上の欠陥につながります。

工事監理者は設計図書通りのコンクリートの品質を実現するために、コンクリートの配合計画、使用する材料、受入検査、圧縮強度検査などを確認します。また、コンクリート打設計画、コンクリートの打設管理状況、打設後の養生などの施工管理を確認します。

コンクリートにコールドジョイント、ジャンカなどのコンクリート充填上の欠陥があった場合には、欠陥の程度に応じた適切な処理をしていることを確認します。いいかげんな処置をして仕上げてしまえば、外見上は判らなくなりますが、長期的には劣化、剥離、漏水などの問題を引き起こします。工事監理者として使命観を持って、コンクリートの品質を確認しなければなりません。

1. レディーミクストコンクリート配合計画書等の確認

① レディーミクストコンクリート製造工場の選定

工事監理者は、施工者が選定したレディーミクストコンクリート製造工場が、設計図書で定められたコンクリートの品質を満たす能力があることを確認し承認します。確認事項は、次のような項目になります。

レディーミクストコンクリート製造工場の選定条件
  • コンクリートの製造工場は、コンクリート製造に係る指導及び品質管理を行う施工管理技術者が置かれ、良好な品質管理が行われていること
  • 施工管理技術者は、コンクリートの製造、施工、試験等にかかわる指導及び品質管理を行う能力のある者とすること
  • 製品の管理、原材料の管理、製造工程の管理、設備の管理、外注管理について、品質管理基準が定められ、適切に管理されていること
  • 工場は、基準時間内にコンクリートの打込みが終了できる運搬距離にあること
  • 同一打込み区画に、2つ以上の工場のコンクリートを打ち込まないこと
② 配合計画書の確認

設計図書でコンクリートの種類、コンクリート強度、気乾単位容積質量、スランプなどの仕様やコンクリートの調合条件が定められています。工事監理者はコンクリート工場の配合計画書(製造に用いる材料、調合設計の基礎となる資料、計算書等を含む)を提出してもらい、設計図書と照合確認の上で承認します。

コンクリートの仕様及び調合条件の例
項 目 基 準
コンクリートの種類 JIS A 5308への適合を認証されたコンクリート
スランプ 基礎、基礎梁、土間スラブ:15、18
柱、梁、スラブ、壁:18
空気量 4.5%
水セメント比 65%以下
単位水量 185㎏以下
塩化物量 0.3㎏/m3以下
③ 使用材料の確認

設計図書の仕様と照合し、セメントの種類、骨材、水、混和材料を確認します。

生コンの材料見本

生コンの材料見本

2.受入検査の確認

受入検査は、施工者が設計図書で定められた基準で実施します。工事監理者は受入検査の記録を確認します。

生コン受入検査
生コン受入検査
① スランプ

スランプの許容差:スランプ8以上18以下の場合±2.5

スランプは材料の練り混ぜた時のバラつき、運送中の温度による変化などがあるので、許容差を設定し、その間であれば合格としています。

スランプはコンクリートの流動性の程度を表わします。

  • スランプが小さい ⇒ 作業性が悪くなり、空洞やジャンカができやすくなる
  • スランプが大きい ⇒ スランプが過大になると粗骨材が分離しやすくなる
             ⇒ ブリーディング量(コンクリートが硬化するときに上部に浮いてくる水)
              が大きくなり、細かいクラックができやすくなる
  • スランプ 図
  • スランプ値
② 空気量

空気量の許容差:4.5%±1.5

空気量は、単位コンクリート当たりに含まれる空気を表わします。コンクリートの水分は凍結すると膨張し、融解すると縮小します。これを繰り返すことでコンクリート強度を低下させますが、空気はこれを防止することに役立ちます。

  • 空気量が小さい ⇒ 空気があることで、コンクリートの流動性が高まる。空気量が小さいと流動性が悪くなる。
  • 空気量が多い ⇒ 空気量が多いと空隙が多くなることで、コンクリート強度を低下させる。
    混和剤(AE材など)はこまかい石鹸のような役割で、同じ空気量から細かい気泡をたくさんつくり、流動性を向上することができる。

エアメーターの目盛をみると空気量4.7%なので、許容差内で合格です。

エアメーターの目盛をみると空気量4.7%なので、許容差内で合格です。

③ 塩化物含有量

塩化物の許容差:0.3㎏/m3以下

コンクリート中の塩化物量が多いと、コンクリートの中性化が進行していなくても、鉄筋を錆びさせてしまいます。塩化物測定には測定器以外にも、カンタブという塩分量測定計も使われています。

コンクリート中の塩化物イオン量が0.3㎏/m3を超えてしまった場合は、次の運搬車から各運搬車ごとに試験を行い、0.3㎏/m3以下であることを確認したのちに使用します。ただし、連続して10台の運搬車の試験の結果が0.3㎏/m3以下であることが確認できれば、その後は受入検査基準に従って運用すれば良いとします。

  • 塩化物測定器の目盛は0.035㎏/m<sup>3</sup>なので、0.3㎏/m<sup>3</sup>以下で合格です。

    塩化物測定器の目盛は0.035㎏/m3なので、0.3㎏/m3以下で合格です。

  • カンタブ

    カンタブ

3.コンクリート強度検査の確認

① コンクリート強度試験方法

コンクリート強度試験の供試体(テストピース)の養生方法、材齢、1回の試験の個数及び試験回数は、次表によります。

供試体の養生方法、材齢、1回の試験の個数及び試験回数
試験の目的 養生方法 材齢 個数/回 試験回数
調合管理強度の管理試験用 標準養生(JIS A 1132による20±2°C水中養生) 28日 3個/回 製造工場及びコンクリートの種類が異なるごとに1日1回以上、かつ、150m3ごと及びその端数につき1回以上
型枠取外し時期の決定用 工事現場における水中養生 必要に応じて定める 必要に応じて定める
構造体コンクリートの圧縮強度推定用 28日 製造工場及びコンクリートの種類が異なるごとに1日1回以上、かつ、150m3ごと及びその端数につき1回以上
工事現場における封かん養生(注1) 28日を超え
91日以内

(注1)材齢28日の試験結果が満足しないと想定される場合に実施する

工事現場における水中養生

工事現場における水中養生

供試体の脱型は、コンクリートを詰め終わってから16時間以上3日間以内に行います。

供試体の保管場所は、直射日光の当たらない屋外とし、養生温度はコンクリートを打ち込んだ構造体にできるだけ近い条件になるようにします。

② コンクリート強度試験

施工者は試験機関でコンクリート強度試験を実施し、コンクリート圧縮強度試験報告書を作成します。工事監理者はコンクリート圧縮強度試験報告書で、検査結果が合格であることを確認します。

コンクリート強度試験の立会い
コンクリート強度試験の立会い

機械で供試体が破壊するまで圧力をかけて測定します。

調合管理強度の管理試験の基準

次の(1)(2)の両方を満足すれば合格とします。

(1)1回の試験結果は、調合管理強度の85%以上とする

(2)3回の試験結果の平均値は、調合管理強度以上とする

構造体コンクリート強度の推定試験の基準

次の(1)(2)のいずれかを満足すれば合格とします。

(1)現場水中養生供試体の材齢28日の圧縮強度試験結果から判定する場合は、次を満足すること

  • 材齢28日までの平均気温が20°C以上の場合は、1回の試験結果が、調合管理強度以上であること
  • 材齢28日までの平均気温が20°C未満の場合は、1回の試験結果が、設計基準強度に3N/mm2を加えた値以上であること

(2)現場封かん養生供試体の材齢28日を超え91日以内の圧縮強度試験の1回の試験結果が、設計基準強度に3N/㎜2を加えた値以上であれば合格とする。(普通ポルトランドセメントの場合)

③ 不合格となった場合の処置

検査結果が不合格となった場合には、JIS A 1107(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法)又はその他の適切な試験方法により構造体の強度を確認し、工事監理者は必要な処置について指示します。

「コンクリート工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

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