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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第11回 コンクリート工事-3

2015/10/30

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

ンクリート打設は現場におけるマイルストーンとして、建物の躯体が形になっていく工程上の節目となるイベントです。昔はコンクリート打設後に、打設できたことを元請・下請みんなで喜び、労いを込めて祝杯を挙げました。

鉄筋コンクリート造では鉄筋とコンクリートが、構造の主要な品質を決めます。コンクリート強度が不足したり、コンクリートがきちんと充填されなかったりすれば、建物の安全上や機能上の欠陥につながります。

工事監理者は設計図書通りのコンクリートの品質を実現するために、コンクリートの配合計画、使用する材料、受入検査、圧縮強度検査などを確認します。また、コンクリート打設計画、コンクリートの打設管理状況、打設後の養生などの施工管理を確認します。

コンクリートにコールドジョイント、ジャンカなどのコンクリート充填上の欠陥があった場合には、欠陥の程度に応じた適切な処理をしていることを確認します。いいかげんな処置をして仕上げてしまえば、外見上は判らなくなりますが、長期的には劣化、剥離、漏水などの問題を引き起こします。工事監理者として使命観を持って、コンクリートの品質を確認しなければなりません。

7.型枠工事

型枠は仮枠かりわくとも言い、コンクリートを入れて固めるための仮設構造物です。型枠の形状、精度が、躯体くたい(構造体コンクリート)の形状、精度を決めます。型枠は、コンクリートに接する「せき板」と、スラブ型枠などを支える「支保工しほこう」と、パイプやフォームタイなどを使って締め付ける「緊結材」の3つの要素でできています。

躯体図くたいず

型枠工事は躯体図(構造体コンクリートの施工図)に基づいて施工します。躯体図でコンクリートの形状が決まるので、工事監理者は設計図書と躯体図を照合し、確認することが重要になります。

施工者は躯体図を作成する段階で、意匠図、構造図、設備図の不整合のチェック、サッシ、タイル、石、金物、防水、造作など、各工種の納まりを検討します。ここで十分に検討しつくされていれば、内装工事、仕上工事はスムーズに進みます。一方、技術力のない施工者の場合には、躯体図の段階で納まりの検討が不十分なために、後になって納まりの問題が発生します。設備工事の躯体貫通スリーブの検討が不十分で、躯体が出来上がってからスリーブをコア抜きして問題となり、最終的に建物を解体する事態になった現場もあります。

設計図書と躯体図の照合
設計図書と躯体図の照合
② 構造体コンクリートの精度

構造体コンクリートの部材の位置及び断面寸法の許容差は、次のようになります。

部材の位置及び断面寸法の許容差の標準値

部材の位置及び断面寸法の許容差の標準値

部材の断面寸法の確認
  • 部材の断面寸法の確認
  • 部材の断面寸法の確認

コンクリート打設し、型枠解体後に構造体コンクリートの断面寸法を確認しています。

③ 型枠材料

せき板の材料は、コンクリート打放し仕上げ(コンクリート面がそのまま仕上げになる)の場合は表面加工品を使い、Pコンの位置を指定したパネル割り図を作成します。コンクリート打放し以外の場合は、日本農林規格の「コンクリート型枠用合板の規格」に合致したものを使います。その他の材料を使う場合は、工事監理者の承諾を受けます。

壁、柱の型枠建込中

壁、柱の型枠建込中

コンパネ(コンクリートパネル)と呼び、厚さ12mmのコンクリート型枠合板です。

コンパネの表面に黄色の塗料を塗っています。

コンクリートがきれいに仕上がると同時に、コンパネを繰り返し転用しても型枠表面の損傷が少なくなります。

セパレータは、型枠の幅を保持する金物です。打放し仕上げなどではB型(Pコン使用)、仕上げがある場合にはC型(座金使用)と使い分けています。C型を使った場合、金物の頭を除去し、必要に応じて錆止め塗装をします。

B型(Pコン使用)を使う箇所の例は、次のようになります。

  • 直接土に接する面(基礎の類、地下室のない場合の基礎梁を除く)
  • 防水下地
  • 打放し仕上げ面
  • 直接に塗装、壁紙張り等の厚さの薄い仕上げをする面
  • 断熱材を打ち込んだ面(断熱材を損傷するおそれのない場合を除く)
  • 保守点検等のために出入りするダクトスペース等の床上高さ2m以下の見え掛り部
セパレータの種類
設計図書と躯体図の照合
セパレータ
セパレータは躯体図から拾い出し、種類、寸法、必要本数で注文します。ミリ単位で加工して納品してくれます。

セパレータは躯体図から拾い出し、種類、寸法、必要本数で注文します。ミリ単位で加工して納品してくれます。

面木、目地棒
面木は三角形の断面をしていて、出隅に入れてコンクリートに面を取ります。目地棒は目地形状の断面をしていて、コンクリートに目地を作ります。

面木めんぎは三角形の断面をしていて、出隅に入れてコンクリートに面を取ります。目地棒は目地形状の断面をしていて、コンクリートに目地を作ります。

④ 支保工

型枠の支保工は、鉄筋コンクリートの荷重(重さは鉄筋を含めると約2.3~2.4t/m3になる)を支える役割があります。支保工の高さが3.5mを超える場合には水平つなぎをとり、3.5m以上では労働基準監督署に型枠支保工の設置届が必要になります。

スラブ下の型枠支保工
スラブ下の型枠支保工

8.型枠の存置期間と取外し

型枠の取外しは、型枠の最小存置期間を経た以降に行います。存置期間は次の表により、コンクリートの材齢又はコンクリートの圧縮強度によります。寒冷のため強度の発現が遅れると思われる場合は、圧縮強度で行います。なお、圧縮強度により取外す場合は、工事監理者は圧縮強度試験報告書で確認し承諾します。

普通ポルトランドセメントのせき板の最小存置期間
普通ポルトランドセメントのせき板の最小存置期間
普通ポルトランドセメントの支柱の最小存置期間
普通ポルトランドセメントの支柱の最小存置期間

※ 出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)

片持梁、ひさし、長大スパンの梁、大型スラブ等の型枠を支持する支柱、又は施工荷重が著しく大きい場合の支柱等は、必要に応じて存置期間を延長します。

スラブ下及び梁下のせき板は、原則として支柱を取り外したのちに取り外します。なお、支柱の盛替えは行わないようにします。

9.コンクリート補修

工事監理者は、型枠のせき板の取外し後に、コンクリートの出来栄えチェックを行います。ジャンカ(豆板)、空洞、コールドジョイントなどの有無を確認します。また、支保工取外し後に、コンクリート構造体に有害なひび割れ及びたわみの有無を確認します。

確認の結果、設計図書に適合しないなどの欠陥を認めた場合には、工事監理者は施工者と協議し、適切な補修を指示します。補修後直ちに工事監理者は検査を行い、確認します。

コンクリートの欠陥の例
コンクリートの欠陥の例

10.プレキャストコンクリート工事

①柱のプレキャストコンクリート工事
①-1柱材の受入確認

プレキャストコンクリートは、工場で製作されたコンクリート部材のことです。搬入された柱のプレキャストコンクリートを、設計図書及び施工図などと照合し受入確認をします。また、製作工場等の自主検査記録などで品質を確認します。

柱材の受入確認
柱材の受入確認

柱材の仕様、クラックなどの欠陥がないかどうかを確認します。

①-2施工

柱の接合部は定められた位置に定着させた鉄筋に、柱の脚部をはめ込んで建て込みます。柱が所定の位置になるように、建入れを調整します。

  • 1. 柱の建て込み
    1. 柱の建て込み

    柱材の記号と設置場所を確認し、建て込みます。

  • 2. 柱の取付け
    2. 柱の取付け

    柱の凹部に鉄筋をはめ込みます。

3. 柱の建入れ調整
3. 柱の建入れ調整

測量機器で柱の垂直を見て、柱の建入れ精度を調整します。

柱材の接合部に無収縮モルタルを注入し、構造体として一体化します。

接合部へモルタル注入
  • 接合部へモルタル注入
  • 接合部へモルタル注入
②床板のプレキャストコンクリート工事
②-1床板の受入確認

搬入された床板のプレキャストコンクリートを、設計図書及び施工図などと照合し受入確認をします。
また、製作工場等の自主検査記録などで品質を確認します。

床板の受入確認
柱材の受入確認

床板の仕様、クラックなどの欠陥がないかどうかを確認します。

②-2施工

床板を施工図に従って取付けます。床板が所定の位置になるように、水平精度等を調整します。

  • 1. 床板の吊り込み
    1. 床板の吊り込み
  • 2. 床板の取付け
    2. 床板の取付け
  • 3. 床板の位置調整
    3. 床板の位置調整
  • 4. 床板の敷込み完了
    4. 床板の敷込み完了

プレキャストコンクリートの柱と床板を一体化させるために、隙間に無収縮モルタルを注入しています。

柱と床板の一体化
柱と床板の一体化
③プレストレスト構法

当該工事では、プレキャストコンクリートの柱に、プレストレスト構法を組み合わせています。プレストレスト構法は、コンクリート内のPC鋼に張力(引張力)をかけて、コンクリート内に圧縮力を生じさせる構法です。コンクリートは引張力に弱いので、コンクリート内に圧縮力をかけておくことで、コンクリートに引張力がかかったときに、構造体としてより高い強度が発揮できます。

プレストレスト構法
  • プレストレスト構法
  • プレストレスト構法

「コンクリート工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

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