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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第12回 鉄骨工事-1

2015/11/26

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

骨工事は、構造が鉄骨だけ使った鉄骨造(S造)と、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合があります。分譲集合住宅ではS造は少なくRC造が使われ、一部にSRC造が使われています。分譲集合住宅では、隣家との界壁がしっかりした鉄筋コンクリートが選ばれているようです。

鉄骨工事の工程は、大きく鉄骨製作段階と現場施工段階に分けられます。現場で問題なく施工するためには、鉄骨製作段階の管理が重要になります。鉄骨製作材の納期から逆算して、工作図(鉄骨製作図)の作成、図面承認、鉄骨加工・組立、製品検査、出荷の工程を管理します。また、鉄骨製作工場の選定の承諾、工作図と設計図書との照合、鉄筋の納まりや設備スリーブ等の位置と補強の確認、製品検査などを実施します。

現場施工段階では、アンカーボルトの設置、鉄骨建方、高力ボルト締めなどの監理があります。鉄骨工事は建物の構造体となるものであり、工事監理者は監理ポイントをしっかりとチェックしなければなりません。

鉄骨工事の監理フローの概要は、次のようになります。

鉄骨工事の監理フロー
鉄骨工事の監理フロー

1.鉄骨工事計画

① 鉄骨製作工場の選定の確認

鉄骨製作工場は、設計図書に特記された加工能力等及び施工管理技術者の条件を満たしていることを確認します。特記がない場合は、下記の「鉄骨製作工場の選定基準」に基づいて確認します。工場認定グレードの指定がある場合は、その認定グレードを満たしていることを確認します。

鉄骨製作工場の選定基準
  • 工事経歴
  • 鉄骨製作工場の規模、契約電力及び機械設備
  • 生産能力(月産能力及び加工能力の余裕)
  • 他工事の製品の出来ばえ
  • 鉄骨製作者の資格基準
  • 鉄骨製作管理技術者、溶接施工管理技術者、非破壊検査技術者、溶接技能者の資格・人数
  • 品質管理システム等
② 鋼材の確認

鋼材は、規格品証明書、原品証明書、使用材料等報告書などにより確認します。鋼材の品質は、製造業者から発行される規格品証明書(ミルシート、検査証明書、試験成績書等)で確認します。しかし、製作工場に納品された鋼材は、部品に加工されてしまいます。鋼材とミルシートが一体となって動いていないので、鋼材がミルシートと一致していることがわかりません。1つの方法として採用されているのが、ミルシートの内容をリスト化した「原品証明書」と、これに基づいて鉄骨製作工場が材料の使用箇所を記録した「鉄骨工事使用材料等報告書」により確認します。

鋼材の品質確認

鋼材の品質確認

規格品証明書の例

規格品証明書の例

出典:「建築工事監理指針(上巻)」

③ 工作図(鉄骨製作図)の確認

工作図は、設計図書の内容を実現するために、製作・建方における指示書的な役割があります。施工性や構造細部の納まりの確認が工作図だけでは困難な場合は、原寸図や模型等を作成して確認します。工事監理者は、設計図書の内容が正しく工作図に織り込まれていることを確認し承諾します。

鉄骨工事に付帯する金物類
鉄骨工事に付帯する金物類

工作図で他工事との納まりを検討し、貫通スリーブ及び補強、鉄筋貫通孔、鉄筋支持金物(カンザシ)、型枠工事のセパレータ孔、建方用吊り金物などを計画しておきます。

2.工場製作

工場製作段階では、工場検査がある場合には、工場にて製作中の鉄骨を検査します。

工場における中間検査
  • 形状及び寸法精度の検査
  • 取合い部の検査
  • 外観の検査
  • 高力ボルト接合面の検査
  • 溶接部の検査
  • スタッド溶接部の検査
  • 塗装部の検査

各巻尺はJIS1級品を使用します。鉄骨製作工場の巻尺と工事現場の巻尺の照合をし、その誤差が現場施工に支障ないことを確認します。

3.現場施工

① 受入検査

鉄骨の部材が設計図書あるいは工作図のとおりに製作されていることを確認します。受入検査(製品検査)は、製作工場の自主検査の記録確認による書類検査と、搬入された部材の対物検査により行います。

部材の搬入
部材の搬入

部材は建方順序で搬入されます。建方の手順を間違えると、建方ができなくなる箇所が生じます。

製品の精度検査
  • 梁の寸法を確認しています。梁せいは850mmです。

    梁の寸法を確認しています。梁せいは850mmです。

  • 柱のベースの寸法を確認しています。

    柱のベースの寸法を確認しています。

  • 梁のフランジの厚さを、ノギスで測定しています。

    梁のフランジの厚さを、ノギスで測定しています。

  • 梁のフランジの厚さを、ノギスで測定しています。
② アンカーセット

アンカーの許容誤差が小さいので、鉄骨ベースと同寸法のアンカーフレームを使い、アンカーの位置を正確に設置します。

アンカーセット
アンカーセット

鉄骨ベースのアンカー孔径は、「アンカー径+5mm」が基準なので、左右にぶれた場合の許容誤差は2.5mm以内となります。

鉄骨の建入検査を実施し、建入精度を修正後にアンカーボルトのナットを締めて、緩み止めのためにダブルナットにします。

アンカーボルトと建入検査
アンカーボルトと建入検査
③ 鉄骨柱脚部グラウト工事

鉄骨ベースプレートの下は、充填材の収縮によりすきまができやすいので、写真の事例では無収縮グラウト材を流し込んでいます。

鉄骨柱脚部グラウト工事
鉄骨柱脚部グラウト工事
  • グラウト材のコンシステンシー試験
    グラウト材のコンシステンシー試験

    コンシステンシー試験(Jロート試験)では、グラウト材の流下時間で流動性を確認しています。

  • グラウト材の供試体採取
    グラウト材の供試体採取

    圧縮強度試験用(3日、28日の2回分)の供試体を採取しています。

「鉄骨工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

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