2015/12/24
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
鉄骨工事は、構造が鉄骨だけ使った鉄骨造(S造)と、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合があります。分譲集合住宅ではS造は少なくRC造が使われ、一部にSRC造が使われています。分譲集合住宅では、隣家との界壁がしっかりした鉄筋コンクリートが選ばれているようです。
鉄骨工事の工程は、大きく鉄骨製作段階と現場施工段階に分けられます。現場で問題なく施工するためには、鉄骨製作段階の管理が重要になります。鉄骨製作材の納期から逆算して、工作図(鉄骨製作図)の作成、図面承認、鉄骨加工・組立、製品検査、出荷の工程を管理します。また、鉄骨製作工場の選定の承諾、工作図と設計図書との照合、鉄筋の納まりや設備スリーブ等の位置と補強の確認、製品検査などを実施します。
前回は現場施工段階でのアンカーボルトの設置を,解説しました。今回は引き続き、鉄骨建方、高力ボルト締めなどの監理について解説します。鉄骨工事は建物の構造体となるものであり、工事監理者は監理ポイントをしっかりとチェックしなければなりません。
鉄骨建方では、ダイナミックに建物の骨組みが造られていきます。鉄骨建方は柱、梁の順序で組み立てます。仮締めボルトで組立て、建入検査を実施し建入れを修正します。建入れ修正後に、仮締めボルトを本締めボルトに入れ替えて鉄骨を固定します。
鉄骨建方では地震や強風が来ることも想定し、鉄骨が自立できるように、箱状に固めながら進めます。鉄骨上に材料や重機を積載する場合には、工事監理者の承諾を受けて、必要に応じて適切な補強を行います。
工事監理者は、建方検査で形状及び寸法精度を確認します。建入れ精度では、下げ振りを下げて、上下の寸法差を測定します。建入れ修正では、鉄骨が梁でつながっているので、一カ所を動かすと他の柱にも影響します。全体のバランスを考えながら、建入れ修正をします。
建築工事ではトルシア形高力ボルトが使われることが多く、その理由は高力ボルトに付いているピンテールが切れることでトルク管理が行われ、目視で確認できるからです。トルシア形高力ボルトは、建築基準法に基づき認定を受けたものを使います。
トルクとは締め付ける力のことです。トルク値が小さいと部材同士の接合が不十分になります。トルク値が大きすぎると、ボルトが破損してしまいます。高力ボルト接合では、適切なトルク値管理が重要になります。
トルシア形高力ボルトの受入検査で、規格、種類(写真ではS10T)、寸法(径、首下長さ)、数量を確認します。高力ボルトは品質に影響を及ぼさないように、包装のまま保管管理します。施工直前に包装を解いて使用し、使用しなかった高力ボルトは、再び箱に戻して保管します。
トルシア形高力ボルトの軸力検査をして、所定のトルク値が発揮できているか確認しています。
高力ボルトの締付けは、一次締め、マーキング、本締めの工程で進めます。高力ボルトが複数集まって群になっている場合に、中央から外側の開放された側に向かって締めます。規定された一次締付けトルク値でプレート同士をバランスよく密着させ、マーキング後にピンテールが切れるまで本締めを行います。
デッキプレートは、鉄骨の梁に渡す床材です。デッキプレート上に鉄筋を配筋してコンクリートを打設し床を造ります。受入検査では、材質、形状及び寸法が仕様通りであることを確認します。
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