2013/07/19
国土交通省では、建設発生土を以下のように定義しています。
「建設発生土」とは、建設工事から搬出される土砂であり、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という)に規定する廃棄物には該当しない。
建設発生土には
(1)土砂及び専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの
(2)港湾、河川等の浚渫に伴って生ずる土砂(浚渫土)、その他これに類するものがある。
一方、建設工事において発生する建設汚泥は、廃棄物処理法上の産業廃棄物に該当する。
(出典:国土交通省のリサイクルホームページ)
この定義から建設発生土の重要な特徴が見えてきます。
第一の特徴は、建設発生土は廃棄物処理法に規定する廃棄物、すなわち処分や再利用に際して厳しい規制が掛かる「汚物や不要物」ではなく、そのまま他の建設工事の原材料として使用可能な資源であるということです。
第二の特徴は、建設発生土の中に含まれる「泥土」と物理的性状が似ている「建設汚泥」は、法的な位置づけが異なっているという点です。建設汚泥再生利用マニュアル(独立行政法人 土木研究所編著)によると建設汚泥に該当しない泥土には、
① 土に該当する浚渫土
② 泥水などを使用しない地山掘削から発生した泥土
③ 泥水をそのまま再使用(または再利用)したり、流動化処理土の調整泥水として売却するもの
などがあるとしています。
しかし泥土と建設汚泥の区分は複雑であり注意が必要です。例えば浚渫土でも、その発生場所によって泥土と建設汚泥の区分が異なります。泥土の区分については、一般社団法人泥土リサイクル協会の「泥土を適正に処理するための手引き書(初版)」が分かり易く解説していますので、ぜひ参照してください。
では何故、そのまま原材料として使用可能な「建設発生土」が、建設副産物のリサイクル重点対象品目として取り上げられ、これまで様々な施策が講じられているのでしょうか。
国土交通省が実施している建設副産物実態調査によると、平成20年度に建設工事現場から場外に搬出された建設発生土の量は、1億4063万m³と前回調査(平成17年度)より5455万m³(28%)減少しています。一方、建設工事に利用するため工事現場に搬入された土砂は平成20年度一年間に1億4771万m³(前回調査より8596万m³減)であり、単純に比較すれば土砂利用量と場外搬出量はほぼ等しく、再利用が100%可能な様に見えます。しかし、その中身を詳細に分析してみると様々な課題が見えてきます。
課題の第一は搬出量の多さです。近年、公共事業予算の縮小に伴い建設発生土の搬出量も大幅に減少しています。それでも平成20年度の建設発生土の場外搬出量は、その他の建設廃棄物の場外排出量全てを合計した量の4倍に及びます。このうち工事間利用される発生土は、全体の3割に過ぎず、残り7割は内陸受入地で利用されています。この内陸受入地に向かう土砂の一部が、放置等の形で不適正に処理され、自然環境や生活環境に大きな影響を及ぼしているのです。
一方、建設工事現場で利用されている土砂の調達先をみると、現場内流用が全体の半分を占め最も多く、次いで工事間利用であることが分かります。この両者を合計した割合、すなわち利用土砂における建設発生土利用率は近年80%前後で推移しています。これは公共工事発注者である国や地方自治体が定める「建設リサイクルガイドライン」において、建設発生土の利用/処分の優先順位を規定し、運用していることが背景にあります。
このように建設発生土の需給バランスは近年改善傾向にありますが、依然として搬入土砂利用量の2倍近くの土砂が場外に搬出されるという状況は変っていません。しかも平成20年度の新材利用量は前回調査に比べて大幅に減少しているものの、3159万m³と搬入土砂利用量全体の4割を占めています。
この背景には、搬入・搬出時期の調整など手続きの煩雑さや土砂の品質のミスマッチなどが指摘されていますが、それに加えて地域毎の需給バランスの偏りも大きな要因と考えられます。この課題を解決するため、『建設発生土の広域利用の促進』が求められています。
株式会社 建設資源広域利用センター(略称UCR)は、首都圏において大量に搬出される建設発生土を広域的に河川堤防、宅地造成の都市基盤整備や採石場跡地等内陸受入地で有効活用するため、建設発生土の発生と受入に関する具体的な協議、調整機関として地方公共団体が中心となって設立した株式会社です。
次回はこのUCRが行っている事業を見ながら、搬出側と土砂を受け入れ利用する側とのミスマッチとは具体的にどのようなものなのか。また建設発生土の広域利用を促進してゆく上で監理技術者が配慮すべき事項について述べたいと思います。
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